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機動警察パトレイバー#30

「あいまいな黒の前兆の巻」

小笠原で夜間訓練中の自衛隊のレイバー隊を,謎の黒い影が次々に沈めていく.夜の闇に乗じて訓練地に乱入し不破のヘルダイバーすら器用に沈めたその機体は,砂浜に「ぐりふぉん参上」と大きく書き残し去っていった.黒いグリフォンの背後にいるのはシャフト社の内海たち.完全に規格離れした機体そのものではなく,生み出した理論を売り出そうとしている内海は,最高のレイバーOSである篠原OSをイングラムから奪い取り商品にすることまで考えていた.
南洋上でそんな悪巧みをされているとも知らない特車二課内では,気になる噂が広がっていた.レイバーによる犯罪件数の急増に対応するために,小隊をさらに増やす動きがあるというのだ.そうなればきっと隊長は巡査部長の五味丘かあるいは熊耳か.このままではさらに差をつけられることになってしまうと太田は苦悩するのだった.

前回は横道に逸れたものの再び原作をなぞりはじめた「パトレイバー」.一般的には他の超メジャーなアニメに比べるとややマニアックな秀作として扱われていることの多い本作ですが,コンピュータ業界では間違いなくメジャーな作品の1つ.元々この業界にオタクが集まってるってこともあるんですが(笑)それ以上にこの作品は,日本でのPCの勃興期の雰囲気を色濃く反映しています.コンピュータと同様にレイバーもハードウェアとソフトウェア,そして人間によって構成されるものであり,このシリーズで描かれる国産の篠原と海外のシャフトという構図も,当時国内では最も普及していたNECとそれを凌駕する性能を持ちかつ高価であったAppleやIBMの関係をそのまま反映.…てなわけで,当時の事情を色濃く反映したこの作品をコンピュータマニアが特に気に入ったのは当然の話ではあるのです.

