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桜蘭高校ホスト部#13

「あなたのための午後3時の巻」

桜蘭学院に特待生として入学することになった藤宮ハルヒ.父とともに入学手続きに訪れた彼女が見たのは,バナナを食って歩くピンクのうさぎのぬいぐるみ.それを追いかけて落ちた大穴の先には,ピンクの部屋とお高そうな花瓶が待っていた.尻にハマった花瓶をバナナを食べて小さくなって外し,小さな扉を潜って涙のプールへと落ちる.仲の良い兄妹は姉弟となり,公爵夫人に抱かれた赤ん坊は呪い人形に姿を変える.猫は笑うだけでなく双子であり,ドードー鳥は待ちわびて…そして午後3時のお茶会には,ハルヒの席はない.

いつだって素晴らしいものを見せてくれる「ホスト部」.豪華できっちりできたものを作り上げてくる上に,特に絵コンテ・演出に監督クラスの人間が入った際のレベルは尋常ではなく…そこに五十嵐監督神の名が入ればなおさら.てなわけで今回は監督による「アリス」のような総集編.通常の総集編は過去に使った映像を再編集して放映し作り手の体力やスケジュールをその間に回復させるものではないかと思うのですが,本作では一切使いまわさず作り直して,ついでに1話限りのゲスト声優たちにほんのちょっとだけアフレコさせ,さらにちょっとだけネタバレしてみせるだなんてあんたアホだろう(笑)! あまりにも実直に全力でふざけようとする,そんな監督神の根本的な不器用ぶりが,本当に大好きです!

前半.一介の庶民が父を伴い,薔薇の花散る桜蘭に足を踏み入れたのは今よりしばらく前のこと.門の中は日本離れした凄いゴージャスぶりなんですが,中身を見るハルヒさんにとっては無駄な装飾にしか見えていないに違いない.父と教師の会話を脇で聞いているばかりのセーラー服のハルヒ.手のかからない優秀でよくできた娘さんの背後には,大樹と母子の図.シーンが切り替わるたびにその内容が変化しているのが思わせぶり.手間のかからない娘の様を語る父の声を背景にして,絵画の中では少女が母親から離れ,…うさぎを追って日向へと向かいます.
父の話が終わるまで,一人きりで校内を散歩することになったハルヒ.長い髪とスカートを揺らしつつ歩く午後3時の桜蘭.この春から母校となる校舎をさ迷うハルヒが見たのは謎の手招き.第3音楽室から誘うのは,バナナを喰うぬいぐるみのうさぎ.…実は紅茶よりもバナナの方がお好み(笑)? うさぎは強力モーターによって開いた穴に下りていき,それを追いかけるハルヒはいつものようにバナナの皮で滑って,穴の底へと落ちていく.
ありえない落下は螺旋を描き,その底には部屋が1つ.助かった…と思ったら,花瓶にお尻がはまって動けない.矢印で指し示されてきたそれによって,ハルヒはこの出口のない部屋に閉じ込められることになったのです.ここが音楽室であるがゆえに置いてあったピアノとそれを弾くネズミにハルヒは助けを求めるものの,年上キラーの彼はバナナを食って小さくなって床のドアから逃げ出してしまいます.
不自由な立場から逃げ出すためには,この部屋に体を合わせなければなりません.通路の奥にはネズミだけでなくうさぎの姿もあり,ハルヒ一人が大きなままで残されて…かくして自由を求めるハルヒはバナナをむさぼり体を合わせ,小さな扉の向こうへと歩みを進めることになります.自分から強く希望したことではありませんが,花瓶のために自分で選択したことであるのは間違いありません.
