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機動警察パトレイバー#19

「深淵より這い寄る混沌の巻」

東京の地下にいくつかの拠点を作り,それを結び地下ネットワーク都市を作るという東京ジオシティ計画.その中心となる大縦穴にテロリストが侵入し,強力な爆発物を仕掛けたという.要請を受けて出動した第2小隊では1号機に野明,2号機に爆発物のスペシャリストである香貫花が搭乗し,2機きりで巨大な大穴へと降りることになった.ジオフロントの最深部で,工区丸ごとを吹き飛ばすほどの時限爆弾を香貫花は無事解体.続いて最近発見された巨大鍾乳洞へと踏み込むのだが,そこにはテロリストでもレイバーでもない,古い驚異が潜んでいた.

趣味の世界を趣味人が描く「パトレイバー」.伊藤和典と押井守の2枚の大看板を抱え,放映当時から他作にはない充実ぶりが目立っていた本作の脚本に挑むのは…いづぶちゆたか! ひらがなですがもちろんデザインのあの人です.
やりたいことがそのまんま出る素直な彼が描きたいのは,封印された大怪獣と香貫花.あとちょっとだけ後藤隊長.それだけやれればもう満足と言わんばかりの愛情が…濃いなぁ(笑).演出の元永氏と絵コンテの滝沢氏の仕事のおかげでアクション面もまた趣味の世界で面白いんですが,地下を行ったりきたり流されたりする位置関係がやや追いにくいのが難点.地下構造はもうちょっとシンプルでもよかったかも.

前半.東京の地底に向けて穿たれた巨大な大穴が,今回の舞台となるジオフロント.この世界では既に第2の関東大震災は終わっているので,現実以上に地下の開発に熱心みたいですね.もちろん地下は未知の世界.レイバーを大量投入して作られた縦穴の底では,巨大な鍾乳洞なども発見されたりしております.
工事関係者にとっては予期しないものの発掘は災難.珍しい遺跡が出てしまい,工事がストップし学者先生の独壇場になるってのは現実でも時折見られる光景ですが,工事全体の中心について予定通りの作業ができないと,全体スケジュールに大幅な遅れが発生してしまいます.…でも発注側でも鍾乳洞をレジャーエリアにしたいとか目論んでるってことは,工期にも多少の猶予が与えられているのかな.
そんなけだるい穴を一気に壊すのがテロリスト!作業員の中に混じっていたなんとなく目つきのヤバ気な男.彼は一人で勝手に最下層へと降りて,持ち込んだ爆発物を弾けさせて現場を壊す! しかもこれはテロリストが地上からの侵入を阻むためにちょいと起こしたもので本命は別.この世紀末の日本では,現実の日本よりもずっとテロ…というか爆発物の脅威と隣り合わせなのです.
そんな緊急事態に当然のように送り込まれるのが我らが第2小隊.もちろん彼らはひどくのんきで,行き先がSFみたいだと喜んでみたりしております.深度100~200メートルで直径40キロの巨大な放射状地下都市ネットワークを建設するってのは確かにSF.レイバーをはじめとした異様に発達した土木建設技術の賜物って奴ですね.未知の地下探検はどうしても心躍り,タイムカプセルの話など楽しげにしているところへ「何も出てきやしないわよ」とクールに口を挟む香貫花はリアリスト.
今回爆発物を持ち込んだ犯人が所属するのは過激な環境保護団体である地球防衛軍.その声明文に「地下は地神の領域」だなんて新興宗教テイストが含まれているのが変にリアルで嫌だなぁ(笑).崩落を起こしたテロリストは未だ地底のはず.ここが単なる災害現場ではなく現在進行形の事件現場であるからこそ,警視庁の彼らが引っ張り出されわけですね.
現場の最下層部にかなり強力な爆発物を持ち込んでいる犯人.そのまま爆発させたら工区もろともどっかーんで,ジオシティの計画も根本から揺らぐに違いない.けれど今回は大丈夫.どう考えても自爆の元にしかならない太田ではなく,NYでテロ用の特殊訓練を受けていた香貫花が2号機に搭乗するので! 指揮官なしにレイバー2機のみで地中に潜るとなれば,少なくとも全然沈着冷静でない太田の参加だけは絶対に避けるべき.いくら本人が行きたがっても,お留守番にしておくのが全員が生き残るための秘訣です(笑).
野明と香貫花の搭乗した2機は巨大な縦穴へと侵入.1号機と2号機が手際よく連携する様子が新鮮だなぁ….ただし道の途中では野明がなにかの唸り声を耳にしています.現実主義者の香貫花は「ここはジュール・ベルヌの地底世界でも,将門の首塚でもない」と全否定でばっさり.期待しているようなことは起きないし,宝物も出て来ない…と言うけれど,冒頭で神主がおびえていたように,そして地下のテロリストの足元で何かが蠢いていたように,枯尾花で済むわけがないのが本作なのです.
野明たちは爆発物を発見.ワイヤートラップも施されていますが,注意深い香貫花のおかげであっさりひっかかるようなこともなし.2号機に太田が乗っていないと本当に安定感があるなぁ…(苦笑).あの癖の強い2号機で香貫花は爆弾の解除も開始.地下とは通信だけで繋がっている仲間たちにとっても,順調なのは喜ばしいことに違いない.
しばし後,爆破の設定時刻までに香貫花は時限装置をしっかり止めて,神経をすり減らしたまま,まだ地底にいるはずの犯人逮捕に向かいます.さらに地上でも後藤がひろみを連れて他の隊員を残してお散歩を開始.事情聴取の際に見せてもらった模式図にはジオフロントの真横にある鍾乳洞の構造が大まかに示されていたため,そっち経由で上がってくるだろと山をかけたからなんだけど…後藤のあの軽さは一般人が見たら不思議だろうし,不安だろうなぁ(笑).
犯人逮捕のために地底を伝い,地底の鍾乳洞へと踏み込むイングラム2機.さっきの声もあるし爆弾もあったしで野明はもう戻りたいけれど,今の彼女の指揮官で,職務に忠実で割と猪突猛進気味の香貫花は先に進む気満々….けれど鍾乳洞に足を踏み入れた2号機の足元から,謎の触手が這い上がる!

