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機動警察パトレイバー#17

「有能すぎる昼行灯の巻」

剃刀満載の手紙が届いたり,昼食に唐辛子を仕込まれたり,最近後藤隊長の周囲には謎の悪意の陰が見え隠れしている.それを知らない第2小隊の隊員たちは,微妙にぴりぴりしている後藤の本性を探ることに熱中.けれど後藤は隊員たちの調査をのらりくらりとかわしてしまい,結局本性はわからない.
その間にも後藤への嫌がらせは続き,ついには出動中のレイバーキャリアのジャッキの油まで抜かれてしまった.一連の事件の中心にいるのが後藤なのは間違いないが,当の本人は動かないまま,じっと剃刀入りの手紙を眺めている.

当時も今も画期的なキャラクターを何人も擁する「パトレイバー」.中でも,レイバー好き以外はあまりにもナチュラルな主役の野明と,まだ登場してないけれど途方もなく軽くて悪い内海,そして今回の主役である昼行灯で剃刀の後藤の3人はずば抜けてます.後藤の人を食った行動のなかにかいま見える有能さは大人なら誰でも憧れる部類のものであり,本作が好きな奴で後藤が嫌いな奴っていないんじゃないかな(笑)? 
今回はそんな後藤のとらえどころのない魅力を,伊藤氏・横手氏が連名脚本で描きます.西村氏の作画も特に美しくて,後藤ファンなら必見でしょう.ちゃらんぽらんに漂う彼の生きざまは理想の大人像の1つですが…相当な実力が伴わないとただの無能になってしまうので,普通の人には絶対にお勧めできない(笑).

前半.昼行灯をわざわざ狙う物好きな魔手は,後藤宛の可愛らしい封筒からはじまります.職場に届くには不似合いなチューリップの手紙をしばしつついて,彼らしくもなく丁寧にハサミで開いたならば,その縁にはカミソリがびっしり.しかも同封のメモ紙には一言「死ね」.…姪からこんなお手紙がついちゃったら本気で落ち込むよな(苦笑).
しかも魔手は熱烈な手紙に留まらない.上海亭から届けられた昼食の山のうち,後藤隊長の天津丼にだけ唐辛子が仕込まれておりました! しかも卵の下に「バカ」と仕込んであって芸が細かいなぁ….もちろんそんな辛いモンは食えないので昼食抜きとなり空腹.その上靴の中には猫のうんこが仕込まれていて(苦笑)細かいことを気にする課長の前にサンダル履きで出ざるを得なくて,隊長からしてこんなんじゃ,第2小隊の勤務評定は一体どうなってしまうのやら.
まあ評価はどうせ悪いんだから横に置いておくとして,気がかりなのは魔手がやたらと近いこと.隊長室の靴にうんこ仕込むだなんて,相当近くまで来ていることは間違いない.しかも脛に傷持つ後藤自身は怨恨の心当たりが悲しいくらい大量にあって(笑)絞りきれもしないから夕暮れの屋上で煙草を吸って黄昏てみる.…これ,わざと隙をつくって誘い出そうとしてるんですね.しかし餌に引っ掛かったのは犯人ではなく香貫花だったことから,第2小隊はいつもの迷走をはじめます.
ミーティングに呼びにきたところでえらい俊敏な後藤の行動を見てしまった香貫花.振り返りざま煙草の火を顔面に向けるダーティな攻撃は素人が即座にできるようなものではなく,武道の嗜みは人並み以上にあると自負するからこそ,すっかり後藤の実力を買いかぶってしまいます.そりゃ過大評価か勘違いだと周囲に言われても,自身を信じる香貫花はその意見を曲げたりはしない.…実際,後藤はごまかしているけれど,奇襲・武器ありなら特車二課の誰よりも強そうだ.
