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機動警察パトレイバー#27

「ちょっと欠けてるあたりが可愛いの巻」

解体寸前の廃墟で演習を行うことになった第2小隊.内装を外すのも取り壊しを促進するのも,警備部としては釈然としないけれど仕事は仕事だ.この廃墟には明らかに人ではない何かがいるらしく,その何かが第2小隊を翻弄.レイバーを襲う謎の不調くらいならかわいいもので,後藤隊長は亡霊に刀で斬りかかられる始末.けれどこの世紀末に,まさかそんな非科学的なことを隊長が率先して主張する訳にもいかないのだった.

有能な新隊員を加えて3クール目に突入し,この先は本作最長のシリーズが待っている「パトレイバー」.ただし有能すぎる新隊員は明らかに第2小隊のカラーではないので,今回は彼女の弱点と可愛気を晒すことで視聴者に新参者とより馴染んでもらうことになります.
当時のコアなファンにとってはコミック版からやってきた彼女は既におなじみの顔.しかしアニメしか見ていない普通の視聴者のためには,これから渦中の人となる熊耳さんをより掘り下げるこのエピソードは不可欠です.脚本伊藤和典,絵コンテ演出青木康直,作画西村誠芳と豪華な布陣も印象的なんだけど…ある意味一番豪華なのは,作業員Bという端役をあの子安氏が演じていることかもしれない(笑).

前半.はじまりを告げるカラスの声.廃墟に群れて鳴く様は尋常ではなく,人知で計れぬ何者かがここにいることを告げております.で,そんな怪奇スポットに到着したのが我らが第2小隊.ハイテクの塊であるレイバーを扱うエキスパートたちですが,意外とハイテクと超常現象には親和性があるものです.
嫌な感じのする本格的なでかい廃墟が今回の仕事場.今にも崩れそうなぼろぼろの建物の中でレイバーを動かし,どんな影響が出るのかを検証するのが主目的.そして暴れて取り壊しが促進されるならそれもまた良し.…実際は解体工事の手伝いみたいなもんなので,警察の仕事じゃないと遊馬は考えているようですが,特殊な市街戦や災害のシミュレーションと言われれば,釈然とはしないけれどなかなか文句も言いにくい.
演習,というか解体を行うためにまずレイバーで不要なものの撤去をはじめる一同.レイバーで広いホールに入って,その手で壁にかかった絵を外します.値打ちのあるものが残されてるわけもないということでどんどん乱暴に絵を外していく太田に,自分の好きな絵を乱暴にされて野明が悲鳴を上げる程度で,まだまだ現場は至って平穏.でも天井から瓦礫がぼろぼろ落ちてきているので,レイバー搭乗員はともかく,指揮担当者などはちゃんとヘルメットを被るべきだと思います(苦笑).
片付けを続けていくうちに,陰気臭い建物に訪れる夜.今晩は2号機が夜間作業に当たって1号機は早上がり.休憩中の遊馬が野明を映画に誘っているのが次回に繋がり,将来の仇敵と出会うことになるので次回以降をお楽しみに.何はともあれ休日デートなどを計画する「若者はいいなぁ」とぼやく後藤.…その背後でふいに開く扉.けれど,誰もいない.
