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デジモンセイバーズ#15

「再びあの日の16時の巻」

全ての装備を失って,仲間とともに身ひとつでメルクリモンのいる無限氷癖へと旅することになったマサルたち.大地に這う巨大な亀裂を越えようとする最中に,大量のクモ型デジモンに囲まれ捕らえられ,深い谷底へと運ばれてしまう.
この谷を支配するボスの前に吊り下げられた人間たち.生き物の魂を主食とするメタルファントモンは,マサルたち3人に悪夢を見せて心の精気を吸い取ろうとする.心の奥にある恐れていることや忘れたいことを引き出して見せる悪夢の中でトーマが見たのは,幼い自分が母を失ったあの日の夕方だった.

未知のデジタルワールドを3人と3匹きりで進み出した「セイバーズ」.1話どころか10分持たずに遭難したため,全てカタがつくはずの無限氷壁へと進みつつ,デジモンワールドと自分たちに対する理解をより深めていくシリーズ…ってことでいいのかな?
キャラの紹介を中心とした前クールに比べると,過去に人間とデジモンの間に何が起き,そして現在何が起きつつあるのかという謎解きが中心のこのクールでは気掛かりで魅力的な伏線が満載.それらしきものを拾って組み合わせて眺めるのが大好物な自分にはひたすら楽しいわけですが…自分が楽しいってことは子どもは完全に置き去りになってる可能性があるなぁ(苦笑)!

