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桜蘭高校ホスト部#24

「悪い笑顔があなたの真実の巻」

ホスト部が現在の隆盛を極める2年前.中等部の鳳鏡夜は枠の中から世界を打算で眺め,姉以外には内心を吐露することもなく,三男という分を守って退屈な日々を過ごしていた.そんな硬直した日々に飛び込んできたのが須王環.須王財閥の後継者と目される彼に打算から近づく鏡夜だが,ハーフの御曹司の考えることは滅茶苦茶.その突拍子のなさは鏡夜の全能力を発揮しても追いつけないほどに,ひどかった.

基本は1話,ときどき2話完結で終盤まで走ってきた「ホスト部」.いいところで切って次回に視聴者を引っ張り,クライマックスでは数話かけて盛り上げまくることが可能な連続モノと違い,各話完結のスタイルは基本的にヒキが弱いし,クライマックスの持続も難しい.しかしそこらの問題を補えるくらいに内容が洗練されていれば,途中の1話を見せただけでもいきなり視聴者をファンにできる,そんな強力な作品へと化けます.例えば終盤のこの1話でも,初めて見た奴を強く魅了する可能性は十二分にあり.各話の完成度の高さこそが,本作の最大の武器なわけです.
てなわけで今回はデパート以来の鏡夜の当番回.絵コンテ・演出を京田氏が担当し,端正で暗喩に満ちた素晴らしい物語が展開します.午後3時に向けて進んで行く時計,収まり切らなくなっていく部屋など,それを匂わせる仕組みは満載なんですが一番はやはりあの絵! 文字どおり少年が父の枠を越えて行く,美しい叙情詩です.

