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機動警察パトレイバー#11

「これは自分で選んだ道の巻」

世紀末のクリスマスイブ.テレポートシティへと続くあらゆる経路が何者かの手によって切断された.警視庁が現有する最大戦力である特車二課が事件解決のために投入されるが,軍用機4機及び謎の実験機を操る敵の手腕によって,ついに2号機が行動不能に陥る.太田を敵の手に奪われて,一旦退却する野明の1号機と遊馬,香貫花の乗る2号機指揮車.彼らは後藤の元で態勢を立て直し,悲壮な1日に決着をつけるため,再び戦いを挑む.

幅広い芸風を併せ持ちながらも,近未来SFロボットアクションとしての本領を見事に発揮する「パトレイバー」.各種メディアで展開された本作には映画版の1と2,初期OAVの5&6話,コミック版でのシャフトとの長い戦いなど後々語り草となった素晴らしいバトルがいくつも存在するわけですが,今回はそんな名バトルを彷彿とさせる素晴らしい戦いっぷりが素晴らしい.
青いワゴンの陰謀に翻弄される特車二課から力を奪い,同時に力を与えるのが彼らの抱える感情的な問題.動揺し,叫び,涙をこぼし,すれ違い,それでも再び向かって行く彼らの理由が,緩やかに終盤の展開へと繋がっていきます.脚本はもちろん伊藤和典.絵コンテに吉永尚之.作画監督に高見明男という凄い陣営が描いた世紀末のクリスマスは,今見直してもやっぱりかっこいい.…あ,演出が元永慶太郎氏だ(笑),