前半.冒頭はいきなり悪夢.壊れていくイングラムとそれを襲う黒い影.必死で太田を呼んでも既に2号機は壊された後…という夢に奇声を上げて野明が飛び起きたのは朝3時.冷や汗かくほどの凄い悪夢はきっと予知夢な上に,満月の下,自衛隊を相手に悪夢は現実と化していました.南方,小笠原で夜間訓練中の自衛隊のレイバーを次々に襲う黒い影.あっさり自衛隊の一個小隊がやられていくシーンなんですが…暗い中で発光が続くから,随分酷い修正を喰らっているなぁ(苦笑).相手はあまり強すぎ早すぎ手際が良すぎ,襲われた方は必死で助けを求めるしかないものの….
謎の通信妨害を受けている本部には,現場の惨状は伝わらない.しかしこれが大島の時と同じ現象なのだとしたら,恐らくはほとんどの小隊が壊滅しているはず….一応極秘訓練であったはずの小笠原をわざわざちゃんと狙ってきた敵の情報収集能力が恐ろしい.残っているのは不破率いるヘルダイバー部隊のみで,しかもあっさり彼女達も黒い影の餌食に.現行機としては相当優秀な篠原の新鋭機を使っていても予想も尽かないような動きと強さを見せる黒い機体は,驚くべき器用さでコックピットにもぐりこみ,パイロットのヘルメットをとんとんと中指で叩いてご挨拶.レイバー戦のプロ相手に余裕で遊んでみせたこの敵の正体は,翌日の砂浜で一応明らかとなりました.
翌朝,快晴の空の下で発見されたふざけたサイン.砂浜にでかでかと「ぐりふぉん参上」と犯行声明が残されていたのです.…グリフォンのパイロットがやらかしたその悪戯を見て,黒幕である内海課長は大笑い.真面目な黒崎は冷静に憤慨しているけれどこの程度じゃ証拠にならないと余裕の内海課長.こんな人に「僕から言っておくよ」とか言われても…絶対言うはずがないんだな(苦笑).
南洋の眩しい太陽の下,海を行く客船の中では昨夜暴れた黒い機体が休息中.慣らし運転であの始末って本気で動いたらどうなることやら.案の定内海は昨日のことを咎めたりはしないものの,健康診断に関してはちゃんとバドに命令.本人は体をいじられるのをかなり嫌っていますが,「真剣に遊ぼうと思ったら,それなりの苦労も覚悟しなきゃ」と運用に不可欠なステップを外すことは許しません.
グリフォンは搭乗員が常時健康診断を受けなければ動かない機体.それは通常の機体なら最優先されるべき安全性に大きな課題があることを示唆します.確かに開発者たちの成果は褒められるべきものなのかもしれませんが,違法行為を行っていることだけでなく,人命を使って実験まがいのことを行っているあたりからすっかり腐ってる….こんな風に腐らせたのはもちろん責任者である内海のいいかげんすぎる姿勢に違いない.
グリフォンは,そのままでは世に出せない素晴らしい成果.強い上にコンテナに格納できるため移送もしやすい.豊富な資金ゆえのイリーガルな一品を開発者は誇り,しかし世間に公表できないと嘆きます….穴掘りデモンストレーションは確かに似合わない,兵器としてはあまりに安全性に問題があり過ぎるこの機体.しかし内海には絶対に成功する自信があるようです.
汎用機としては規格が従来のものと異なりすぎて売り物にならないグリフォン.しかしそれを支える基礎理論は確かに法に違反しない売り物となるはず.しかしそれでは押しが弱いと考えたのか,篠原のOSまでおまけにつけるとか言い出す内海.当代最高のOSで,ゆえに軍事機密並に硬いそれを手に入れるには,現在篠原が試験運用している警視庁のイングラムを1機捕獲すればいいととんでもない.…ヘルダイバーにも近いバージョンのOSが乗っていたはずなのにわざわざイングラムの1号機を狙うのは,OSそのものよりもそこに蓄積された動作データ狙いに間違いない.
さて,悪の組織から狙われることになった野明ですが,昨日の激しい悪夢について呑気に遊馬に説明しておりました.思わず太田に助けを求め,しかもぶっ壊れていたと聞いて,夢の不条理と正しさを感じるひどい遊馬.「部分的には妙にリアルなんだよなぁ」なんて言われてしまう,正夢らしい明け方の夢.
けれどきっとこれはアルフォンスを異様に大切にしているからなのだと,遊馬はパートナーを安心させにかかります.ずたぼろにされるのは戦闘に対する恐怖だろうし,既にやられた太田機については「いつものことだ」で流していいのか(笑).
夢は経験の反映と言われ,簡単な野明はちょっと安心.半年かけてようやく動きに馴染んできたところ.これからはもっと高いレベルで働けそうだからこそ,ぼろぼろに壊れるなんて絶対に勘弁なのです.「予知夢だったりしたらたまんないよ!」と能天気に笑う二人….まさかこれが正夢だとは,そしてその正夢に巻き込まれて遊馬までひどい目に遭おうとは(苦笑).
そして,既にやられていることでおなじみの太田なんですが,彼は彼で今まさに窮地に追い込まれようとしていました.香貫花に引き続き熊耳の尻に敷かれている太田は,「太田くん」と君づけされるのが嫌でもろくに抵抗もできません.しかも進士たちの噂によれば,近々小隊増設の動きがあって,新隊長には熊耳や五味丘が有望! …このままではさらに頭が上がらなくなる.太田の苦悩は深まります.