後藤隊長の過去については何も知らない隊員たち.ただし今隊長がなんだかおかしいことくらいは知っている.最近居眠りを見ないし,出前の天津丼も残してたし…いつもと違う行動の裏にはきっと何か理由があるに違いないってなわけで,「後藤貴一,食欲不振の謎を探る.その秘められた過去とは何か!」とか勝手にタイトルつけちゃう野明.女性週刊誌っぽくて面白いと実に不真面目なんですが,彼らは不真面目なことには大変真面目.「やりましょう」と香貫花や太田まで巻き込んで意見が一致(笑).
かくしてはじまる後藤の身辺調査.先頭の太田の提案は,社屋20周マラソンで後藤の体力やら気力やらを見極めるというものなので,ゴール番なんかやられては困ります(笑).確かに運動能力の確認には悪くない選択肢だし,親睦を深めるためと必死で粘って後藤をスタート地点に連れて来たあたりまではよかったんだけど,なんせ相手は後藤隊長なわけなので….
早速第2小隊総出ではじまった20周マラソン.いきなり後藤が突っ走り,建物の陰に隠れたところで格納庫の車の中に隠れてしまってもう終わり.「若い者につきあってたらね,体が持ちませんよ」とずるいおっさんはサボってしまい,それに気づかない隊員たちは真面目に20周してバテバテ.隊員同士はこの間の飲み会などもあってかなりなじんできているようですが,まだまだ後藤の狡さに対する認識が甘いんだよな.
隊長は逃げ道を作ったら絶対逃げる.ならば…「逃げられないようにすればいいのよ!」と香貫花が企画するのは,逃げようのない1対1の剣道.確かにこの手の対戦は逃げようもないんだけれど,相手はそもそもやる気がない.緊迫感溢れる立ち会わせの末に…後藤,一切避けることなく一本を取られる(笑)! 別に勝たなくてもいい彼らしい適当かつ豪快な行動によって,見事に逃げられてしまうのでありました.
ここまでで後藤本人にアタックをかけてもなんともならんと察した一同は,今度はひろみちゃんにお茶を押しつけ,南雲隊長から後藤情報を引き出そうとするも,彼女も後藤の芳しくない情報しか知らない.あまりにもネガティブ情報が激しくて,それ以外のポジティブな情報が見えなくなるのはよくあること.…手を変え品を変え頑張った隊員たちですが,これまででわかったことときたら,あの人やっぱしズルイとすげえ評判悪いの2つだけで,しかもそれはもうよくわかってるんだよなぁ(苦笑).
とまあ第2小隊の捜査活動が見事暗礁に乗り上げている頃,後藤に迫る魔手はその激しさを増してきておりました.ミニパトに高速の上から鉢植えが落とされ,ガセ情報で出動させられた上に2号機キャリアの油圧ジャックの油が人為的に抜かれる.単純ないたずらから下手すれば人命に関わりそうな深刻な妨害にエスカレートしつつある嫌がらせの影には…冒頭に出てきた,眼鏡の青年の姿が.
榊からも新情報を仕入れることはできず,結局聞き込みでは後藤の正体はわからないと悟った第2小隊隊員一同.しかし一連の事件は間違いなく後藤を中心に起こっていて,何らかの関連がないと説明がつかない…ってな感じで真面目に探偵ごっこに興じる第2小隊は,南雲からすれば勤務評定が近いのに無駄なことばっかりやっている.しかし後藤が考えるところ,今更頑張っても所詮泥縄.さらに…「それに能率が落ちたのは,あいつらのせいじゃないもの」.とぼけた顔でもしっかり部下の仕事を見ていた彼は,同じ目で冒頭の封筒をじっと眺めています.