後半.香貫花たちが後を追いかける少し前,道の途中に嫌な置き土産を残して鍾乳洞を上がっていった犯人.不敵にも口笛など吹きつつ鍾乳洞を登り,出口でレイバーを捨てて逃げようとしたところ…「あ!」後藤隊長のおっかない顔が闇のなかからこんにちは! 「あ!」そして背後にはもっとおっかないひろみちゃんがこんにちは(笑)! そそして頭をごんとやられてさっくり逮捕.前半のやり口はなかなか陰湿でいかにもテロリストっぽかったんですが,よりによってお散歩中の後藤に逮捕されるなんて,情けないなぁ(苦笑).
さて,この鍾乳洞には後藤やひろみの顔以外にも怖いものがいろいろ.時代物の白骨死体なんかも転がっちゃってますからね.さらに地上へと通じる長い梯子を登ったならば,そこは神社の封印の祠の中.…中から変な音がする上に怖い顔が出てきたら,神主だってびっくりするな(笑).
由緒正しそうなこの神社の祠には,竜神が封印されているという伝説が.昔は竜神退治に侍たちが中へと降りて,2度と戻ってこなかった.…さっきの人骨が竜退治の成れの果てとするならば,この洞窟にいたのは….鍾乳洞の底では謎の触手によってレイバーごと水中に引き込まれそうになる香貫花.1号機はあわてて銃撃するけれど,ろくに効かずに2号機は水没! この香貫花絶体絶命の危機を救ったのは…さっき逮捕されたテロリストの置き土産!
犯人が逃げる途中に置いていった時限爆弾が運良く爆発したことで,幸運にも謎の触手から逃れることができた野明と香貫花.しかし2号機は右足のバランサーをやられ自走できなくなった上,何者かは未だ2機を追いかけてくる….香貫花は自分が残って時間稼ぎをすると宣言するものの,野明はきっぱり拒否.いくら命令でも仲間をオトリに逃げるなんて,地味だけど主役にできるわけがない.「泉巡査,只今の命令を無視します!」と,砂利運搬用のコンテナを運ぶワイヤーに2号機をつかまらせてしまいます.
テロリストと野明に救われた香貫花の2号機は,野明の1号機とともにワイヤーに掴まり上へと逃れます.その途中でなぜか小さな部屋に入るとなぜか都合よく液体窒素のボンベが発見されるのは…それがお約束だからだな(笑).本来は人間がクリーチャー相手に演じる部類のホラーテイストのアクション逃走ゲームを,大穴とレイバーでやっているわけです.
弾はあわせてあと7発.クリーチャー未だダメージなし.コンティニューなしのこのゲームを突破し生き残るには,手持ちの全てを投入せねばなりません.迫る巨大な化け物の吠える姿は竜に似ている.眼前のそれに香貫花は容赦なく撃ち込むものの…効かない! そんな大ピンチを救うのは地味だけど主役の野明.さっき発見したボンベの中身をぶっかけて,竜に似た巨大な何かを凍らせて動きを止める!