前半.香貫花の祖母の失踪とテレポートシティの不法占拠及び経路の閉鎖という大問題2つに襲われている特車二課.特に祖母の失踪は香貫花の絶不調を招いていました.敵はタフな軍用機どもに加えて,ECMとかレーザーとかフィクションみたいな機能を積んだ実験機まで投入されてるもんだから洒落にならない.万全の態勢でも勝てるかどうか微妙な程の戦力差があるわけで,この状況では一方的にやられてしまうのも当然でしょう.
1号機が2号機を救うために戻ってきてはくれたものの,既に右腕と銃を奪われた太田にはなす術がない.ついでに1号機も馬鹿力のブロッケンに組みつかれて身動きが取れない.数の差がある状況で足を止めるのはわざわざタコ殴りを待つような自殺行為なので,腕1本を犠牲にしてでも離れろ指示する遊馬.しかしレイバーを本気で愛する野明にはそれは無理なので,「アルフォンスをなめんなよ!」と綺麗にブロッケンを一本背負い! 倒したところに電磁警棒でとどめを刺します.
イングラムが人間並みの動きが可能な高機能機種であることに加え,日々の訓練によって野明が学習させた成果が出た形でまず1機が沈黙.続いてもう1機のブロッケンも電磁警棒で顔のカバーを吹っ飛ばすという野明の手際の良さを少ししか誉めない遊馬はケチだ(笑).けれど今はまだ2人でじゃれている余裕はありません.2号機はほとんど潰れて孤立無援.一刻も早く撤退し態勢を立て直さねばならないのです.
例の青いワゴンからはファントムへと指示が飛び,ターゲットは2号機から1号機へと変更.怪我をしながらふらふらと「あたしの責任よ」と倒れた2号機へと近寄っていく香貫花は,明らかにいつもの冷静さを失っています.あの遊馬に落ち着けと言われるだなんて,とても普通の精神状態とは思えない.
実際,どんな状況でも戦意を失わない太田より,いつもに比べると別人みたいにヘコんでる香貫花の方が危なっかしくて仕方がない.2号機が倒れてくるのに巻き込まれて1号機指揮車は大破.遊馬が庇ったおかげで香貫花は何とか無事.…ただし彼女はもうこれ以上戦えるような精神状態ではなく,太田の暴走ももう止められない.
ワゴンの指示に従い立ち去ろうとするファントム.しかし右腕を失っても頭を吹っ飛ばされていてもパイロットの太田の闘志は未だ燃え盛る.どんな状況でも諦めないのはいつも大変に迷惑なんですが,今回はどうやら割といい方向に転がっていきます.もちろんやられるのは当然の話として(苦笑)太田の暴走のおかげでファントムの未知の機能が1つ,明らかになります.
諦めない太田機を機能停止に追い込んだのは,ファントムの胸部に搭載されていた電磁兵器.胸のライトの明滅をきっかけに開いて…発光! 精密機械の塊であるレイバーにとっては強力な電磁波は最悪の毒.至近距離で浴びせればシステムエラーを吐いて停止…するようなものをよくレイバーに内蔵したなぁ(苦笑).自身が発する電磁波で行動不能に陥らないあたり,余程強固な防磁機構を搭載しているのか.麻痺した2号機は無残に吹っ飛ばされて終了.レイバーに自爆装置なんかつける奴は悪人だけなので,太田はそんなものを期待するな(苦笑).
特車二課でまともに動くのはもはや1号機のみ.この惨状を一刻も早く伝えに行けと遊馬は野明に指示.唯一残ったイングラムを潰されたら特車二課は無力化するので,希望を先に繋ぐためにもこれは必要な判断です.…ただし走らねばならない野明は気が重い.何の装甲にも守られていない2人を置いていくのは心が痛くて.ついでに香貫花の心配ばかりしている遊馬にもなんだか腹が立ち「遊馬ー! ……無理しないでね」
深く案じる心に理由のない嫉妬をトッピングした野明の複雑な心境など,鈍い上にそれどころではない遊馬にはわかるはずもない.遊馬と香貫花が一緒にいるのを置いていく野明はその苛立ちを「馬鹿ー!」とブロッケンに向けます.これが奇麗に入っちゃって軍用レイバー1機を行きがけに地に沈めてるのが凄いよなぁ(笑).
1号機は先に撤退.遊馬と香貫花は事故ったけどちゃんと動いた2号機指揮車で追いかけるように後退.唯一太田だけは敵の虜となるわけですが,これまでの蓄積が記録されている起動用ディスクだけは直前に香貫花に投げ渡したのもいい判断.…ここでデータとそのパスワードを知る者が同時に敵の手に落ちなくて本当に良かった.もしそんなことになってしまったら,たぶん人質は全員無事に解放されはしなかったでしょう.もちろん太田をいくらいたぶったって喋るわけはないだろうけど,南雲隊長とかも人質に取られているからなぁ….
後続を気遣いながらも先を走る1号機.無人のはずの区域を走る彼女が出会ってしまったのは,前回さらっと顔見せした陸上自衛隊の空挺レイバー,ヘルダイバー! 同じ篠原製レイバーでもイングラムとは大きく異なります.示意・警告を重視するイングラムに比べると,敵から発見されないことも重要であるヘルダイバーは闇に隠れて質実剛健.
「ここは任せてもらおう」と凛々しく登場した不破隊長.こっそりとはいえ自衛隊がこんなところに誰にも知られず出張ってきちゃうだなんてさすがは幻想の世紀末だ(笑).不破は野明に口止めを依頼.ほぼ壊滅状態という二課の現状からすればこの提案は受け入れるべきものだったので,野明は了承ついでに敵のスペックについて率直に情報を流します.もちろん警察と自衛隊は犬猿の仲.けれど現場には好き嫌いを言っていられる余裕も理由もないのです.
こっそりと自衛隊にバトンタッチしてスタート地点に戻ってきた野明.ほどなく遊馬たちの乗る指揮車も追っかけで到着.もちろん問題は未だにちっとも解決していないし,目の前にはやるべきことが山程積まれたままだから一瞬たりとも気が抜けなくて…けれど遊馬と合流できた野明は理由もなく涙をこぼします.命がけで戦って心配して悲しくなって,けれど無事なのを見て一瞬ほっとして…なんてひどいクリスマスイブ.
さて,太田ごと2号機を失った第2小隊は,くじけているわけにいきません.…まあ,敵の意図が見えてきた後藤は既にちょっぴり敗北気分なんだけど(苦笑).立て直す特車二課,未だ健在の青いワゴン,そして秘密裏にこの戦場に乱入する自衛隊.凍えていく冬空の下で3つの組織の意図が熱く錯綜し,イブの夜は更けていきます.