前半.いつもの放課後の午後3時,ホスト部の本日のおもてなしはちょっと早いコタツサービス.上流階級の皆様には見慣れない家具なのが微妙に腹が立ちますが(笑)密着度はいつもよりも高くなるから大好評…だろうなぁ.ちなみにこの企画もやっぱり環の提案で,改めてハルヒが不思議に思うのは,この部での鏡夜の存在.なんでアホにつきあってホスト部なんかを立ち上げたのか? クールでまともな彼がここまで忠実に付き従うのは…「突拍子もないからさ」.
鏡夜と環が出会ったのは2年前.その頃の鏡夜は鳳家の三男という立場に縛られて,相当鬱屈しておりました.麗しい午後3時にはまだ速い午前8時半.言葉も,好意も,誘いも,鏡夜の世界では打算の塊に過ぎない.精神年齢相当高めの彼は,腹黒くしかし冷静に.誰にも底を見せないままに,うまく立ち回っているつもりでした.
鏡夜が赤裸々に内心を吐露できるのは,きっと姉の芙裕美さんの前だけでしょう.しかもギブアンドテイクなのだと露悪趣味に自分の不純さ根性の悪さを冷めた口調で自嘲するというヒネっぷり.天然らしい姉は純粋に星を眺めたいのかもしれないとか言ってますが,悲しいことに,賢すぎる鏡夜はそれが幻想に過ぎないことをよく知っている.…ちなみに引っ掻き回されるクローゼットは,そのまま鏡夜の抑圧した欲望.押し込めてはいるけれど,ちょっとしたきっかけでどんどん溢れてきてしまう.
厳格な父から与えられる,名家の三男らしい厳しいプレッシャー.姉から見れば折角の末っ子の癖に鏡夜はあまりに気負い過ぎで,「少しくらい気を抜いたっていいのよ」と言ってみたくもなるわけですが,それはヒネた末っ子にとっては厭味以外の何物でもない.自分が鳳を継ぐことはありえない.三男はややうつむいて己の報われぬ立場を語り…愚痴るだなんて,2年後の鏡夜からは考えられないなぁ(苦笑).
第1候補の長男と,そのスペアであり競争者の次男.後継者レースは上の2人の間で競われて,三男には入り込む余地などない.…どれだけ頑張っても報われる可能性はなさそうなのに,鏡夜は期待に応えようと努力してしまう.「かけられた期待には必ず答え,しかし必ず兄を立てる」…前には出過ぎず,自身の能力と欲望を押し込める努力.既に準備された額縁に合うように,美しく.端正に.はみ出さないように….
しかも才能溢れる鏡夜は,抑えることも上手にこなしてしまう.「でもそれで,楽しいの?」…もちろん楽しいわけがないけれど,「楽しいとか楽しくないなんて,関係ないですよ」.もっと才能が無ければ,もっと鈍ければ,もっと自制心が弱ければ,こんなつまらない状況にはならなかったはずなのに.
そんな退屈な日々を乱す原因となったのが,須王の後継者の編入.政略的に敵の子息と仲良くすることを貪欲で厳しい父に指示された三男.抜群の情報収集能力と優れた分析力・洞察力で本音を見透かし,姉以外にはたとえ肉親でも本音を見せない.誰であろうと自分の優位は揺らがないと自信もあったわけですが…本当に相手が悪かった(苦笑).会長の妾の子で後継者候補として引き取られた須王環.生まれつき後継者レースからは外されていると感じている鏡夜には,手に入れるべき立場で無いのに運良く手にしている彼が,うらやましくてたまらない.出会う前から印象は最悪!
そして9時.顔をあわせた須王環は,きらびやかな外見でいい笑顔.髪を心にたとえて褒めることで早速副委員長を魅了しておりますが実は…というのは,ここでは語られないまた別の話(笑).歯の浮く台詞を気負いもなく発する超自然体の環と,もはや爆発寸前のものを抱える鏡夜の握手.この学校を代表する強力なタッグの歴史は,ここからはじまったのです.
いきなり「君の家にこたつはあるか?」と聞きはじめる,やたらとコタツに魅了されてるライバル財閥の御曹司.家に洋間しかないから入れないとやたら熱心に語ります.鏡夜は日本文化憧れ系かと看破したまではよかったんですが…まさかうちにもないと答えたら,あんなバカでかいリアクションが戻ってくるとまでは予測してなかった(笑).恐らく出会って十数分で,いきなり奴は鏡夜の予測した世界から外れたのです.
こたつがないことになぜかしおしおの環.しかも無神経なことを言ったと「ゴメンよ鳳君」といきなり謝り出しました.こたつは家族団欒の象徴だからという理由で「君の家は,家族仲がうまくいっていないんだな!」…そっちの方がよっぽど無神経の上に,しかも当たっているから腹が立つ(笑).環の変なところでリアルなこたつ知識,一体どこで仕入れたんだろ.ちなみにこたつ=家族の信頼関係を構築する装置なので,ラストはああなるわけですね.
「…でもそっか,君ん家にはないのか」と憐憫の目でこちらを見る喜怒哀楽の激しい御曹司.鏡夜がいらつく心を抑えて用意しようかと言ったなら,手に持ったものを放棄して抱きついて大喜びするなんてなんだろうこいつ(笑)「君は親友だ! 大親友だ!」となつき倒して,勝手にファーストネームで呼ぶことも決定!「ブラーボー,キョーヤー,モナーミー!」と大喜び!
日本かぶれのテンション高いバカ.それが鏡夜の環に対する第一印象.そのあまりの壮絶ぶりを自宅で姉に話してみます.モナミモナミと連呼して親友の意味すら理解してなさそうなアホに主導権を奪われ,タンスのように閉じ込めたはずの感情をひっかきまわされて押さえ切れない.上手に詰め込みすぎで一度出したらもう収まらないから,「だから,出さないでください」
たった1日経過しただけだってのに,時はさらに進んで11時.午後3時まではあと4時間.環が真剣に申し出るお願いは京都旅行.日本かぶれらしく外国人観光スポットとして絶大なる人気を誇る京都に行きたい気持ちはわかる! わかる,けど…京都には奈良の大仏も五稜郭もシーサーもナマハゲもねえよ.つうか,少なくとも「奈良」の大仏な時点で気がつけよ(苦笑).
子どものように目を輝かせて間違った要求をしてくる環に対し,鏡夜はやんわりとダメを出し.それに衝撃を受けた環はまたもしおしおで体育座り.…この頃から癖だったのか.思った以上のバカに今週末の休みから順に各地を回ろうと提案したなら,またも抱きつかれなつかれる.昨日のモナミは神様やら大仏様へと一足飛びにランクアップ.神様の安さに,鏡夜は嘆じるしかないのです.

