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機動警察パトレイバー#14

「後藤隊長スペシャル!の巻」

警視庁柔道大会での負傷が原因で任務を遂行できなくなった遊馬と太田.臨時で野明と香貫花がタッグを組んで,人質を取り銭湯に籠城するハートブレイクな犯人に挑むことになったが,銃を使えという香貫花の指示に野明が逆らったことをきっかけに現場はいつものような大惨事となった.意外とデリケートで隊員同士の相性の問題も大きい第2小隊.これをなんとかするために,隊長である後藤は日本の伝統的な手法を採用するのだった.

とても画期的だった「パトレイバー」.他のテレビアニメが古いフォーマットに捕らわれていた時期に,今なら深夜枠かDVDな企画を毎週地上波でやって広く受け入れられたのが凄かった.キー局で放映してなければ,そして内容に様々な世代を喜ばせる要素が盛り込まれてなければ,あれほどプラモデルが売れることはなかったでしょうね.
てなわけで今回は押井脚本によって後藤隊長の魅力が溢れんばかり! 体ひとつで戦うアクションあり?レイバーとの緊迫するバトルあり?画面に溢れる飲んだくれあり(笑).最適な対象年齢は圧倒的に高めだけれど,後藤の風呂屋での名調子を聞いているだけで子どもだって笑うに違いない.画もなかなか面白くて,後半の酔っ払いカメラワークは必見.

前半.警視総監杯争奪・警視庁柔道大会.普段から命懸けで捜査したり警護したりする連中の大会だから,当然ハイレベルな大会です.そこでやっぱり浮いているのが特車二課第2小隊.白帯ばかりの彼らは,警備部の立て前のために参加させられているのであります.
整備班とか野明,香貫花の応援を背負って挑む相手は第4機動隊B中隊.機動隊相手では素人には勝ち目なんかなく,実際に先鋒の進士は圧倒的な体格差と弱さ(苦笑)でもって瞬殺.次峰は篠原.お坊ちゃんであり頭脳担当である彼も当然白帯ですが,レイバーなしでは何もできない…と,実に正論な悪口に怒って一矢報いるつもり.開始直後に頭突きをキメて,敵の大男を悶絶させます!
明らかに反則な腹への頭突き.厳重注意される汚い手段ですが,それでも甘い,と考えるのが後藤と香貫花.どうしても汚いことをやるならば,その一撃で再起不能に追い込まなければなりません.そうでなければ必ずや相手は立ち上がり,正義の怒りで反撃してくるに違いない…ってのは,古今のヒーローものでおなじみですね(笑).
半端な奇襲で思いっきり挑発した上に倒さなかった遊馬の末路は哀れ.勝負が決まったあとでさらにキメられ,商売道具の喉をやられてしまいます.しかし実は遊馬はまだ健闘した方なのかも.中堅の太田ときたらあっさり投げられて故障してるもんなぁ(苦笑).
今回の主役は副将の後藤.一応の黒帯はヘコ帯と一緒…ではないのかな.奇妙な落ち着きと貫禄で敵は攻めあぐね,対する後藤は「来なさい」と冷静に挑発して…後藤の懐から響く無線機の呼び出し音(苦笑).間を外したシーンなんですが,もし鳴らなければ懐のそれを武器にするつもりだったらどうしよう(笑).しれっと凶器攻撃してもおかしくないんだよなぁ,このおっさんは.
きちんと上役に了承をとりつけ,会場から第1小隊の支援に向かう第2小隊.目指すは夕焼け空の下,高層ビルを見上げる下町の銭湯.ここに泥酔したレイバー乗りが人質を取って立てこもっているのをなんとかするのが今日のお仕事.現場は半壊していて,これ以上被害を広げないためにも迅速な行動が求められます.しかも篠原のボクサーで立てこもる犯人は,恋人にふられてヤケになってて説得も難しそう….
さらに第2小隊にも不測の事態が.さっき負傷した遊馬と太田が見事に役立たず(苦笑).その情けなさに呆れるしのぶさんにいいとこ見せるため,後藤は香貫花を野明の指揮に回します.…ところがなぜか彼女たちは互いに不本意.ついでにそんな場当たりの対応でごまかそうとするのを見るしのぶも不本意.
人質をレイバーの手でつかんで自暴自棄な犯人の前に,千両役者の後藤がひとり,拡声スピーカーを手に登場.最初は普通の説得なんですが,すぐに彼らしい方向に切り替わります(笑).ここの長台詞は実に押井脚本らしい素晴らしい緩さ! 本編全体でも屈指の名調子です.
彼女にフられて自暴自棄な犯人に対する,後藤渾身の説得のはじまり.「俺にはあいつだけだったって.あいつと一緒になれない世の中なんか,ぶち壊して死んでやるって.そういう自分を見れば,きっとあいつも俺って男をふったことを悔やむだろうって」…このあたりまではまだいいんですが,問題は次からです.
湯桶に座る後藤の名調子.「でも,それは間違いなわけ.そういうことは,全然ないわけ.バカな男のバカな死が,3面記事を飾り立て,世間の物笑いの種になる頃,女は別の男とひっついて,子どもぽろぽろ生んじゃって.自転車に乗っけて,買い物なんかいったりして,塾なんかに行かせたりして,それで世の中,おさまったりするわけ.馬鹿馬鹿しいと,思うだろ?」…もう説得でもなんでもねえよ(苦笑).
世の空しさを切々と語り若者の翻意を促すけれど,犯人は警察に女の紹介を要求.でも「警察は,そういうことはしない」と後藤がひたすらのらくら語って繋いでいたのは,1号機をボクサーの背後に回らせる時間を稼ぐためだったのでありました.
人質は解放できたもののまだ犯人はレイバーの中.銃を使って脚を止めなさいという命令が香貫花から出るけれど…従うべきフォワードの野明がこれに反抗.自分の判断でスタンスティックで仕掛けようとしたら,対抗する武器を求めたボクサーが風呂屋の煙突なんか抱えやがるから大惨事(苦笑)! いくら圧倒的でも思わぬ方向に振り回して自爆しちゃったりするんだから,長くて太ければいいってもんじゃないわけです.
太田が不在でも今日も快調に不祥事を製造した第2小隊.しかも猛省すべき二人は隊長の前で大喧嘩.ルール上は指揮官の指示に従わなかった野明に明らかに非があり,けれど操縦者を従わせることができなかった香貫花にも,指揮官としての責任を果すことができなかった問題があります.レイバー好きゆえに撃ちたくなかった自分勝手な野明と,効率のためにも一撃で致命的なダメージを与えるべきと考える教科書どおりの香貫花.2人は驚くほど激しくぶつかりあって,けれど始末書は2人とも書かねばならない(苦笑).
各人の大変に強い個性をぎりぎりのところで組み合わせているため,ちょっと配置を換えただけでトラブルが起きる第2小隊.極小人数で最大の効果を出すには一芸に秀でた人間を絶妙に配置するしかなく,実際に第2小隊がなろうとしているのもそういうチームなんですが…一芸に秀でる人はデリケートで角も多いもの.でもそのぶつかり合いで任務遂行できないってのもよろしくない.後藤もわかってはいるのです.