後半.自衛隊のヘルダイバー対西ドイツの軍用レイバー&謎の実験レイバーのガチンコバトル.湾岸の片隅でありえないバトルがはじまったのは深夜に差しかかる頃.自衛隊は証拠を残したくないので飛び道具なし,ナイフのみで戦わねばならないわけですが,敵にはビームがあってリーチが違いすぎる.機動性に著しく劣るものの遠隔攻撃が得意なファントムと,機動性はそれなりでパワーに優れたブロッケンのコンビというのも攻め難い.
そして湾岸で番外バトルが始まっていた頃,香貫花の祖母を探す進士と松井はついに彼女を公園で確保.彼女はクリスマスイブの夜をたった一人で,立川の公園で過ごしていたご様子.心身ともに冷えきっていても生命には別状なし.前回からひどい目に遭い続けた第2小隊には久々の吉報ですが,それを受けたのはレイバーキャリアで待っていたシゲ.もちろん通信断絶している彼には伝達手段がなく….
2話連続のシリアスバトルもこのあたりからそろそろ終盤です.指揮車に先行した1号機が見たのは,すっかり追い込まれたヘルダイバーの姿.もちろん戦闘のプロなので行動不能に陥るようなことはありませんが,発砲もできず報道のヘリも近づいているとなればそろそろ撤退もやむなし.野明は彼らの存在を隠蔽するために今度は自分が時間を稼ぐと提案し,不破隊長たちはこれを飲みます.
ただしファントム含めて敵は全機が健在では,本当にただの時間稼ぎになっちまう(苦笑).そりゃいくらなんでも自衛隊の名折れってことで,行き掛けの駄賃として面倒なブロッケンをナイフで潰してくれたのはかなりありがたい.亡霊退治だけを警視庁に任せて「いずれまたどこかで」とかっこよく去っていくヘルダイバーたち.…後で現場検証すれば自衛隊機の足跡もナイフの跡も嫌ってほど見つかりまくるはずですが,そこは平和のため,内部でなんとかもみ消すんだろうなぁたぶん(笑).
レイバー戦がクライマックスに突入しはじめたその頃,影ではレイバーキャリアで現場近辺を洗っていた後藤たちがついに例の青いワゴンを発見していました.もちろんワゴン側も発見に気づいて逃走を開始.現場に唯一残るファントムには時間稼ぎの役目が与えられます.
イングラムの前で動き出す亡霊,ファントム.遠距離でもビルすら溶かすビームを撒き散らし,やたら装甲も丈夫なようでリボルバーカノンも効かない.弱点は動きが鈍い上に攻撃前のタメが大きいところでしょうが,近接すると今度は太田がやられた電磁波でスタンさせられてしまう.つまり相手に大技を出させないうちに一気に倒すしかないわけですが…装甲が厚すぎ「一気に倒せない!
電磁波発生装置の起動も恐れずに懐に飛び込む1号機.至近距離でリボルバーカノンを装置に撃ち込もうとするも腕の装甲で防がれてしまい絶体絶命! あわやレイバー全滅の危機を救ったのは遊馬…ではなくてシゲのキャリア.居残りだったはずなのに,待機指示無視でこんなところにまで香貫花のおばあちゃんが見つかったと情報を伝えに来てくれて,本当にどうもありがとう(笑)! いきなりの闖入者に動きを止めるファントム.その隙を見逃さず野明はリボルバーカノンを撃つ!
ついにはじまった特車二課の反撃.その中心には野明ともう一人.電磁波によって麻痺した2号機を再起動させる香貫花がいます.どんな力でも必要だからこそ遊馬も力を貸すわけですが,こんな状況でなければきっと反対したんだろうなぁ….「無理するな」という遊馬の言葉を「でも私より,彼女の方を」とさらっとかわす香貫花.ここまで不調の香貫花ばかりを心配していた遊馬ですが,彼が本来指揮するべき,気にかけるべきなのは野明なのです.
さてその頃の幽閉組.彼らはあるビルの1フロアに完全武装した連中の手によって幽閉されていたわけですが,電波障害によって通信手段が確保できずに当惑中.自分たちから連絡を取るだけでなく,外でどんな報道がされているかもわからないという隔絶状態が変化したそのとき…野明がファントムの目を潰していました.強靭な腕を脇に挟み,発光するファントムの目を壊す1号機! その瞬間,電磁障害が解消し…囚われ人が耳を澄ますラジオからは,陰鬱で荘厳で美しい音色が流れ出し,未だ暗いクリスマスの夜を貫いていきます.
ECMは壊れたけれどファントムは未だ健在.響く祈りの音楽の中,近づき過ぎたイングラムを抱いてそのまま鯖折りを仕掛ける亡霊.ここまで出来る限りのことは全てやった.不調の仲間のためにも指揮なしで必死に頑張った.けれど野明は一人ではもう何もできない.動けない.直前の発光によって目をやられた野明がアルフォンスの中で叫ぶのは…「見えないよぉ…遊馬ぁ!」ここまでの流れは音楽を含め,本当に素晴らしい!