後半.数日後,隊増設の動きについて警視庁で説明を受けた後藤と南雲.しかし隊を増やすかわりにイングラムを手放さねばならないってんだから大変です.もちろんまだ本決まりではないものの,とても現隊員が納得するとは思えないから頭が痛い.「…そうだ,対応策相談しない?」と後藤は飲みに誘ってみるものの,先約があるのとしのぶさんにさくっと断られちゃってがっくり.
南雲の先約は友達の不破との飲み会.お好み焼き屋で2人でつついてる姿が実にほのぼので,旦那とか子どもとか仕事とかの話をしているこの姿からは,彼女たちの職場での姿は想像できない.けれどやはり同じ業界の一員として,レイバーの話が中心になりがちのようです.…不破の目的もその情報交換.自衛隊では探しきれないものも警察にはあるかもしれないと「今,限りなく人間に近いレイバーって,どれくらいあるのかな」と唐突に質問してみます.
現状で最も人間に近い機体は,篠原のイングラム,シャフトのTYPE-7ブロッケン,そしてトヨハタのSR-70…実質篠原とシャフトの2社寡占状態で,そのうちの1社が警察や自衛隊に機体を納品しているとなれば犯人の目星はついたようなものなのですが(笑).「なんかあったの?」と聞き返すしのぶに「…別に」と不破,それにひっかかりながらも「まいっか」と追求をやめてしまうしのぶの柔らかさは,年齢と,もっといいかげんな後藤の影響なんだろうなぁ(苦笑).…別れ際になって「ぐりふぉんって名前に心当たりない?」と肝心なことを聞いてみる不破.本当は友達ともっとぶっちゃけていろいろ聞きたいけれど,立場上ここまでが精一杯なのです.
課に戻ってきた隊長は,今日も絶好調で整備班員にイングラムの魅力を語る野明を見ながら悩み,「愛情が大きいほど衝撃も大きい,だよなぁ…」ってなわけでとりあえず遊馬に嫌な役目を押し付ける(笑).野明を一番よく知っているからこそ,そんなことを言えば絶対怒るに決まってるとわかっている遊馬には酷な役目.見るまでもなくわかってるじゃありませんか,と嫌がる部下に「でも見たい」と上司はわがままだ(苦笑).しかも手まで合わせられてしまったら,これは…折れるしかないのが縦社会です.
かくしてわかっている結末を確認するため,野明と一緒に屋根に上がった遊馬.いい天気で上気した彼女は胸元をぱたぱたやっていて,それは若い男としてはやっぱり気になることで…(笑).しかし本題はそこじゃない.「…あのな!」と言おうとするけれど言い出しにくくて,そのまま写真を突きつける! …そこには篠原の新型機,98式AVのエコノミーの姿があり,「イングラムを下取りに出して,そいつを何機か購入しようかって動きがあるらしい!」と遊馬が話したら,「ふうん…えええええー!」と野明絶叫そして暴走.勢いに乗って隊長室に乗り込んで「納得できません!」と異議を叫ぶ(苦笑).…こういう勢いのある描写のおかしさは,アニメの方が優れてるかも.
こうならないために遊馬に押し付けたはずなのに,結局野明の直撃を受けることになってしまった隊長.アルフォンスは日々完璧に磨きがかかってると強く強く強く主張され,「これまで育ててきた苦労は一体なんだったんですか!」とがっぷり噛みつかれ,後藤は遅れてきた遊馬にひどく悲しい顔をする(苦笑).でもこうなるのは最初から見えてたんだから,今恨みがましい目で見られても….
これはまだ決定したわけじゃないから上の方にはそう伝えておくと後藤が請け負ったおかげで,野明の怒りはようやく終了.…そもそも隊長室にいきなり殴り込みをかけるというのは滅茶苦茶なので(笑)あわてて保護者の遊馬が回収し退場しようとしたところ,なぜか南雲隊長が「グリフォンって名前,聞いたことはない?」と聞いてくる.もちろんその名はレイバーメイカーの社長子息の記憶にもありません.
保護者に連れられ退場した野明ですが,イングラムを下取りに出すなんてことは「説得力のない計画」扱いで断固反対.育て上げたイングラムは素晴らしく,それをなぜ今更別のものに取替えなければならないのかと憤慨中.けれど遊馬から見ればこの計画は完全な間違いとも思えない.なんせ実験機的な色合いの濃いイングラムは高くつきすぎるし,そもそも現状でも事件の数に対してパトレイバーの頭数がまったく足りていないのです.
機体が現状よりもスペックダウンすることは間違いないけれど,その分大量投入することで小隊数を増やし数で勝負する.犯罪に使用されるレイバーのスペックの向上を緩いと考えれば,そんな計画をお偉いさんたちが考えるのも不思議ではない.…もし,この後あの一連の事件が起きなければ,この段階で第2小隊はイングラムを失っていたかもしれないんだな.
優れた現行機を下取りに出し廉価版を大量購入する.計画の是非を決めるのは上層部ではありますが,二課の見解をまとめるために開かれた隊長クラスと次期隊長候補によるブリーフィング.これは昇進の機会だけれど,「結論は出てるんじゃありませんか?」とあっさり否定する熊耳.しかも第2小隊の熊耳だけでなく第1小隊の南雲や五味丘までもがイングラムの性能を信頼しエコノミーに疑念を抱いています.そして,一番頼りになる榊班長も使えるかどうかが怪しいということで態度保留.実際の品定めは現物を見てからということになります.

その品定めの場となるのが第3回国際レイバーショウ.晴海でやるのは今年で最後…って,当時の敷居の高いネタですね(笑).ここに篠原がエコノミーを出品し…内海たちも勝手にグリフォンを出品するつもり.もちろんこんな衆人環視の状態で犯罪マシンのお披露目をやらかすなんてリスクが大きすぎるわけですが,内海はそれ以上の効果があると余裕たっぷり.犯罪をリスク扱いするこの危険な思想こそ,内海が特異な悪役として名を馳せた所以です.…垂れ込める暗雲と雷鳴が,やがて悲劇の雨を呼ぶ次回に続きます.

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