後半.モナミ改め神様となった鏡夜と,筋金入りのアホである環.2人のクラスメイトとしての日々はそのまま混乱と困惑の日々.他人の行動を読むことにかけてはかなりの自信があった鏡夜であっても,アホの考えることにはついていけない.いつの間にやらクラスにも彼以上になじんでしまう人当たりの良さ,ナマハゲとシーサーを間違えるやっぱりのアホさ.その他様々な環の特質が鏡夜の日常を変えていきます…乱れる感情のように散らかっている部屋の中,テーブルの上には観光ガイド雑誌がてんこ盛り.アホの相手に鏡夜自らツアーガイドの支度に余念なし.なんせ環は本当に筋金入りで,鏡夜が本気でかかってもなお予測を越える,本当に困った奴なのです(笑).
春なのに大文字の送り火が見たい,沖縄ソバと信州ソバの食べ比べしたい,シーサーとナマハゲの夢の競演が見たい.環の要求はいつだって予測の外にあり,しかもそれが難しいとわかったら体育座りで,「…すまない.君の能力を…過大評価しすぎていた」と喧嘩を売りやがる(笑).感情を押さえ切れない鏡夜は負けん気剥き出しで完璧な準備を整えるものの!…勇んで北海道に誘ったら,試験勉強を理由に断りやがったよあのバカ!
「試験が終わったら遊んでやるから」と言われ,鏡夜はぐちゃぐちゃの部屋で大暴れ! 「あの野郎!」とらしくもない叫びを上げる鏡夜は,本当に余裕のある現在の彼に比べるとまだまだガキなんですね(笑).ツッコミ属性を持つ者にとって,ボケにバカにされることほど辛いことはないわけで,約束を忘れてしれっとしている大馬鹿野郎に腹を立てる.…嫌々つきあっているんなら,行くのが中止はうれしいことのはずなんだけどなぁ(苦笑).
「これほどまでに誰かを殴りたいと思ったことはあるか? 否,断じて否だ!」…もちろん立派すぎる自制心を持つ鏡夜が環を殴ることなんかありえない.三男としての立場を考えてしまうと,まだまだ部屋の外では自由にふるまう覚悟はない.あれでも須王の後継者と暴れる心を必死でなだめ,父から試されているのは俺の対応能力なのだと自分自身に言い訳し,それでも「誰がコタツなど用意してやるものか!」と,約束を破ったバカへの怒りは収まらない.
普段はあまりに大人びて子どもらしくなくて,姉的にはそんな鏡夜の窮屈さが気になっていたところ.もちろん嫌な相手なら無理につきあう必要はないわけですが…「こんなに楽しそうな鏡夜さん,はじめて見たわ!」と微笑ましく放置.…当の鏡夜はんーんー言いながら長椅子にパンチを繰り出しているので,これを「たのしそう」と形容するあたりがさすがは姉.現在のところ彼の本心を正確に把握しているのは彼女くらいでしょう.
アホに翻弄される日々の中,久々にやってきた静かな日曜日.穏やかに終わるはずのその日,鏡夜はとうとう限界を壊すことになります.唐突に自宅にやってきた「お友達」.聞いて呆然とするくらいに鏡夜には心当たりがなかったものの,バカは伊達にモナミを連呼していたわけではありません.
先に通され,ピアノを弾いていた環と,それを聞いている兄たち.あのバカとは思えないほど美しい少年が奏でる,涙が出るほど美しい音色.思うまま,計算抜きで彼が誰かのために奏でる音色は,兄たちだけでなく,鏡夜の涙腺までも直撃します.…なぜその音色に至ったのか,人を深く見抜く目が鋭く反応してしまったんだろうか.
てなわけで唐突にやってきた招かれざる客は,鏡夜の本性に限りなく近い彼の部屋の中へ.試験勉強など無視し,この家の広さをフランスの家と比べてみたり…もちろん彼には鏡夜に嫌味を言ったりする頭も意図もない.確かに須王邸の方が大きいけれど,環は本邸に入ったことがなく第二邸暮らし.運のいいアホの御曹司のはずが,彼は幸福の中にいるわけではなかったのです.