地下で女性陣が命懸けの逃走をしていたその頃,地上では連絡が取れなくなったと大わらわ.さらに犯人が語るところによればでかい爆弾には2つ目がある.「山彦」はダメでも「海彦」は生きているとまで囀ってしまうと,後藤くらい頭が働けば「海彦」の場所は自明(笑).陸側の工区で爆発が阻止されたってことは,もう1つは土砂の搬出口である海中の東京港中部作業タワーを爆破するために仕掛けられているに違いない.…ただしこの爆弾,地下の2人にとってはさっきの置き土産と同じく幸運そのものとなります.
土砂搬出用のコンテナを運ぶケーブルを伝ってひたすらに上へと逃げる野明たち.目の前には垂直に近い壁,後には一度は凍らせたはずなのにやっぱり生きてた化け物.地味でも主役の野明は,香貫花機をワイヤーで牽引しながら壁登り.今回は香貫花が役立たずな分野明が驚くほど有能.もちろん書き手が本気で描きたがっているのは翻弄されまくる香貫花の方なので,…歪んだ愛情だなぁ(笑).
化け物に追われて海上へと逃げる野明は途中で2つ目の爆弾「海彦」を発見.既に解除する時間はないのでそのまま持って上がるしかない.…地の底から2機がようやく脱出した頃には既に夕暮れ.独特の乳白色の夕焼けの中,洋上に立つタワーの上が最終決戦の舞台となります.命令無視を咎めながらも礼を言う香貫花と,それに「やだなぁ,仲間じゃない」と応える野明.運命共同体である2人が挑むのは巨大な竜! 野明は竜を残った弾と電磁警棒で牽制.海上で対峙するレイバー2機と巨大怪獣のシルエットが実に美しい!
未だ手持ちの時限爆弾が爆発するまであと30秒.1号機は爆弾を怪獣に食わせるものの手が抜けない! それを2号機の銃撃が救い,さらに2号機を放棄した香貫花が背景の巨大クレーンへと走る! ここが香貫花の最高の見せ場.クレーンを起動させ回し,怪獣を間一髪で水中に叩き落して大爆発! …1分にも満たない最後の決戦は,あの香貫花すらぼうっとさせるほどに濃密で,現実離れしていて….

後日,結局香貫花は報告書に竜の件については書きませんでした.死体は上がらなかったし誰も信じてくれないだろうから,記録には残さず心に納めることにしたようです.…死体が上がってないってのはかなり嫌だ.閉鎖された鍾乳洞ではなく,東京湾であれが生き延びていたら本当に洒落にならないぞ(苦笑).
あの怪物は首竜類が汚染された環境に適応したものじゃないかと語る現実主義者の香貫花と,怪獣でいいじゃないと実にあっさりな夢想家の野明.「あなたはねえそうやって夢ばっかり追ってるからダメなの!」と香貫花は言うけれど,恐竜が現代に生き延びているとか言い出す時点で相当夢を追ってるし,鍾乳洞では絶対に野明の方が有能だったしなぁ…(笑).竜の正体について不毛な口喧嘩を続ける2人の現実離れ具合はいい勝負.怪獣だろうが恐竜だろうが竜神様だろうが,立ちはだかるものは倒してしまうに違いない第2小隊が一番のファンタジーだと思いつつ,次回に続きます.

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