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機動警察パトレイバー#8

「山鬼のなく頃にの巻」

環状20号線が通ることになった小さな村.鬼にまつわる悲しい民話で知られるこの村では,開発工事を妨害するかのような怪事件が続いていた.悲しい目の美少女,鬼の祟り,不吉な歌を歌う老婆,オゴモリサマ….工事妨害の謎を解くためにこの村にやってきた遊馬たちが目にしたこの事件は,果たして誰の仕業なのか.

リアルというよりは自然なキャラクターたちによって何でもやっちゃう「パトレイバー」.今回は地方の寒村で起こる伝奇的な事件を割にさっぱりと描きます.10年以上前に製作された作品なのに今見るとかなり雛見沢なのは(笑)両作が同じ横溝正史作品の強い影響下にあるからでしょう.特に本作は映像化された「金田一耕助」シリーズからの影響が顕著.ただしいかにも軽い本作らしく,人も死なず誰も狂わず,大変わかりやすいドタバタドラマが展開されます.作画の西村氏の生き生きした描写が,いかにもアニメらしくていい感じ.

前半.事件のはじまりは夜の月下.自転車でからころと坂を上っていた初老の駐在が神域で見てしまった赤い何か…鬼だ! 鬼が出た! という事件はあっと言う間に警視庁を巡り特車2課マターに(笑).なんかよくわからん事件に関しては特車二課に押し付けられるってのは毛有毛現のときと一緒ですが,太田の大活躍のおかげでその傾向がさらに深刻になっているご様子.1号機の3人だけで出動させる後藤の采配も,太田を極力外に出したくないという気持ちの現れなのかも….
行きたくなくても出動する気の毒な遊馬たちに同情する整備員たちは,まともな遊馬を好意的に受け止めているのに対して,どう考えても厄介な太田には相当否定的な様子.なんせ課の評価を貶めるだけでは済まず,撃って壊して仕事増やしてくるからなぁ(苦笑).悪人じゃないけど,厄介だ….
事件の真相を明らかにするため,環状20号線の工事現場に走る1号機トリオ.精神的には安定している3人なので派手な口喧嘩とかそういうのはなし.けれど,今回は巨漢で心優しいひろみに元気がありません.…そのゴツい体には似合わず心優しい彼が知っていたある伝説が,その心を脅えさせていたのです.
行き先の鬼降村の山鬼伝説.人より強く人でない脅威の伝説は全世界的に見られるものですが,この村の伝説もその原型をなぞったもの.山という異界から訪れていた暴れ鬼が里の娘に惚れ,その娘の死をきっかけに暴れるのをやめて悼むことを覚え,やがて娘の墓には巨大なケヤキの木が…という伝承を説明する映像がいい感じに日本昔ばなしなのが素晴らしい(笑).放映当時は冬なので,大晦日に悼むことになってるみたいですね.
ひろみらしくもない雄弁ぶりで語られた山鬼伝説.これが今回の事件にがっちりからんできた上にそれをモチーフとした人死にが出れば見事横溝の世界であるため,面白がりの遊馬はこの鬼の祟り状況を楽しむことに決定.しかし怖がりのひろみからすれば祟りなんてもってのほか.でかい体に似合わぬ繊細さです.
遠路はるばる山中の寒村に到着した1号機チームを待っていたのは,何者かに襲われてぼろぼろの工事現場と大泣きの責任者,そしてそんな惨状を陰からそっと見守るレイバー連れの美少女….工事用のレイバーや資材ををぶっ壊されたことによって当然工事はストップ.しかし着工の期日はもう目の前だからこれをなんとかしてくれと訴える現場責任者は,これまでのあらすじを語ります.
ごく普通に考えるなら,工事を妨害したい何者かがレイバーを使ってやらかした以外は考えようがない.けれど山鬼の伝説が余分な情報を事実の上にコーティングするから,鬼の祟りだなんて非科学的なことが真面目に取り沙汰されることになるのです.現場の近くには樹齢1千年のご神木であるケヤキの木,オゴモリサマが存在し,今回の件は工事区域にこの木が引っ掛かってしまったゆえに起きた祟りで過去には村長や神主もとり殺された…ってな感じの伝奇トッピング(笑).そんな話を聞かされたら,遊馬は面白いしひろみは怖くてたまらない.
駐在が風の強い夜に見たという鬼.ケヤキがあったんじゃこの先工事ができないし,しかし手を出せば鬼の祟りが来る.明日までには工事を再開したいと必死で頼み込む現場責任者のおっちゃんの意図は,恐らくうまいこと特車二課にケヤキの木を抜かせてしまおうという魂胆? しかし遊馬はじっとオゴモリサマを見て「…ここを避けて道をつくりましょうよ」と軽快にスカす(笑).
とはいえルート変更が現場の判断で許されるはずもなく,オゴモリサマの移植もむずかしそうというわけで,ついにこの事件の解決に着手する1号機トリオ.…とはいえ時は世紀末.祟りなんて非科学的なものは警察の捜査マニュアルには掲載されてないはずで(笑).事実のみを純粋に吟味すればこの区域になんらかの関係のある者がやらかしたレイバー犯罪であることは明らか.
祟りの歌を歌うおばあちゃんやひどく赤い夕日はミスリードを誘うためのあからさまなフィラー.轟音を立てて通り過ぎるレイバーと…木の根元で見守る女性こそがこの件に関しては重要なのです.