そのあたりは横に置き,鳳家は鏡夜が継ぐのか?とデリカシーなく踏み込む環.それは鏡夜にとっては逆鱗に等しい話題なんですが,それでもぐっと踏みとどまって,継ぐはずないだろと返してみたら…「あれ,それは意外!」と本当に不思議そう.「君はもっと,貪欲な人間かと思ってた! だって,現状に全然満足してないって目だろ? それ」…どう頑張っても見透かせない男は,自分の内側をまじまじと覗き込んでいたのです.
意外と諦めいいんだなと不思議がるバカを前にして,ついに押し込めてきたものが噴き上りはじめます.自分の未来は諦めるより前から決まっている.当たり前のように家を継ぐ人間にはわからないのかなと憎憎しげに嫌味を言ったら,「俺は須王を継ぐとは決まってないぞ?」とまたも環は不思議そう.妾の子ゆえに祖母に嫌われ,今のままでは全然跡継ぎじゃないと,彼は自身の苦しい立場をあっさりと吐露するのです.
実は鏡夜といい勝負であった環.しかし良く似た彼の現状に対するスタンスが,鏡夜の頑なな我慢をついに壊します.父の仕事に興味がないわけじゃないけれど,美貌や優秀な頭脳を生かせば別の選択肢だってありえるはずだし,北の大地に動物王国を作る夢もあるし…と後継の道すらも1つの選択肢扱いする環.それは欲しくてたまらない選択肢すら選ばせてもらえない鏡夜にとっては贅沢で…鏡夜の表情がその内面と一致していきます.
「ふざけるな!」とテーブルをひっくり返す鏡夜.「なぜそんな簡単に諦めたようなことが言える!」と環の胸倉を掴んで怒る.いくらでも上にいけるチャンスがあるのになぜもっと努力をしない,なぜ恵まれた立場を利用しないのかと感情をぶつける.「お前は一体何なんだ!」…お前は馬鹿なのに,何故俺を見抜く!! 黒バックに書かれた乱暴な手書き文字こそ,決して他人に見せたくなかった本心!
本当に欲しいものが目の前にある.自分にはそれを掴む能力もある.だけど三男という額縁に縛られ,無力感ばかりが募ったがゆえのこの凶行.けれど環はまったく慌てることがなく,鏡のように言葉を返します.「何もしてないのに諦めてるのは,お前の方だ!」…同じように額の前に座らせられていた環.しかし彼は自分の絵を描くことよりも先に,横で絵を描いている自分とよく似た奴の手を引っ張って,額の外に筆を落とさせようとしていたのでした.
そして,さっきのシリアスを忘れたかのように,そろそろ用意してくれたんじゃないかとこたつを求める環.自分の鬱屈を解消する方法にようやく気づいた鏡夜は,爽やかな悪い顔で腹を抱えて大爆笑した上にバカの頭に拳を落とす(笑).三男への期待も打算も放り投げ,己が思っていたとおりに,筆をごつんと落とすのです.
コタツは冬,入りたければ冬まで待てと睥睨するその悪い笑顔に「ほんとはそういう顔なのか」と環.…美しいけれど華奢な三男の額縁.一度そこから溢れた色はもう止まらない.自負するほどの才能と強い欲望を広げられる場所は壁一面.抑圧の青ではなく情熱の赤と虹に輝く大輪の花を咲かせます.…しかも,絵を描くことすら自由.壁の前から離れたって構わないのです.

枠を壊して4ヶ月.冬になり,鏡夜の家で約束のコタツに入った環が思いついたのが「部を立ち上げよう!」.我々の美貌を生かしたその名もホスト部! 突拍子もないたわごとに鏡夜は環を足蹴にし,無邪気な環の計画は止まらない.2人と同じように暗黙の額の前に立たされている連中を連れてきて,6人で新しい絵を描いたなら,どんな絵に,どんな風景になるのだろう! …すっかりなじんできた悪い笑顔と,茶柱.
このような成り行きで鏡夜がアホと一緒に進ことになった高等部には,皆様既にご存知のとおり,様々なものが待っていたのでありました.もちろんその中心には環がいて毎度無茶を要求し,鏡夜がそれを実現するという関係にも変化なし.こんな有能な奴を初対面でモナミと見込んでしまった環はアホだけどやっぱり凄いや! …そして,その中心が揺らぐ次回に続きます.

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