大急ぎで仕事を終わらせ,2号機よりも先に上がる工事の人たち.…ヘルメットに「春」マークってことは高校生か(笑).今晩は泊まって夜間作業をする第2小隊に,「お巡りさんは勇気があるなぁ」と気になることを言い残しながら逃げるように帰っていく彼ら.満月が真上に灯る深夜には,彼らの恐れるものが最大の力を発揮するのです.
ないはずの気配は確かな存在感となり,2号機で作業中の太田を戸惑わせます.人の死角にいる何か.しかし「誰だ!」と振り返っても誰もいない….レイバーを後から引っ張るような不審な気配を確かに感じて,物理法則をまるで無視したものだとしても,「しかし,確かに…」と緊迫感溢れる状況に「ただいま…」とお弁当持って帰ってきた進士は間が悪い(笑).そりゃビビって「ひれかつ!」と絶叫もするさ(苦笑).
しかし,ちょっと引っ張られるくらいなら可愛いもの.廃墟の1室にポータブルパソコンを持ち込み,一人で仕事している後藤.灰皿替わりの空き缶が触れてもいないのに落ちて転がるのからはじまって…パソコンの画面には「たすけて」の文字が連続.電源をオフにしてもその文字列は消えることなく,この異常事態に後藤は「勘弁してよ」とこぼします(笑).
深夜残業を乱す超常現象はたった一人をさらに追い詰める.扉の向こうでは不審な物音.みしみし,みしみしと続いて開いた扉の向こう.…暗い通路の前には青白い兵士がひとり.思いっきり目の前に出られて「…どちら様?」と怯えつつ聞いたなら,真剣抜いて斬りかかってきた!
何の恨みがそこにあるのか,謎の兵士の握る軍刀から必死で逃げることになってしまった可愛そうな後藤! そりゃ当たれば無事じゃすまない得物から必死で逃げて,ようやく掴んだのが転がっていた鉄パイプ.命懸けの防戦は実体のない沢山の観客に見守られていて…ここで2号機チームが現場から引き上げてきてくれて本当によかった(笑).
やってきた進士の手には夜食の入った袋,そして必死で戦っていた後藤の手には鉄パイプ.「何やってんです?」と聞かれるのは仕方のないところ.なんせ「…見てわからんか?」と言ったって,目の前にはもう誰もいやしない.「…ああそうね.見ただけじゃわからんか.つまり!このところ運動不足だったこともあってね,食前に少し運動しておこうかなと思ったわけだ!」
つまり!から先を務めて明るく言う後藤隊長.証拠もないし幻覚かもしれないしこんな話で隊員たちを不安にさせても仕方がないし…という諦めの配慮なのですが,実は鉄パイプには刀の当たった後がしっかり残ってる(笑).他の連中には言えないけれど大変に怖くなった後藤は,仮眠の時は太田に「ここにいなさい,2,3時間で起きるから」と厳命.人間相手なら怖い物なしっぽい隊長ですが,さすがにあれには負けるようです.