後半.日が落ちるとやりにくい現場検証も夕焼けの中でほぼ完了.犯人レイバーの足跡を残骸の下に発見し,この件が非科学的なものではない物証が積み上がっていきます.これだけのことをやったからには,犯人は複数.しかも襲われているのがこの現場だけってことは,犯人は近辺にいる可能性が著しく高い.…後半開始直後なのに思いっきり捜査は大詰めで(笑)ここからは「誰が」ではなく「なぜ」が問われることになります.
工事を妨害する犯人と例のケヤキの木はどのように関わるのか.わざわざ祟りを偽装しているのか,あるいは祟りを起こさせないためにやっているのか.…どっちにしても道路工事が邪魔な人間の仕業であって,超自然の仕業じゃないんだからひろみちゃんはおびえちゃダメだ(苦笑).ここで真っ赤なガンボルギーニ社レイバーとともにいかにも怪しい地主が登場.高級外車ならぬ外レイバーは珍しく,遊馬はさっさとこのレイバーの足を調べりゃいいと思うんですが,…別にわざわざ調べなくたってこいつらなんだからもういいのか(笑).
いかにも怪しい地主は工事ルートから御神木を外すように促すわけですが,そもそもヒラの一警察官が道路公団への口利きは無理だし.わざわざ道をずらしてほしいのは公団に自分の土地を高く売りつけたいから?…にしては安く提供するとか言ってるし,迷信深そうなタイプにも見えないから,このおっさんの真意が今ひとつ読めません.あのばあちゃんの方がずっと迷信深そうだもんなぁ.
犯人はほぼわかってるんですがその動機がわからないので,3人はここの駐在所で一泊.テレビで流れてるクラシカルな時代劇が,正体を隠して市井を漫遊するってことで実はラストの展開に繋がっているあたりが凝ってますね.現段階でも遊馬は犯人の目星がついていそうですが,祟りで目の曇っているひろみはまったく見えていないみたいだ.まあ,3人がかりで1事件を解決すればいいんだから,現段階で全員に真実が見えている必要もないんだけど.
普通の推理モノならば,謎解き役に怯える美少女に頭は回らないけど頼もしいアシスタントってのが一つの定型.でもその配置からなんかずれてる夜を襲う停電.本来は怯える美少女役の野明はアルフォンスの赤外線モードで接近する何かを把握してパンチで逆襲.本来は頼もしいアシスタント役のはずのひろみはブレーカーの蛇に怯えているから逆だ(苦笑).ついに相手は警察にすら手を出してきたというわけで,いぶりだすにはいい頃合.
翌日.そろそろ事件を片づけるため,犯人がこだわっているケヤキの木に手を出すことに決めた遊馬.今日ここで切る素振りを見せたなら,空腹な雑魚がエサに見事フィッシュオン(笑).伐採妨害に出現した2機のレイバーのうち,1機は当然ガンボルギーニ.そしてもう1機は思わせぶりに通り過ぎたあの農作業用レイバー! 地主が祟りにかこつけて警官を脅迫してくるこの行為,立派な公務執行妨害なのでアルフォンスを使って片付けましょう!
イングラム対田舎のレイバー2機というバトル.数では不利に見えますが,太田がここにいないおかげでイングラムの安定ぶりは半端じゃない(笑).冴緊迫感のない2機に襲われたアルフォンス.土の柔らかい畑に足をとられる上にガンボルギーニに後から羽交い絞めされて動けなくなるものの,日頃から鍛錬に励む野明の預かる機体がそこらの雑魚に負けるわけがなく,なめんなよ!とリボルバーカノンを向かってくる敵へ突きつけます.
そして事件はクライマックスへ.「お願いだからもうやめて!」とお約束を叫びつつ飛び込んできたピンクの小さなレイバー.罰が当たるのはおじいちゃんたちの方と犯人の立場をはっきりさせただけでなく,倒すなら私から!とこの騒動を横から全部さらって行く勢いが凄い(笑).主役の立場を奪われそうな野明があわてて特車二課第2小隊の名にかけてそんなことはさせないとタンカを切ったら…その名に村の皆さんがビビります(笑).
例えば背中の桜吹雪やご大層な印籠のように,特車二課第2小隊の名には全てをひっくり返す威力がありました.しかも悪名な方向で…(苦笑).街中でも打ちまくり,通った後にはペンペン草も生えないという祟り神扱いされてしまうのがおかしいやら切ないやら.こんな山奥にまで太田の悪評が伝わっているなんて,「そ,そんなぁ」という野明の呟きがやるせない.そうか.本当の祟神は太田だったのか….

かくして事件のネタ晴らし.先代の村長と神主と地主の出来心によって,第2次大戦時に村中から集めた金銀がご神木の根元に眠ったまま.出来心で隠してしまって先に病死した2人の名誉を守るため,地主は金銀を根元に埋めたケヤキを伐られるわけにはいかなかった…というごくシンプルなストーリー.実際に根元からは金銀の詰まったツボが発掘されて,祟りの気配はここでようやく完全消滅.
さらに村人には迷惑な話だけれど,あの地主の孫娘は村やケヤキのためにはそのほうがいいと思って黙っていたことまで判明.そしてケヤキだけでも救えないかと必死で提案.…祟りなんかそもそもあるわけないけれど,道路工事で千年の命が消えてしまうのは気の毒,ということでひろみちゃんの強い推薦もあって神社の裏に巨木を移植.遊馬の表情が実に子どもっぽく楽しそうなのは,来たくもなかったおつかいを十二分に楽しんだ証かな.…そうか,あの孫娘もひろみさんなのか.
てなわけで山鬼様ことイングラムは山にケヤキの木を持って行き,人の情渦巻く工事現場から伝説を撤退させます.なんせこれから,大部分の所有者が不明となった金銀の配布を巡り,血で血を洗う抗争が村内で巻き起こるに違いないので(笑)そんな血生臭くなりそうな現場には牧歌的な民話や山鬼は近寄らないのがよろしい.音楽の川井節は昔も今も変わらないなぁとか思いつつ,次回に続きます.

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