大門博士探索兼メルクリモン討伐隊としてデジタルワールドに乗り込んだはずが,主に謎の少年のおかげでいきなり未帰還者候補にされてしまったマサルたち.彼らが目指すべき場所はジュレイモンの示した無限氷壁のみ…というわけでデジモンワールドを徒歩移動中.前回ラストでは簡単な話と言い切った癖に,もう愚痴ってるマサルってダメだなぁ(苦笑).移動を続けるにはエネルギーが必要なはずですが,食料は現地で確保してるのかな.デジモンが人の食い物を食えるなら,デジタルワールドにも人の食えるものがあるってことなのか.
移動の先で彼らを待ち受けていたのは,人間界の都市の街並みが側面に生えている巨大な谷.で,それ見てデジタルワールドだから何があってもおかしくはないと言い切るトーマ.…きっと真実なんだろうけれど,状況を全てその一言でぶん投げるのは特に研究者としては間違ってる(苦笑).このでかい障害を越えねば目的地には辿りつけないとわかった段階で,バカが勝手に降りはじめます.愚痴ってた割に先頭切って降りてるのは,疲れよりも淡々と歩くことに退屈してたのかもしれないな.
今となっては貴重な装備のロープを使って谷の下へと降りていく一同.ロープに十分な長さがあるなら,無理に深く下りなくてもララモンに持たせて向こうの崖にやって渡れそうなもんだけど…ビルを伝い渡れそうな地点を捜す一同を,宙から観察しているのが偵察用のクラモン.その目に映ったものは遥か遠くの水鏡の中にそのまま映るので,イクトたちがじっくり観察中.あれは入ったら出られない場所とゴツモンが言ったために,普通は見ていられずにしゃしゃり出て巻き込まれるのが王道なはずのやんちゃ系が,結局まる1話傍観しちゃうのは珍しいかも.
イクトたちに完全傍観されながら,あっさりと罠に踏み込むマサルたち.早速大量のクモ型デジモン,ドクグモンに1人と2匹を持っていかれて,残るのはマサルとトーマ・ガオモンのコンビのみ.移動速度の差が如実に出た感じだ.ただし残った3人も,結局はクモに捕まって谷底へと運ばれてしまって今回も全滅の大ピンチ!
谷底ではドクグモンたちによって人間だけが宙づりにされ,下の方にデジモンたちが捕らえられ.人とデジモンが密接に結び付いているDATSのチームを倒すなら,分断してから力のない人間を集中攻撃するのは理に叶ってますね.ただし本気でやるならば,本当に遠くに引き離さなきゃだめでしょう.例えば世界の壁を隔てるくらいに徹底すれば,現段階ならばちゃんと倒せた気がする.そして今後は倒せなくなる気もする(苦笑).
最後に谷底から出てくるのが今回の真打,完全体のメタルファントモン.「呪うべき人間め」と登場した谷の支配者には,悪夢を見せて心を喰らう力がありました.…人がいないときにはやっぱし他のデジモンの心を喰らっているのだろうか.歌のような技のために人間たちはろくに抵抗もできずさくっと眠ってしまい,メタルファントモンの餌食の道をまっしぐら.心の力を全て吸い尽くされてしまえば,もはや死んだも同然なのです.
親玉が人間に見せる悪夢は人それぞれ.マサルの悪夢はチカさんを必死で助けようとするもまったくうまくいかないというオーソドックスなもの.殴っても殴っても敵は増えて最後にはそれに押しつぶされてしまうマサルの夢は,ともかく妹が大切で敵デジモンを倒したい,精神的に健全なこいつらしい,実に微笑ましい悪夢です(笑).
続くのがヨシノの悪夢なんですが,これがなかなか興味深い.現在のところマサルやトーマほどこの世界との関係の深さを見せていない彼女の悪夢は,灰色の過去.ピアノのある民家の一室で泣いている幼いヨシノは,父さんも母さんも大嫌い.…そういやヨシノはララモンと二人暮らしなんだよな.未だミステリアスな彼女の家庭には,やはりこの世界と彼女を繋ぐ大きな何かがあるんだろうか.
人の心の奥にある,恐れているものや見たくないもの,忘れたいこと,逃げたいこと,思い出したくないことを見せるというメタルファントモンの悪夢.最後に広げられるのが今回の主役であるトーマの悪夢.ごく普通の日本のある街で起きた過去を追体験させられることによって,トーマの心は限界まで追い詰められることになるわけですが…キッズアニメの王道では,主役格を追い詰めすぎると真の力に目覚めるんだよなぁ(苦笑).
トーマが幼い頃に暮らしていた日本のごく普通の街.実は彼は生まれついての金持ちではなく,庶民の生活をちゃんと経験していたという事実がここで判明します.…でも当時はあまりにも幼すぎて,そして思い出すのが辛すぎて,折角の貴重な経験はかなり死蔵されちゃってるに違いない.
母とともに過ごした街の思い出の最後は悪夢.いきなり切り替わった場面の中は,さっきまで笑っていたはずの母がまさに亡くなるところ.楽しい思い出の果てには悲劇しかないことを示した上ではじまるのは,そこへと落ちていくあの夏の日…幼いトーマの全てが暗転した夏祭りの日に,現在の彼は幽霊のように無力な状態で送り込まれます.…現実のデジタルワールドでは,囚われたデジモンたちがパートナーたちの復帰をひたすらに待っています.