後半.翌日も同じ廃墟で仕事が続き,しかし「何か変だねぇ」と何かの気配に関して語る野明.浮浪者でも野良猫でもない気配の正体はわからないけれど,「何だろうねえ」と3人目が口に出すことで事態は変わっていきます.同じ気配を野明だけでなく太田も感じていたことがわかって,どうやらまったくありえない…わけではないという道筋ができていくのです.
この廃墟はそれなりの曰くつき.「この間の地震」で土地が液状化し随分と人死にが出たなんてエピソードが気配の存在をさらに濃いものにしていきます,…あの悲惨な東京湾中部大地震はたった4年のこと.彼らは一度相当ぶっ壊れ,そして復興した東京の上に暮らしているのです.何かあり気なここに来てから,いろいろとやっぱりおかしい.レイバーの調子も後藤の様子もおかしいし(笑),空模様まで急激に崩れ,廃墟が呼んだかのような雨が降りだすし….
買い出しに出掛けるたびに近所から情報を仕入れていた進士によれば,この建物で幽霊が出るのは有名な話! 近所の交番勤務の警官も夜間の警邏中に,足のない侍たちを見てるってんだから面白い.こういうのがいかにも好きそうな遊馬が「古典的だなぁ」なんて言ってる横で,さすが隊長は言うことが違う.「そりゃあ,俺が見たのと違うなぁ」なんて言い出すもんだから「えええ!」と遊馬は大喜びで進士も興味深々.ひろみはすっかり怖がって…そして彼女は,非科学的な話題をばっさり切り捨てる.
結構面白い話題なのに,空気を読まずになぜか怒り出した熊耳さん.わざわざ話を合わせる必要もないでしょう!と隊長まで叱りつけるほど激烈に反応するものの,なんせ斬りかかられた後藤にとっては進士の情報はぜひ欲しいので,熊耳の反対も押し切って話を続けてもらうことに.
この間の地震以前から,酷い目に遭い続けてきたというこの建物.第2次大戦中には爆弾直撃,関東大震災で半分を焼失,さらに焼失し現在は中庭になっているところには,火浦藩の江戸屋敷があってそこでも惨劇が.もちろん続編がいつまで待っても出ないというモダンホラーではなく(笑)宝暦の頃に藩主の宮脇が乱心し家臣を切り捨てたという.…霊障を起こしても不思議ないほどの強烈な由来によって,ここにいるらしい何かの姿は濃くなっていくのです.
話が怖くてひたすら怯えてるひろみちゃんと「いいかげんにしてちょうだい!」と怒る熊耳さんは,好対照なように見えて実はこれ以上聞きたくないってのが共通.すっかり怪談話モードの太田も「聞く耳持たないわ!」と頭から拒否! …確かに怪談の現場で百物語するのはどうかとは思うんですが(苦笑)ここまで盛り上がっているなら無理に話の腰を折らなくたっていいのに….
どんなにそれが非科学的でバカらしいものであったとしても,状況証拠はそれが現実であると告げる夜.今晩は廃墟を使って模擬戦を行うわけですが,やっぱりレイバーの調子がおかしい….2号機が弾切れしたところを1号機が狙い撃ちしようとしたら,モニターがいきなり死んでしまう.おかしいと思って1号機から降りかけた野明が見たのは,唐突に中庭にいる少年.青白い彼は何も言わずに静かに指を下に向け…しかもその少年,遊馬には見えないし,一瞬の後には野明にも見えない….
あまりに濃い「何か」を見てしまった隊員達は隊長に談判.いくら非科学的と言われてもあるもんは受け入れるしかないわけで,少年が指さしたあたりを掘ってみようと決める隊長が「うん.俺も見ちゃったのよ.やっぱり気になるわなぁ…」と正直に語ったら,熊耳さんの顔色が悪化.下手な演技で必死でごまかしても,「ああ,巡査部長の後ろ…」なんて言われてあっさり悲鳴を上げてパニくってしまう! …赤坂プリンスじゃないんだ(笑).
これまでの怒りは恐怖ゆえの虚勢.クールな現実主義者はやめてやめてと完璧に取り乱した末に「あたしこういう話まったくダメなんです!」と泣いちゃった.近寄り難い完璧超人にもやっぱりあった弱点を「…可愛い」と評する野明がおかしい.でもこれはやっぱし可愛いで正解だ(笑).現場を掘っている最中に2号機が落盤で落ちた先には沢山の骸骨.周囲を取り囲む亡霊の姿に気を失う熊耳は,相当可愛いと思うのです.

骸骨発見からしばし経った99年の5月2日,後藤は隊長室で自分たちの活躍が掲載された新聞を眺めております.「特車2課200年前の犯罪を暴く」という見出しで,先の骸骨が藩主の乱心の際に内々に埋められた十数名分の遺体であったことを紹介.どうやら全ての霊障の源はその十数名分だったらしく,それに巻き込まれて死んだ連中が大元を鎮めて欲しくて第2小隊に必死ですがった,というのが真実らしい.…すがって刀振り回すのも面倒だなぁ(苦笑).
生きている人間相手なら割と役に立たないのに,幽霊はちゃんと救ってしまった第2小隊をしのぶが呆れるのは当然の話.でも,本当に命の危機だったんだから,今回ばかりは後藤隊長をあんまり邪険に扱わないでほしいなしのぶさん(苦笑).結局更地に戻った現場で熊耳さんが花と酒と線香を手向けているのは,もう自分の前に出てこないでほしいと強く強く願うために違いない.…科学的なオチがなくてもそのまま受け入れてしまうほどに間口の広い本作ですが,その真骨頂はやはりレイバー絡みの社会派のドラマ.ついに大きな物語が蠢きはじめる,次回に続きます.

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