自由のために仕方なく体を合わせて通る通路には,ハルヒが本来は何者であるのかを示す電球と,バナナカウントダウンの宣告.体を合わせて頑張ればそれで済むのかと思ったら,実際はベタでうざくて迷惑な罠の登場で更なる深みへと急降下! …そして落ちたのは沖縄で落ちた水中.あわてて飛び出したのはあの日の青空の映った水面.
「たくさん泣いたな」と話しかけてくるのは,プールサイドに座して全てを見守っているめがねきゃらの芋虫.彼曰くこのプールの水は全てハルヒの心の涙.助けを求めることを知らずに意地を張り,理由なくぶつけられた敵意を我慢して…辛いことや寂しいことに耐えてしまったために蓄積された水.しかもこれは南国風プールでありますから(笑)中にはヅカ部のワニがいて気を抜くと食われます.涙に溺れりゃ今よりもずっと似合いの場所が待っているのです.
体を合わせて入った世界の中には,そのサイズに合わせた世界が待っていました.庶民の世界とはもちろんかけ離れているけれど,どちらが正しいってことはないのでしょう.フードを着込んだ豚児とその妹は,強欲な芋虫から安くはないキノコを月末払いで買ってます.金銭的なことだけは徹底し,いつもファイルに何かを書き込んでいる芋虫.初対面のはずなのになぜ「いつも」なのか,今のハルヒにもわかりません.
キノコを食む豚児とその妹.兄は光が怖くなかった乳児へと戻り,妹は闇が怖くない大人になる.赤ちゃんに戻った兄は勝手に扉の向こうへと進んで行くものの,芋虫も豚児の妹もそれを放置.色っぽい妹を撫でる芋虫はあくまで傍観者という立場を貫くので,心配したハルヒは今度は赤ちゃんを追いかけます.
扉の向こうはバナナの皮だらけの部屋.長椅子のチェシャ猫と公爵夫人,そしてバナナスープを作る料理女がおりました.「猫がにやにやできるなんて,あたしちっとも知らなかったわ」…と原典に敬意を見せるふりなどしていたら,料理女がいきなりぶちキレます.大好きすぎて,暖炉の火のように燃え盛った嫉妬によって脇どころか悪役にされてしまった彼女からすれば,その嫉妬の原因であるハルヒさんもその他楽しんでいる皆も大嫌い! しまいには「環様のぶわかー!」と追い出した彼の名を叫んで逃走! ああ,こんな人もいたなぁ…(笑).
豚児であった赤ん坊を抱く公爵夫人.ハルヒは子どもに母が見つかってよかったと喜びます.お母さんと一緒にいるのがやっぱり一番.それは母を失っているハルヒの本心そのもの.しかし公爵夫人は強力モーターを回し裁判所へと出廷せねばならないし,置き去りにされた乳児は呪い人形に戻り,それを指摘した猫まで空気にかき消えて…ハルヒはひとりきり.この作られた世界のなかでの関係性はあくまでも仮想のもの.真実ではないのです.
ひとりで歩く長い廊下,そこにさっきの猫が出てきます.ハルヒの左右でくるりくるりと柱を回って神出鬼没.世界に合わせて姿を変えた彼女が求めるのは,普通の世界への帰り道.しかし帰るには,この世界を支配する女王陛下に謁見しないわけにはいきません.…猫は出たり消えたりで会話も途切れ途切れ.これでは落ち着いて話ができないから2人とも一緒に出てきてよと頼むハルヒ.猫は一匹で神出鬼没のはずなのに,なぜ2人いるとわかったのか? 結局ハルヒは猫を置き去りにして,猫たちは見分けた彼女をじっと見ています.
この世界はいつだって午後3時.ドードー鳥はカップを前に帰りを待っています.あの夜には,確かに桜花が華麗に散ってましたね….そんな3時を歩むハルヒがたどり着いたのは静かなお茶会.ハルヒには到底買えそうにない定食を出してきそうな大きな食堂には,帽子屋と眠りネズミと三月兎だけが着席していました.しかもこれだけ空席があるってのに,帽子屋たちは「席はないよ」と言うのです.