トーマの見る長い悪夢は,もはや変えようもない過去の現実.それでも悲劇を止めたくて必死で走る彼は,いかにも夢の中らしく彼らしい冷静さをすっかり失っています.懐かしい在りし日の母を止めるためにどれだけトーマが頑張っても,母にも幼い自分にもその頑張りは決して届かない….過去の自分や母には,今のトーマの姿は見えないし触ることすらできないのです.
現在のクールな売りの天才トーマと違って,幼い彼は実に快活で楽しげな普通の子ども.そんな彼の母は長い黒髪が印象的な優しそうな女性で,7話で大門家の女性陣と触れ合って思い出したシルエット通りの姿です.今はもういないこの人の生涯最後の笑顔を再び見ることとなったトーマは叩き叫びあがいて2人を止めようとするも,幽霊の言葉は誰にも届かず,母の運命は悲しい重力に引かれて落ちていく.
傍から見れば絵に描いたような陳腐な悲劇.しかし体験した当人にとっては洒落にならないほど辛い記憶.浴衣姿で花火会場に向かう2人の歩みは決して止まらず,ゆえにトーマは車道に走り,向かって来る暴走トラックをその体で止めようとするけれど…幽霊は悪夢に何の影響を及ぼすこともできなくて.あの夏の日,幸せな親子はトラックに襲われて,母の瞬時の行動の結果その息子だけが生き残りました.惨劇を前にしたトーマは,何も出来ない今の自分と,自分の命と引き換えに母を失ったあの頃の自分に慟哭します.
悪趣味なメタルファントモンは悲しみを媒介にして人の気力を食らい,集中攻撃を喰らったトーマは悪夢の中で泣きました.大切なものが崩壊した痛みを再び体験させられて,あっという間に悲しみの限界を越えてしまった彼は…青白い光に包まれます.彼がメタルファントモンの精神操作すら壊す心の力を発揮したのは,デジソウルに天性の才能があるから? それとも彼もまた苦しみを知った上で越えていける人間だから?
光の中でトーマの涙を拭う白い手は,今はもう失ってしまった母の手.それが優しかったこともちゃんと覚えているから…「大丈夫だよ母さん」.悲しいことを覚えていて,楽しいことも覚えている,思い出の中に生きている母はただの悲しみではなくて,失えないかけがえのないもの.夢の中で暴走する悲しみと喜びと愛と怒りはデジモンの許容量を遥かに越えて,蜘蛛の糸など吹き飛ばす!
追い詰めたおかげで案の定覚醒したトーマは見事にぶち切れ.まあそりゃキレるよな,あれほどやられちゃ(苦笑).大切なものを道具にされた怒りに荒れ狂う心は,クールで平静ないつもの彼にはない新たな力を導きます.マサルの時は護りたい一心で湧き上がったけれど,今回は激しい怒りによってトーマの全身から湧き出すデジソウル.「人の心を弄ぶものはその報いを受けるがいい!」
大切なものを汚す相手に対する強い怒りが導いた新しい力は,いきなりまだつかまっていたガオモンを2段階進化させます.ガオガモン,そしてマッハガオガモンにまでフルチャージさせるその能力は,一体人の心のどこから生まれているのだろう….完全体のマッハガオハモンは攻撃装備が充実.ライズグレイモンと同じく飛行可能になったのも大きいですが,これまでは決定力に欠けていたところにウイニングナックルやハウリングキャノンという,タメが小さい割に威力のでかい技が手に入ったのが大きい.
未だ宙釣りのマサルとヨシノたちをハウリングキャノンで救い,ここからはDATSの3人と3匹が全員で反撃! 「3度同じ手をくらうかよ!」というわけで,ようやくマサルもドクグモンを殴ってデジソウルをチャージ.ジオグレイモンとサンフラウモンの2頭によって,大量のドクグモンが一斉駆除されていきます!
そして今回の主役はその役目を貫きます.一度はメタルファントモンに押し負けるマッハガオガモン.けれど怒りは収まらず,野蛮にも生えていたビルをぶん投げて反撃! その攻撃ぶりはスマートで美しいとは到底言い難く,無差別に技を放つメタルファントモンの攻撃を冷静に避けた上で,えらい怒りながらフィニッシュを指示するトーマのようにおっかない(笑).ラストは真正面から突入してのウイニングナックルを見事に決めて,無礼な敵を粉砕!

結局トーマの怒り覚醒によって全滅せずに済んだ3人と3匹.大変ではあったけれど新しい力を手にいれて巨大な谷を越えることもできたから,結果オーライと評価してあげたい(笑).夢の中でも殴り続けていたマサルはさすがに疲れ,不思議な悪夢を見ていたヨシノもがっくりと膝を着き.そしてトーマは…なんだか寂しそう.確かに心の中には生きていますが,彼女が現実にはいないのも確かで,それが今更ながら彼を感傷的にさせてるんでしょうね.
ただしトーマは感情にひたすら溺れることもなく,すっかり遅れた行程を取り戻すために先を急ごうと思ったら…今度はヨシノが倒れてしまった! これはトーマの本心なんかどうでもよくなるくらいの大事件.バカと天才の間で苦労しているはずなのに,やることにソツがなさすぎて逆に目立たないヨシノ.その素顔が明らかになるときが来た…のかと思ったら,明らかになるのはファルコモンの素顔の方なのか(笑).拾いて磨く価値のある謎の断片が大量に転がっていそうな次回に続きます.

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