後半.直接仕掛けてもはぐらかされる,周囲に聞いても情報なし.となればあとはひたすら後藤の行動を観察するしかないというわけで,野明と香貫花が非番の日の後藤を追跡することになりました(笑).下町情緒と通行人溢れる入谷の商店街をふらふらしている後藤を追いかける2人…の後ろを追いかけているもう1人.野明の尾行っぷりは実に稚拙なんですが,その後ろからついてくる追跡者はもっと無様.あれじゃ見つけてくれと言っているようなもので….
割にノリの軽い野明と相当気負っている香貫花.追いかけるのが既に面倒になってみたり「読唇術はできないの?」とか尋ねてみたりしている野明と,どこまでも真面目に追いかける香貫花は対照的.…当時の若者の雰囲気を体現しているのは野明の方だな.ただし隊長がただのおっさんであるという見解だけはしっかり一致していたら,気付かれちゃった(笑).当然のように尾行に気づいていた後藤は必死でごまかそうとする2人に向かって「ぜんざいでも喰いに行くか!」と誘っちゃってもう大失敗!
しかし2人は実はまだマシ.特に香貫花はすっかりバレてバカみたいだと落胆しているわけですが,もっと間抜けな尾行者がいると後藤が後を示します.ぜんざい食いに入った店の入り口ですごくわかりやすく覗いてるのは…これまでの嫌がらせの犯人である例の青年.これまでいろいろと酷い目に遭わされてきた後藤ですが,その犯人を見つけても実に落ち着いたもので,「切り札に使えるかもしれんから」を青年を野放しにしてしまいます.もちろんここで無理に捕まえないのは,慈悲なんかではありません.
手を尽くしても結局後藤の正体はわからず,逆にこっちが調査していることがばれてしまっては万事休す.…でも太田に無能呼ばわりされるのはすごく腹が立つなぁ(苦笑).しかし遊馬はまだ諦めない.尾行していたあの男こそが唯一残された真実への鍵.ぜひとも捕まえて全部吐かせたいところだけれど,今更どうやって探せばいいのやら.…でも太田には責められたくない(笑).普段から散々足を引っ張ってくれて,今回だって最初に失敗したような奴には発言権なんかないぞ!
八方塞がりの一同は本庁お偉いさん対策としての職場の掃除まで命じられ,しかしそれを実行する前に事件が発生して出動.現場ではレイバー2機が鉄パイプ使ってちゃんばら中.…こんだけ忙しいと後藤の正体なんかどうでもよくなってくるわけですが,さっき探したかったあの青年が,ちゃんとここにも姿を見せていたのです.
レイバーを使った危ない喧嘩.第2小隊はこれを一気に沈めにかかるわけですが,人ごみの中に見つけた例の男が困った介入をしてきやがります.崩れそうになりながらも一旦ちゃんと持ちこたえた1号機.しかし足元にいきなりベビーカーを走らされたらそりゃ動揺するってもんで…結局転倒,民家を壊す! いつもなら太田がやりそうな不祥事ですが,これを起こさせることこそ青年の狙い.彼は父親のためにそんなことをやらかしたわけです.
かくして第二小隊に対するなけなしの評価はしっかり地に落ち,部長および課長から怒られまくる後藤隊長.主に太田のために普段から評価が悪かった上に,これほどの不祥事を起こしてしまったらもはや限界でジ・エンド.小隊長の進退問題どころではなく,警備部長が組織に引導を渡し潰そうとしたその時!後藤はここまで温存してきた,とびきりの切り札を切りました.
慙愧の念に耐えない後藤が示すのは,冒頭で送られてきた例の手紙.悪意満載のその手紙を書いたのが祖父江元二課長であることは,筆跡鑑定で確定済み.さらにこれまで姿を見せていた犯人の青年が元課長の子息であることも確認済みで…これはまさに警備部の恥.しかもその証拠を後藤ががっちり握り締めているもんだから,上司たちにはたまらない!
免職…じゃなくて辞職したという祖父江元二課長.警察内でそれなりの地位を得たはずなのに民間の整備工場の社長に収まらざるを得なかったということは,余程壮絶なことの責任を取らされたに違いなく,で,それをやらかしたのはもちろん後藤なんだよな(苦笑).
結局第二小隊は今回の査定では減俸降格なし.ただしこれまでの一連の不祥事については他言無用というわけで,処遇を代償に口封じされます.今回のトラブルだけでなく主に太田のために毎回蓄積されてきたマイナス評価を,切り札を盾にゼロにしちゃった後藤の狡さはさすがとしか言いようがない.下手に捕まえてしまうと内々でもみ消すのが難しくなるから放し飼いにしたあたりも含め,素晴らしい!
もちろんこの素晴らしい仕事に当然犯人は怒ります.潰してやろうと思ったらそれを逆手に取られてしまったわけで…「またしても俺に責任を取らせる気か!」と叫ぶ真犯人の祖父江前課長.ああ,やっぱし後藤に利用されていたのかぁ…(苦笑)….彼はついに耐え切れず息子とともに特車2課に殴りこみをかけるわけですが,まあそう来るだろうと後藤隊長は余裕の笑み.元上司とは役者が何枚も違うのです.
トラックから立ち上がる,ハンドメイドでかっこいいけどまともに動かないレイバー! ただ立ち上がるだけで崩壊していくそれに乗り込んでいるのはもちろん前課長.「出たな怨霊!」と前に出た後藤に銃を突きつけ,積年の恨みをここで晴らそうとするわけですが…狙われた後藤は不敵な笑みを浮かべたままで動かない.だって素人の手作りがまともに動くわけないし.そもそも歩くだけの骨格の強さすらないだろうし(笑).
復讐のために誕生したレイバーは結局ひたすら壊れていって,かっこいいフォルムは見る間に寸詰まりとなり最後にはちっちゃくなってこける(苦笑).このシーン,最初のまともな迫力からどんどん壊れてコミカルになっていく過程の描きっぷりが素晴らしい.音もまたいい仕事してんなぁ.「またしても,お前が,お前が,お前が,お前が…」と涙声の祖父江.彼にここまでさせた後藤の過去は…なんか知らないほうがいい気がしてきた.現二課長もいつこうなるかわかんないんだなぁ….

どんな証拠も見逃さず,しっかりと裏付けて犯人を特定.手に入れたカードは決して無駄遣いせず,ここぞというところで的確に使う.第2小隊で最も有能なのが後藤であることは間違いないっていうか,現状だと後藤ひとりの才覚でこの組織は維持されていると言い切っても間違いじゃない.手作りレイバーの前に立ち塞がることだって,榊の助言を絶対に正しいと信頼できなければできないわけだから,「…ずっけー」とか言って扉の外で全員で渋面しちゃダメだ(笑).本当に有能な後藤に近づくには隊員たちはまだまだ修行が足りないのだなと思いつつ,次回に続きます.

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