後半.ハワイ出身でエリートの香貫花と,苫小牧出身のレイバーバカな野明.完璧な経歴を持つ彼女と現場叩き上げな彼女を経歴だけで比較するならもちろん香貫花の勝ち.けれど互いの優劣に本当に納得しているなら,妙な意地の張り合いにはならないと後藤は推察しています.理論重視の過激な完全主義者には,現在もちょっとずつ成長中の試行錯誤の固まりは驚異? …それに,野良犬だからこそ同類か否かの判別には敏感なのですよ.
女性同士のこの争いは,太田と遊馬がやってるような単純な順位闘争とは質が違う.極小組織でこの手のトラブルをこじらせると組織全体の問題となりかねないため,後藤はいかにも日本人らしい,伝統的手段を取ります.…現実の現在ではやや廃れつつある風習,職場での飲み会.腹を割るにはこれしかないと後藤はやる気なんだけど,懐不如意でしのぶに資金を借りました(笑).
後藤が準備した会場1つ目は,赤提灯のやすいおでん屋.折角人がおごってくれるのに野明も香貫花も不機嫌で,間に挟まったひろみが大変に気の毒.いくら鈍くても,この場が2人の仲をとりなすためのものだとモロばれですからね.隊長の感謝なんか職務だからいらないと香貫花はばっさりと斬るけれど,後藤は頑張って,「食って飲んでぱっとやれ!ぱっと!」と盛り上げてみます.
さらに後藤が準備した会場2つ目は,青提灯のうまいおでん屋.こっちにはひろみ抜きの男性陣を揃え,赤提灯側に邪魔者を行かせないための足止めです.相変わらず家に電話している進士,嫌になるほどすっかり出来上がった遊馬,そして毎度ながら「結婚なんかするからだ,バカが」と進士をなじる太田.隊長の感謝なんか職務だからいらないと言い張るのは共通してますが,太田が言うんじゃ華やぎってものがない.それでも後藤は頑張って,「なんでもいいのでどっと行けどっと!」と盛り上げてみて…大荒れすることになるわけです.
3人で飲んでいる赤提灯側.実家が酒屋の野明は見事な飲みっぷりを見せ,素敵なスピードで日本酒を消費.それを見てもそっけない香貫花ですが,野明に合わせてグラスをあおってしまうあたり,相当に意識してますね.ハイペースで酒を消費する2人に挟まれた飲めないひろみは慌てるけれど,競争はひたすらに勢いを増すばかり…(苦笑).さらに野明はマイペースに良く食べていて,そんな天然入った同僚に必死で張り合う香貫花がかわいい.
酒が進めばそれぞれの個性が増幅されますが,野明は見事な笑い上戸で上機嫌.これと争う香貫花は…なんだか暗い.なんでそんなに楽しそうなのか香貫花にはちっともわからず,今や絶好調の野明にはよくわかる.「そりはねお酒が足りないのよ!」…当然酔っ払いの言うことなんか間違ってるんですけども(苦笑).超理論によって杯を重ねる女性陣.酔いの深さを示すかのように,彼らを映すカメラがどんどん曲がって回っていくのが面白い.
一方の青提灯はまさに大荒れ.曲がりなりにも警官なのに車で来た後藤に酒を勧める遊馬に太田は怒り,それをきっかけにはじまる目の据わった2人の幼稚な喧嘩.口だけならともかく,ガンモを顔に投げつけらえたらそりゃキレても仕方がない(苦笑).説教癖のある太田とどうでもいいことに脈絡なく気がつく遊馬は一緒に飲む相手としては最悪で,後藤であってもその対応には骨が折れます.女性陣との合流を求め「女だけで飲むなんて不純です!」とこれまた超理論を展開する遊馬に対し,太田は反抗してまた小競り合い.互いが顔も見たくないほど嫌っているのはわかるけど,どうせ大して綺麗でもないんだからさ,「顔の話はやめようよ」.
