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機動警察パトレイバー#12

「恋は淡雪の幻の巻」

特車二課の火薬庫,汚名の権化である太田が見合いする.しかも美人と.同僚からすればそれだけで大事件だが,さらに太田はその見合いにものの見事に失敗し…なのに次のデートにまで漕ぎ着けるという奇跡を見せた.見合い相手の彩乃さんは不器用すぎる太田にも寛容で,しかもレイバー好きとなれば期待度の上昇も必至.柄にもなく恋の病に浸った太田はついに告白しようとするものの,思った以上にあっさりとふられてしまう.

前回でシリアスをやりきって,今回からコメディ通常営業に戻る「パトレイバー」.とはいえ作品の品質が落ちることはなく,監督自ら演出・絵コンテやってるあたりが本作らしい(笑).しかしこの回のスタッフ的な見所はそこじゃない.現在では第1線で活躍する伊藤氏直系弟子の横手美智子氏のデビュー作がこの回.はじめてながらも,現在も健在な,表面的には淡々としているようで中身は相当にウェットで浪花節な作風がしっかり見られます.主役は太田.じっくり見直してみると覚えていた以上に傍若無人で迷惑な奴であったこいつが美女を前にして右往左往する様子が最大の見所.

前半.第2小隊は今日も元気に待機中.しかもあの太田が美人とお見合いをするという異常事態が発生し,整備班まで巻き込んでのお祭り騒ぎとなっております(笑).主な仕事が「銃を撃つ」「足を引っ張る」「役に立たない」の3本立てである太田には当然のように色恋は似合わない.当たって砕けろ,猪突猛進!って台詞は両方とも全然見合いの応援になってねえなぁ(苦笑).
恋愛…というよりはできちゃった婚がメインの昨今では今や廃れつつある風習なお見合い.それぞれ相手のいない男女をその親戚や知り合いが引き合わせるというセレモニーです.この場で意気投合すればそのまま結婚前提の交際へ発展,ダメな場合はそれまでよとなる大勝負.日本庭園を舞台に展開されるこの戦いで,スーツ姿の太田が出会った強敵は,和服もしとやかなお相手,藤井綾乃さん.恐らくはもろにタイプであった太田は緊張しすぎてがちがちで…そんな態度で十分戦えるわけがない.若い2人で庭散歩というのも古より伝わる儀式の1つなんですが(笑)その遂行中に,水音が.
てなわけで,予想を超えて太田は見合いに大失敗.その気まずさに職場が通夜の席と化しております.事情を知らない野明が遊馬に給湯室で知らされた昨日の惨事とは,庭散歩の最中に池にはまったという大変にいたたまれないものでありました(苦笑).そこまでやらかせばもうだめだろと考えるのが当たり前.第2小隊では傷ついた太田の心をこれ以上痛めないように関連する言葉を禁句とします.見合い,破談,破局,お断りは当然ダメ.別れる切れるの離別言葉や落ちるはまるの池オチ言葉も,築山灯篭錦鯉などの庭園言葉もダメ.…そして,ダメと言われるとつい使ってしまうのが人間の悲しさなのです(笑).
NGと意識すれば意識するほどその表現が出てきてしまう,言葉選びの負のスパイラル.それにあっさり巻き込まれた第2小隊は普通の会話すらできません.お茶を「落とさないで…」と言った瞬間全員で反応.イングラムの納品について「先週壊したところは…」と言った瞬間また反応.このシーンでの全員の反応ぶりがなかなか面白い.クールな香貫花もちゃんとちらっと見てるんだよな.
暗く落ち込んで無言の太田をさらに追い詰めるのは,見合いを仕切った叔母からの電話.この状況で考えられるのはもちろん正式なお断りのみだから,緊迫感に耐え切れず電話の最中だってのに慰めに行ってしまう進士の気持ちはよくわかる(苦笑).…しかし! 大方の予想に反して笑う太田! 明日には2人きりのデートを申し込まれるという大逆転!
