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デジモンセイバーズ#9

「時も理想も現実も残酷の巻」

仕組まれたかのようなハプニングの連続によってついに世界戦に挑むことになったボクサー,早瀬翼.彼の周囲には既にデジモン反応が出ているが,トーマは早瀬の不正を否定する.いくら高齢でも過密スケジュールでも,クリーンなファイトを信条としている彼がそんなことをするはずがないと信じているのだ.
早瀬選手の周囲のデジモンの気配の出所を調べるため,各方面から内偵を進めるDATS.マサルはボクシングジムに潜り込み,ヨシノは家族を中心に聞き込みを.そしてトーマは早瀬から直接話を聞く.調査の結果浮かび上がった容疑者は3人.しかしトーマは,その誰にも納得することができない.

仲間やゲストとの関係からそれぞれのキャラをしっかり彫り出していく「セイバーズ」.台詞による単純なレッテル貼りではなく,その行動から各自の個性を繊細に掘り出していく様が実に面白い.ある種の典型ではあるもののしっかりと血が通った彼らの行動ぶりに対し,必要以上には言語化しないクールな内面描写がいい感じに相まっていて,なぜ彼らがそうするのかという理由をその行動から推測していくだけでも十分に楽しい.
今回のメインはまたもトーマで,推理中心の物語の中で彼の新たな一面が事件を通じて明らかになっていくわけですが,特にラストシーンが素晴らしい.この切なさは,子どもよりも一緒に見ていた父親の心をしっかり揺らしていそうな気がするなぁ.…しかし,あのトーマといい勝負するなんてマサルはどんだけ強いんだ(苦笑).

今回のゲストは世界戦間近のボクサー,早瀬翼.不調の対戦相手をハイライズアッパーで倒してとんとん拍子の7連勝.しかしデジモンが憑いてるんじゃねえかとスポーツ新聞片手に主張するのがマサル.ゴシップ誌の内容を真に受けて調査に繋がるあたりもやっぱり「MIB」だなぁ(笑).対戦相手が相次ぐ不運で調子を崩し,その結果として勝ち抜いてしまったことをデジモンの仕業と言い張るマサルもマサルですが,これを意固地に否定するトーマはなんだか,らしくない.
あの人がそんなことをするなんてありえないと言い張るトーマは,もうあからさまに早瀬選手のファンであるらしく.ボクサーとしてのピークを過ぎた35歳,しかも月1回にランカーと連戦なんていくらなんでも無茶なのに,必死で擁護しております.…普通ならデジモンよりはむしろ興行主とか主催テレビ局の方を疑いたくなるような件ではありますが(笑)なんと実際にデジモン反応が出て既に調査中だってんだからトーマもびっくり.状況は相当黒っぽく…しかし,トーマは未だに信じていません.
この件については自分の目で確かめたいらしいトーマは,ランニング中の早瀬選手に直撃.プロの練習に最後までついていけば話をしてもらえる約束を取り付け,実際にきっちり付き合って土手でのヒアリングに成功.トーマがまず聞いたのは例の件よりもずっと以前の話,4年前の上原コウイチとの戦い.クリーンファイトが信条の早瀬選手はあの試合で上原の反則により右肘に手痛い傷を負い,相当選手生命を縮め,復帰にも苦労したようですが….「君に何がわかる!」とトーマを一喝する早瀬.
己の信条のためにあえて傷を負った早瀬.右の破壊力,世界戦,若さ…家族を抱えて戦う彼にとってはあまりにも大きすぎる代償を支払い,さらにリハビリという苦労を越えてきた男の心は,言葉だけでは語りきれない.若造なんかには絶対にわからない重みです.…ちなみに復帰以降の戦いの異常性については,本人曰く,特におかしいと思ったことはなし.これは隠してとぼけているのか,それとも.
憧れの人と話してたぶん嫌われて,暗い空の下を一人歩くトーマ.彼の早瀬ファン暦は筋金入り.幼い頃,故障前の早瀬をテレビで見たのをきっかけってんだから意外.金持ちのボンボンがわざわざ危険なボクシングなんか学んでいたのも,早瀬選手に憧れて,無理を通してのことだったんでしょうね.
さて,トーマは遠い雷鳴の下でやや苦悩しておりますが,他の連中も仕事をサボってはいないのが本作のいいところ.今回主役の座を奪われているマサルはそぼ降る雨の中,早瀬選手の所属する大拳ジムへと殴りこみ(笑).生来の才能とこれまでの喧嘩経験に加えて,最近は当たったら死ぬようなデジモン相手のバトルが続いているわけだから半端な鍛えぶりじゃないんだけど…世界を狙える選手を出すジムの練習生を軒並みやっつけるってのはやっぱし無茶だ(苦笑).
彼なりにその実力を発揮して,今度は早瀬選手とやらせてくれと喧嘩を売るハタ迷惑なごろつきことマサル.しかし来るべき戦いに備えて繊細な調整を行っている,世界戦を前にした選手が道場破りと戦うわけがなく…なぜかこの特攻調査をきっかけにマサルがジムに通うことになるのがおかしい(笑).早瀬選手のトレーナーに諌められたマサルは,彼の献身ぶりに疑念を抱くことになります.もし,あいつのためならなんでもするという激しい気合がデジモンと結びついたとしたら…?
もちろんいつも一番きちんと仕事をしているヨシノも働きます.今日は雨の中,雑誌記者に扮して一番配慮が必要となる早瀬選手の家族からヒアリング.最盛期の大故障からリハビリでカムバックするためには,本人だけでなく家族にも相当の苦労があったはず.試合が近づくたびに人が変わる早瀬を大切に護り,無事に戻ってくることをひたすらに待つ…この家はそういう家なのです.
てなわけで内偵の結果容疑者3人.トレーナーと本人と妻のうち,誰が一番怪しいか? マサルはトレーナー.ヨシノは早瀬を推薦し…そしてトーマは決断できない.いくら冷静な天才でも,あれだけのひいき目では犯人探しの目も曇ってしまうのか…って,もし単純に目が曇っているんなら頭から否定しまくって終わるはずなので,もう一度周辺を洗いに行くってことは本人の中でどうしても納得できないってことなんだろうなぁ.かくしてトーマは単独でジムの監視を続け,そこで,自分が何に納得できなかったのかに気づきます.