女性抜きの青提灯は,不在の女性に関し口論がエスカレート.野明を構いすぎる遊馬と香貫花の尻に敷かれ続ける太田の戦いはどっちもどっちで,「尻に敷かれた亭主じゃないか!」と遊馬も悪口三昧.…けれどこの争いが,沈黙していた危険物に火をつけてしまいます….酔っ払いの傾く世界の中で眼鏡を光らせる地雷こと進士.2人のことを「生活の苦労もしらない気楽な独り者」をひとからげにして斬った上,「所帯持ちに皮肉言うなんて10年早いと思うんですけどね!」と,言いたいことを言いわめきたいことをわめきはじめるのです(苦笑).
特に普段愛妻ぶりを常にバカにしてくる太田に対する,進士の内心の怒りは相当のものだったから…「女一人幸せにすることもできない人が聞いた風なことを言うもんじゃありませんよ」とおばかさんに説教.その雰囲気の怖さに太田はもちろん反抗できない.遊馬だって怯えて見ているしかないのです.
さらに進士がターゲットにしたのが後藤.いい加減赤提灯の様子を見に行きたい自分たちの上司に対して,面倒なことからとんずらする,「あなたはね! そういう人なんです!」と本音爆裂(笑).これほど酷い酒もなく,しかも酒癖「悪くて悪いですかー!」と絶叫して倒れて他人の酒を勝手に飲んで「多美子ー」と絶叫.まさに手のつけられない大トラを倒したのは,屋台の女将のビール瓶.…女将さん,ナイスバッティング!
青提灯が惨劇と化していた頃,野明と香貫花は2人きりでまだ飲んでいました.瓶を抱えて背中あわせに酔っ払う2人の女性は,ついに腹を割りはじめます.野明が聞きたかったのは,香貫花は一人で日本に来てさみしくないの? …単純に出来ている野明の場合,あまりにも自分とかけ離れた彼女の心が理解できなかったみたいですね.もちろん普段から完璧を売りにして,他者に対し壁を作ってきた香貫花のせいでもありますが.
すっかり出来上がって今にも崩れそうな香貫花曰く,逢いたいのは「グランマ」.おばあちゃんっ子の彼女らしい正直な答えの末に,「帰りたい…あたしおうち…帰りたい」とぽろりと涙をこぼして呟きます.これはもう大変に可愛いらしい上にわかりやすかったので,ようやく野明は香貫花という存在に納得.ついに倒れた香貫花に上着をかけてまだ手酌で飲んでいる野明.けれど青提灯からようやく解放された後藤が赤提灯に再訪する頃には,店主含めて全員ですっかり寝込んでいたのでありました.

荒れた飲み会の翌日も仕事は待ってはくれません.小組織で余分な人員のいない組織ならなおのこと,たとえどれだけ気持ちが悪かろうとも現場に出なきゃならないのです.今日の出動先は上井草.ほとんどが二日酔いなんですが,野明だけはあれだけ飲んでいたのにいつもと変わらず元気.香貫花を倒すほど飲んでも一晩眠れば元気だなんて,一体どんな肝臓なんだ(苦笑).
人には誰しも長所と短所がでこぼことあり,履歴書では負けても飲み比べなら勝てるという多面性があります.1つがダメだからって全部を否定されるわけでないってのが人間の素晴らしさであり,「とどのつまり,信頼なんて互いの欠点を認め合うことからしか,はじまらないしさ」と後藤は自分の昨晩の仕事に満足気.ただし1つだけ失敗したのが「…飲んでる暇がなかった!」 …こんな風にぶつかりあって,しかもあっさり納得して全てが片付いてしまうのは,隊員たちが若いからなのかも.次回に続きます.

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