まさか池に落ちるような奴がふられなかったとは.その奇跡に驚く第2小隊は,おせっかいにも太田のためにちょっと特殊なケースにおける実戦討論会を開催.…つまりはデートマナー講座なんですが,事前に相手の趣味を確認しておくべきとか,当日は時間には決して遅れず服に関しては常識として誉めるべきとか,当たり前のようでありながらもなんとなく時代を反映している描写が面白い.今だと皆携帯を持っているから,待ち合わせの時間感覚は当時よりずっとルーズになっている気がするな.
皆でよってたかってデートの心得をたたき込み,今度こそ失敗せずにデートができるかと思ったんですが…そこは太田だけのことはあり,実際にはいきなり遅刻(苦笑).待ち合わせ場所に既に彼女は待っていて,即座に謝った上に今度は服を誉めねばならないわけですが,またも緊張のしすぎで挨拶と謝罪と服を誉めるが大混乱! 女性からすれば,池にはまり遅刻し挨拶もろくにできない困った男にしか見えないはずが…それをにこっと笑って受け入れてしまう彼女は一体何者だ?
どう考えても既に3度はふられているはずの太田とデートしてくれることが凄すぎる綾乃さん.不器用極まる男と歩く道にはみぞれが降りしきる.普通なら不快な天気を「いつ雪になるかと思うと,わくわくするでしょう?」などと受け入れている彼女の心の広さが読めません.しかも太田は綾乃さんのコートの泥撥ねを余計悪化させて…それでも太田が真面目で優しい人なのだと思っていそうな彼女はまさに菩薩で女神です.
地上に舞い降りた女神に完璧にやられた太田の頭はついにオーバーヒート.俗に「色ボケ」と呼ぶ状態に変化した太田ときたら,屋上で黄昏れてみたり野明のバケツを持って変なフェミニストぶりを発揮したりと明らかに異常.「お前は雪の予感にわくわくしたことはあるか」なんて真顔で言い出すような奴は太田じゃない(笑)! あまりの怖さに撤退する野明の気持ちもよくわかる….
何かの間違いによって継続していく太田のデート.職業柄レイバーに関して厳しい太田はたかが映画の描写にダメ出し.彼女に誘われた映画に対して,楽しい感想ならばまだしも,物語の本筋に関係ない部分をつついて批判するのはもう大失敗だろ(苦笑).もう帰ったっていいのに彼女ペースのデートはまだ続く.しかも今度は現場に菱井のニューモデルレイバーを見に行くというマニアックぶり! 彼女のレイバー知識は相当に深く,しかも「きれいでしょう?」 とか言い出すのがあまりにもミステリアス….「レイバーって好きですわ」というコメント.太田がレイバー乗りと知っていてこの発言は一体!
奇跡の女神の一言に惑いまくる太田は職場でも机上の薔薇を凝視していて滅茶苦茶怖く,同僚からすればこの状況が信じられない.もう何回ふられているかわからない太田になぜ愛想を尽かさないのか.パートナーの香貫花ですらどこがいいのかわかんないってのに(笑)! そして太田は彼女のあの一言の意味が理解できない.犬を飼ってる人に向かって女がこの犬が好きというときは…「犬が好きじゃないんですか?」と答えるしかない進士は常識人であり,今や恋に狂う太田は明らかに考えすぎ(苦笑).
…太田は自分の都合のいいように考えすぎな上に,同時に考えが足りていません.特に美人が女性には珍しいものに詳しくて好きだとか言い出した場合,真っ先に疑うべきものがあるのです.例えばマニアックなアニメ,あるいはコンピュータ,はたまた車,バイク,電車…彼女がそんなものに興味を持ったのは別の男性の影響ではないかと疑うことが大人の常識ですので,ぜひとも皆様にもしっかり覚えて帰っていただきたい(笑)!
ピリオドとなったのは最後のデート.高層ビルのレストランで,大人の常識のない太田が特攻を仕掛けます.テクニックなしの単刀直入で切り込むその直前に!「すみません」と断られてしまう太田爆散! …元から失敗は当然だったわけだけど(苦笑)太田の恋は粉々.前半終了まですら持たなかった淡い夢….