次の戦いは早瀬翼対ムアンチャイ.この世界戦は過去の悪夢の再現になりそうな予感? そんな中で再度早瀬選手のランニングに乱入し,不躾にもスパーリングを申し出るトーマ.一介のガラの悪い道場破りはスパーリングを許されないわけですが,礼儀正しい少年が節を守って申し出た場合は許されてしまってなんだかなぁ(笑).3ラウンドのごく軽いスパーリングですが,世界目前の選手と対等にスパーリングできるトーマの実力が恐ろしい.やっぱり普通の奴では,DATSで働くのは無理なのかな.
リングの下から本来の主役に見守られながら(笑)トーマは早瀬選手と1ラウンドだけスパーリング.ごく短い時間ですが実際に拳を交えることによって,トーマは気になっていたことの確認を完了.…終わりを暗示する夕焼けの中で,トーマはこの事件の真相を把握します.
あんな風に正々堂々と強くありたいと,子どもの頃に純粋な憧れを抱いた理想の人.しかしトーマの言葉は過去形だから,怪我した後の今は違う….時が経てば人は変わるし,理想も変化するものだけれど,結局トーマが何を知り,そして犯人は誰なのか,トーマのすぐ傍にいて一部始終を知っているはずのガオモンにすらわからない.…もし本気でスパーリングしていたら,最後にはどっちが勝ったのだろう.
決戦前日の夜,事態はついに動き出します.ジムでの監視を続けていたマサルが見たのは!真夜中のジムでこっそり酒を飲もうとしていたトレーナーの姿なので白! 選手に節制を強く言いつけておいて自分だけ酒を喰らうわけにはいかないだろうからなぁ.さらにジムにやってきたのはもう一人の容疑者,早瀬本人!なんだけど明日のためにコンビネーションの確認に来ただけなので白! 気持ちはわかるけど早寝しようよ(苦笑).
残る容疑者は早瀬の妻なんですが,彼女は自宅から早瀬に電話をかけてきているのでやっぱり白.…本当の犯人はトゲモンを使い,既に8度目の凶行に及んでいました.ランニング中の対戦相手を襲う針を放たせた真犯人は,これまでの容疑者にはない特徴を持った者.ガオモンで相手選手を庇いつつ,敵選手をマークしていたトーマは真犯人に語ります.
どうしても納得行かなかったのは,早瀬選手の信条とこの事件があまりにも食い違っていること.クリーンファイトのために選手生命を縮めた男とその周辺の人間が,不正を選ぶはずがない.…それをやるのは,早瀬のクリーンな戦いを見たことがない上で慕っている者.つまり,早瀬の娘! 危険なデジモンと一緒にいた真犯人の欲は,「おとうさんをいじめるひとはゆるさない!」
ついにはじまったデジモンバトル…なんだけど,今日はボクシングがテーマなので奇妙なこだわりが(笑).ボクサーならば拳を振るうのはリングの上のみってなわけで明日試合がある某ドームへと不法侵入し,ごくわずかなギャラリーの見守る真夜中のドーム戦が開催されます.ガオモン対トゲモンのボクシングバトルは着ぐるみショーっぽいわけですが,本人たちは至極真面目なので笑っちゃいけません.例えばマサルのように,「リングの上に上がったら,1対1のガチンコ勝負.それが男ってもんだ!」とか本気で応援しちゃうくらいが望ましい.…デジモンの性別はよくわからんし,相手セコンドは女の子なんだけどな(苦笑).
デジモン同士のボクシングはもちろんガチンコ.思考的にはトーマにはなかなかついていけないガオモンですが,忠誠心は人一倍.マスターの愛する神聖なるボクシングを汚す奴は許せないとハイライズアッパーを見事に放つ! …トゲモンの顎ってどこだろう…(苦笑).ラストは巨大化で進化でリングの外の大決戦.見事にガオガモンはこれを制して犯人を回収し,事件は終了.

明日が世界戦だってのに,自分の娘が対戦相手を襲っていたことを説明された早瀬.肉体的にも精神的にも洒落にならないこの状況で世界戦は無茶.ついでに言うならランニング中に怪物に襲われた対戦相手も,明日の試合は辛いに違いない….けれど早瀬は明日の試合を中止しない.間違ったことをした娘に正々堂々を教えるという,父の義務を果しにいくのです.もちろんこのあとでピカっとされて記憶は消されるはずですが,それでも,本当に忘れてはならないことは残るだろうというのが早瀬選手の願い.それは悲壮なのに,奇妙に明るい覚悟です.
スパーリングしたトーマには,早瀬が負けることが見えている.そうなれば引退の道しか残されていないはずだけれど,大人には時は残酷.今よりも良くなる瞬間はこの先二度と来ないってことは,今はまだ無限の未来を持つ少年にはきっとわからない.だからこそ限られた時間で娘に大切なことを伝えたいというのが早瀬の意思.けれど,目の前で幼い頃の憧れが砕けていくのを見なければならない少年の心は,大人にはもうわからない….らしくない苦さをじんわりと味わいながら,次回に続きます.

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