音楽に合わせるようにして,ここまで穏やかに流れていたもう1つのエピソードも重なって響きます.香貫花の祖母が探していた50年のクリスマス.それはベトナム戦争泥沼期の思い出.彼女の愛する人はパーティの夜に飛び立って,二度と戻ってこなかった.…あまりにもあの夜が映画のように美しすぎて,偽物のようにすら思えたから,彼女は彼の死を信じることができなかったのだろうか.そして,いくら待っても誰も戻ってこないという事実を認めるまでの40年,彼女はずっと痛む心を抱えてきたのです.
国のため,社会のため,正義のため,そのために彼女の大切な人は戦って帰ってこなかった.…喪失の苦しみをぶつける相手として香貫花の祖母が選択したのは,愛する者が戦地へ向かった理由そのもの.曖昧な大義名分のために家族を失うのはまっぴらという,彼女の色濃いメッセージ.
例えば今日生まれた誰かのように,大いなる目的のためにその身を投げ出す行為は尊いのかもしれないけれど,彼女にはそれが許せない.わざわざ辛い思い出の残る日本に来たのだって,曖昧な大義のために危険な場所にその身を置く,大切な孫娘を連れて帰るため.…けれど,あまりにも重い彼女の思い出と意図に対して,進士はこんな風に答えます.「少なくとも僕は自分のために今の仕事につきました」と.
太田の大暴れに巻き込まれたり謎のレイバーに翻弄されたりする現状が危険でないと言ったら嘘になるけれど,この道はあえて自分が選んだものだし,一番大切なのは大義名分ではない.最優先は自分自身.これまで出てきた警察官たちも自衛官たちも兵士たちも,きっと一番大切なのは自分自身であったはず.「僕はまず,僕自身のために戦います」…わざわざ脱サラしてこんな危険な職についた進士にだって,それなりの矜持ってものがあるのです.

ついに降りだした雪の中を疾走する香貫花の駆る2号機と,その足元を併走する遊馬の指揮車は野明の大ピンチ中に到着! 相変わらす野明の機体に対する愛情を理解していない遊馬は「捨てて逃げろ」とか言い出すわけですが(苦笑)後には退けない以前にそもそも目がくらんでそれどころではない.ファントムはビーム放出の準備動作に入るけれど,…今はもう一人ではない.香貫花の乗る2号機がファントムの背中の羽根をへし折った!
背面の装置の破損によってファントムのビーム機能がようやく停止.ついでに香貫花には野明から祖母が見つかったことが伝えられ,俄然2号機の動きが良くなるあたりが現金…余程心配してたんだなぁ.1号機の電磁警棒を使って亡霊を仕留めようとする2号機だけど吹っ飛ばされて,しかしその隙を突いて1号機がファントムに体当たり.機体ごと海の上へとファントムを投げ出して…2号機の残った片腕が1号機を引き止める.亡霊は海中へと落下して,水煙立てて大爆発!

かくして物語は終幕を迎えます.クリスマスの朝,特車二課が手に入れたのは機能停止したブロッケンたちと海の藻屑.結構真面目に頑張って,イングラムも相当壊した代償がこれっていうのは…やっぱり普段の行いが相当悪いってことだよな.表面的には今回は1号機が大活躍したわけですが,実際はヘルダイバーが殺った分も混ざっているのは自衛隊と警視庁のためにも絶対に秘密だ(笑).
しかも後藤の見立てではこの戦いは特車二課の敗北.なんせ連中の目的はイングラムと戦うことそのものであった上に,結局生きた敵を一人も確保することができなかったわけで.警察の目前で青いワゴンを爆発させるような大変に面白い犯罪者相手では,ファントムの爆発だって当然のように信じられない.悪の組織のロボットならば,自爆装置くらいは当然装備しているはずだし!
そして後日譚.トラブルの中心にいた香貫花は,大好きな祖母の旅立ちなのに見送りにも行かない.きっと率直な彼女らしく祖母に事情を全て聞き,その上で…意見が合わずにこんな態度になってしまっているのかな.可愛い孫娘が彼女自身のためにここで働くことの選択したことを見届けて,ひとり帰国することになった祖母が機上から見たのは…埋立地に咲く小さな赤い傘.意志によって旅立ち,意志によってここに残る.それがたとえ彼岸と此岸を隔てる淵となろうとも,それでも人は自らの意志で選んで歩んでいくのです.…次回に続きます.

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