後半.夢から醒めてしまった太田の暗さに重苦しくなってしまう第2小隊.見つめる薔薇は枯れ食欲もなく,太田の癖に実弾射撃すら喜ばない! …自分勝手な暴れん坊は女神の登場に高く舞い上がり,しかし女神の言葉によって高層ビルから叩き落とされ生ける屍に.きっと彼女は周囲に強く勧められていたのだろうというのが遊馬の見立て.さすがいいとこのぼんぼんであるだけのことはあり,いいとこのお嬢さんが味わいそうな圧力には相当の理解があるようです.
さらに前半に太田を踊らせまくった女神がついに特車二課に降臨.いきなり写真と話でしか聞いていない菩薩に声をかけられたら,そりゃシゲだって動揺するさ(笑).…太田と綾乃さんの最終決戦は第2小隊関係者全員が気になるところ.そこにはちゃんと後藤まで混じっているのが下世話だね(苦笑).しかし2人は聞きたい皆を置き去りに,岸壁の方に歩いていきます.
二課の暮らしを支える海を見ながら2人きり.この間の別れはさすがに申し訳ないと考えたのか,綾乃は太田に弁解に来た御様子.…けれどどんな言葉がその途中に挟まるとしても,太田が振られた事実が今更変わるわけではないから,ふった相手に誰にも言えなかった話を聞いてもらおうとする綾乃はあまりにも甘え過ぎている.…曇天からこぼれる夕日の光.そして雪の気配.別れる2人には似合いのステージで太田は何事かを告げようとして…けれど出動命令が.
新宿の工事現場で落盤事故.そこに菱井の新型レイバーが生き埋めになってしまったと聞いた綾乃は血相を変え,後藤に現場への同乗を願い出ます.…かくして前半でご紹介した大人の常識が見事的中していることが明らかに.彼女が気を遠くするほどに心配しているのは,美しいレイバーではなくそれに搭乗していて生き埋めになっている男…イチハラタカアキ.これまでのデートの間も彼女の心には彼がいて,その恋敵を救うため,太田は命を賭けねばならない.
下水道から侵入した落盤現場.瓦礫が山になっていて,崩れていない部分も今にも崩れそうな不安定な状態.どうやら運良く埋まった場所が良かったようで,程なく埋まったレイバーを発見することに成功したわけですが…ここで珍しく野明が大失敗.天井を支える鉄骨を救助の邪魔と外してしまったため再び崩れだす現場,2次遭難の危機!
この状況をフォローしてくれたのが太田の2号機.凄くらしくない活躍ぶりを見せるのは,恋の魔力が未だに残っているため? 1号機に遭難したレイバー本体からコックピットだけを引き剥がさせる太田.2号機指揮車に同乗中の綾乃に通信を代わってもらい,大変に個人的な質問をしています.…職務を遂行する上で公私混同はもちろん許されるものではありません.けれど命を賭けようとする男には,未練を断ち切るための言葉くらいは許されるはずです.
さっきの話は今助けようとしている操縦者の男の話なのかと尋ねる太田.…粗野でマナー知らずで不器用だけれど,彼女がどんな返事を返してくるのかは知っていて,しかも思った通りの回答をよこす女神は無慈悲.こんな想いをするくらいなら,池に落ちた段階でさっぱりとふってくれればよかったのに! ずっとみぞれが降り続くなら,雪に変わるかもしれないなんて知りたくなかったのに!
「…はい」「…わかりました.どうもすいませんでした」

命を賭けて恋敵を救う太田の戦い.1号機の救出が完了するまで柱となって粘り,支えて…ミッション終了とともに大崩落し土煙を上げる現場.下水道経由で1号機は要救助者とともに脱出したものの,今度は太田が埋まって遭難.人命と恋のために大きな犠牲が!…ってことには本作はならない(笑).様々なものを振り切って,2号機は地下から大復活!
現場では恋の終幕.コーヒーを持ってきた野明を遊馬が止めていて,一人きりで手袋を脱ぐ太田.命を救う職務を遂行してすっかり汚れた手袋を脱ぎ,降り出してきた雪を感じる…,不器用すぎて何を言ってもやってもダメだった男が演じる無言劇は,予定調和をきれいになぞっていきます.ひらひらと舞って溶けて消える雪.決して手に入らない幻影.その中で,救急車の傍でマフラーを取って静かに一礼する綾乃に何も言わず敬礼する太田.格好つかない猪突猛進は最後まで三枚目のままですが,そこには三枚目なりの美学があります.ふられるならば未練残さず,いさぎよく!
このようにして太田を襲った恋の病は過ぎ去って…太田はすっかり元に戻ってしまいましたとさ(苦笑).無骨で不器用で基本的には役に立たない太田らしく,トリガーハッピーぶりはどこまでも.ついに太田の手に入らなかった淡雪.けれどよくよく考えてみれば,積もった雪は射撃訓練の邪魔!障害物! だからいらない! …つ,強がりなんかじゃないんだからね(笑)! 太田って可愛いなぁと思いつつ,次回に続きます.

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