後半.そもそもこの世界に長居するつもりなどないし,お弁当で十分なハルヒは席がないなら先に進む気満々で,勝手に話を飛ばされると困る帽子屋たちはあわてて引き止めるしかありません(苦笑).質問したいハルヒとはあまり会話の成立していない帽子屋.「長いね」と髪を愛で,好きだけれど本当はもっと短く刈らなきゃならないと語ります.なんせガムをつけられてしまいますからね.この世界ではスカートを着る事もなくなるわけですが,ハルヒの「こう見えても一応女なんで」という発言がおかしい.それは,本当のあなたは長い髪でセーラー服ではないということですね?
帽子屋とともにお茶会に興じる三月兎と眠りネズミ.2人は前回酷い目に遭ったので,眠りネズミが三月兎の歯磨きを怠るようなことはないに違いない.「ちゃんと歯磨きするんだぞ」と一言言ってそのまま眠るネズミが滅茶苦茶渋いなぁ.今回の仕事ってここくらいかなぁ(笑).
話を聞きたいハルヒにナゾナゾを出す帽子屋.「大トロと赤身が似ているのはなーぜ?」…同じマグロの一部なのに,この世界では断じて違うというのが不思議.でも食べたことがないとその差はわからないのかも.ぶどう酒を勧められても未成年なのでばっさり断る,ファンタジーの主人公としてはかなり厳しい性格のハルヒ.あまりの真面目さはこの世界には不似合いで,最近は後から地味にツッコむことが多いわけですが…でも,「かわいいね!」「確かに!」
ずっと3時のこの世界.いつだって放課後のここはどこ? この高校に通うために手続きに来たはずのハルヒに,帽子屋はまたもナゾナゾを出します.「君のお父上と僕が似ているのはなーぜだ?」元々愛情表現が大変にくどい上に,考えすぎて肝心なところが行動不審になっていたよなあどっちも(笑).「似ているんですか?」と聞き返すハルヒに帽子屋は笑い,さらに重たい質問を繰り出します.
ハルヒは桜蘭に入学してどうする? もちろん彼女は地味な格好で誰も来ない音楽室でせっせと勉強するつもり.だって叶えたい夢があるから….その夢を語る前に「学生生活は,勉強だけが全てじゃないだろ」と割り込む帽子屋.とことんバカな帽子屋ですが楽しいことだけはよく知っていて,それがハルヒには足りていないこともちゃんと知っているのです.
突如響き渡る進軍ラッパは女王陛下の気まぐれで公爵夫人を死刑にするための裁判の開始.聞いたハルヒはいきなり走り出します.自分のことなど後回しにして,困っている人のためにその身を張ろうとする彼女らしい心意気.そんなひとりぼっちで必死の姿すら,仲間からすれば大変にいとおしく,愛らしく….時間は未だ午後3時.けれどもうドードー鳥はいない.
不条理極まる夢の中で開催される裁判も不条理.公爵夫人の罪状は音楽祭の招待に応じたこと.罪とは思えぬ罪を一方的に断じて死刑を宣告しようとするハートの王と女王に対し,駆けつけたハルヒは怒り,いきなり公爵夫人の弁護士を引き受けてしまいます.…行動によって語りきれぬものを語ってしまってるネタバレだ(笑).
公爵夫人の罪は,大事な子どもを放っておいて仕事を行った罪.それは「子どもはお母さんと一緒にいるのが一番」という自分の気持ちそのもの.弁護士となったハルヒはその素直な感情を否定せねばなりません.親が本当に忙しいときには子どもはそれをわかっているから恨んだりしない.それに母を死刑にしたら子どもはどうなる! …両親は常に忙しく,しかも母を失ってしまったハルヒらしい主張.いなくなるのはどんなことより耐え難い.
ここは法の間で感情を述べる場ではないと仮面の王に窘められても,「情のない裁判なら機械に任せればいい!」と大迫力で己の考えと我慢を肯定するハルヒ.たとえ子どもでも親のために我慢する,それが正解でなければ自分の今までが否定されてしまうから必死です.けれど幼い頃からハルヒの徹底した気の使いぶりを見てきた王はハルヒの弱いところをよく理解していて.そもそもお前は罪人ではないのかとその罪を指摘にかかります.
目の前に出された証拠物件は割れたルネの花瓶.これは前半冒頭でハルヒの尻にはまった800万の花瓶.ハルヒはそれをちょっとした不注意で割ってしまい,場違いな場所で場違いなことをやるハメになって現在の不思議な放課後がやってきました.それは今のハルヒがいつやったのかを覚えていなくても事実です.…そして証人たちは,弁護士を自称する罪人の罪を証言します.
バカな帽子屋曰く,「学生生活を間違った認識で捉えております」.…勉強ばかりで日々の暮らしを楽しまないと指摘する帽子屋に対し,「あなたは楽しみすぎなんです!環先輩!」と反論すると明かりがつきます.見守っているのは仮面をつけたお客様たち.さざめき笑って…「どうして名前を知ってるの?」 チェシャ猫が双子だってことも,芋虫のマル秘ファイルも,三月兎の虫歯のことも.「どうして?」「どうして?」「どうして?」
これは入学前の彼女がまだ知らないはずの記憶.花瓶のために囚われた午後3時の世界での事実.高校で勉強ばかりするという誤りは早期に是正され,今や呆れながらも楽しんでいるのが現実! 「まだわからないの?」と語るのは聞きなれた優しい声.「いい友達が一杯できて,よかったね!」…王の仮面の下はハルヒの父.彼女の優しい意地っ張りを誰よりもよく知っていて心配していた彼は,今を喜んでいるのです.
ハルヒは確かに罪を犯していました.それは無理な意地のせいで周囲に余計な心配をかける罪.素直にごめんなさいをしなければならない大罪を犯していたのです.きっとハルヒを残してこの世を去ったあの人も心配していたはずで….この世界を支配する女王陛下は,失ってしまった彼女の母.駆け寄って抱きつくハルヒに,自分が公爵夫人のように子どもに苦労をかけたことを詫びて,「その分今は,夢のような学生生活を,楽しんでね」

迷い込んで落ちた世界の底で自分の母を見たハルヒ.それこそが現実との決定的な違い.母に逢えたことはうれしくても,それはここが夢だという証拠.うれしいけれど悲しくて,寂しいけれど大切で….そんな夢を覚ますのは環の声.珍しく居眠りのしていたハルヒを起こすのは,いつものホスト部一同です.
本日はアリスをモチーフに仮装している夢のような人たち.実際の夢とはちょっと配役が違っているところも芸が細かい.特に芋虫とか物凄く接客しにくいだろうからなぁ…(笑).しかも双子がアリスの衣装を手にしてるってことは,ハルヒさんに着せる気満々だなこいつら.…勉強ばかりの高校生活のはずがひょんなことからこんな事態に.しかしこのおかしな状況も,心配した母が不幸なハルヒのために天国から贈ってくれた特別サービスだったりするのかな?
夢の中で落ちた穴からは夢が醒めても未だ出られないまま.放課後,午後3時のバカ騒ぎはこれからもまだ続くから,「確かにこれじゃ,寝ても醒めてもあまり変わらないな!」 …フィクションの中で生きる彼女の言葉のメタフィクションぶりに身をよじらせつつ,次回に続きます!

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