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機動警察パトレイバー#37

「支えられ無事に流れていく日々の巻」

犯人逮捕の最中に現場に駐車していた自動車を数台犠牲にしてしまった太田の2号機.いつもはレイバー保険で弁償しているのだが,たまたま今回に限って現場検証をやり直すことになってしまった.検証にやってきたのは愛想のいい調査員のおばさん.一見物腰の柔らかな普通のおばさんなのだが,動作は機敏だし目の付け所もなかなか鋭い.
結局今回,検証の結果として保険が降りなかった上に,保険会社からはお目付け役としてあのおばちゃんまでつけられてしまった第2小隊.課の印象を悪くするわけにはいかないと,不自然ながらも隊員全員で歓待しようとしていた矢先,おばさんの目の前で太田が服をひっかけて破いてしまった.

レイバー以外に比重が置かれた話の方が,とっても本作らしい「パトレイバー」テレビ版.今回はレイバーの運用を巡るちょっとしたエピソード.ありがちなロボットものでもこういう設定は裏で為されているはずなんですが,それを物語の中心に持ってきて1話やっちゃう度胸が非凡! 現実と地続きの近未来という設定でなければなかなかやれない種類の話で,地味でお約束だけど,やること自体にかなりの価値がある1話です.
人間模様中心の今回は派手な動きはそれほどなし.レイバーよりはむしろ車の方が終盤で大活躍するわけですが(笑)その分構図はなかなか冒険しています.地上の人間から巨大なレイバーを見上げたり,レイバーから機敏に動く人間や周囲を見下ろしたり,狭さを表現するために真上から見下ろしてみたり.表現したい狙いがあった上でのカメラワークがされているので,その意図と表現の関係にもぜひ注目していただきたい.

前半.激戦の傷はすっかり癒えて通常営業に戻った第2小隊は,今夜も暴れるレイバー相手に奮戦中.飛ばしてきたワイヤーを逆に2号機が上手に絡めとり,体力だけじゃなかったんだと野明に褒められていたり(笑).工事用の機体とイングラムではそもそものスペックがあまりに違い過ぎるので,そんなに気負わなくても必ずなんとかできるはず…なんだけど,太田はいつものように犯人機を追うことに夢中になってしまい,結果として足元に停車していた一般車両が数台が2号機の足によって傷物に.逮捕には多少の犠牲はつきものとはいえ,警察が犠牲ばっかり出すのもどうなのか.
てなわけで,後日熊耳に後藤から伝えられたのは保険会社による現場検証のやり直し.あまりに請求の多すぎる第2小隊が組織内からもマークされていたところで,今回の一件が起きてしまったために面倒なことに.それに一番納得できないのはやっぱり太田.パトレイバーだけの高額な特殊損害保険に加入してるってのに,任務中の事故で何で現場検証をやり直さねばならないのか? …とはいえ,検証の必要があるようなことをやらかした元凶は太田だからなぁ…(苦笑).
全員でわざわざ現地に行って再度現場検証をやり直し.寸分違わぬ再現を見せてあげるのが本日のお仕事なので,操縦者は好き嫌いを言ってる場合じゃないですよ(笑).この検証につきあうのがスクーターでやってきた丸っこいおばちゃん.「申し訳ございません遅くなっちゃって!」と愛想のいい保険会社の山田尚代さん.調査員として来てるけど,にっこり笑う彼女は本当に普通で,ただの勧誘員に見えるなぁ.
けれどこのおばちゃん,そのほのぼのとした見た目に反してえらく手際がいい.てきぱきとメジャーで計りチョークで記入し,路上に昨晩の状況を正確に再現.さらに太田から当時の状況を聞いて,もっとじっくり追い込めたのではないかと鋭い指摘も漏らします.…これは太田には結構痛いところで,しかも本題はそこではないとさらりと流すおばちゃんは凄いや! この段階で彼女は随分と太田より格上なのです.
山田さんが見たい検証の焦点は安全確認.1号機が暴走レイバー役を務めてあの夜を再現するときに,おばちゃんときたらレイバーの足元に近寄ってしっかりチョークで線を引く.地面に固定されたものならともかく,重心が高い2足歩行のロボットの足元にいても脅えない度胸が凄い! 操縦者が信頼できないと怖くてできないなぁ….
かくしてはじまる事故の再現.犯人を全力で走って捕獲したところで一度動きを動きを止めさせて,またも足元にチョークを走らせる.軸足の動きを見ているらしいけど,組み合う2体のレイバーの足元なんて不安定でおっかない場所に,普通の度胸じゃ近寄ることもできないよなぁ(苦笑).さらに捕えた犯人を抱え上げさせるけど,この時は焦点の軸足には動きなし.
この動作に3,4秒かかったことを太田に確認した上で,「デジタルレコーダーでは0.8秒で賊を立たせてるのよね?」とおばちゃんはより忠実な再現を求める.事故の状況について完全に頭に入っている彼女の指摘は鋭くて,一気に持ち上げた太田機は軸足がぶれて車のあった位置に入った…一応検証は終了なんですが,これはやっぱり太田の過失…だよなぁ.
事故の状況についてきっちり把握したおばちゃんの現場検証はこれにて終了.メカ音痴と自称する彼女は後藤隊長に,報告書だけではちんぷんかんぷんでと礼を言います.…もちろん把握しきれてないのはレイバーに関する情報だけで,事故そのものはだれよりも良く把握しているに違いないけど.「イングラさんのことも少しわかったし!」と勝手なあだ名をつけて山田さんはあっさり退場.審査の結果は本社から届くからと流されて….
結局保険会社より伝えられたのは,今回は保険対象外.わざわざ検証をやって保険会社の言い分が通ってしまったということで太田は怒るけど,そもそも無理に追い詰めなくてもいいところで十分な安全確認なしに大捕物なんかやらかす方が絶対悪い(笑).確かに被害を気にしてはできない任務もあるけれど,保険会社はパトロンや慈善家じゃないんだから,無制限に金をくれるなんてことはありえない(苦笑).
ある程度保険によって保証されるからこそこなせる特車二課の荒仕事.「保険のために腰が引けるようなことは断固せんからなぁ!」と怒る太田は論外としても,保険の後ろ盾がなくてはできないような任務は多いはず.例えば黒いレイバーみたいに他では対応不能な凄い奴ばかり任されているわけだし….けれど「…荒仕事に慣れすぎちゃったかなぁ」と反省もする後藤.保険金の請求が第1小隊の8倍ってのは,黒い奴の件を込みにしたとしても,やっぱりちょっとなぁ(笑).
そんな8倍の問題児には,保険会社からお目付役まで送られてきます.穏健な1号機側から見ると,あからさまに一般に対する配慮がなさすぎる太田が悪いんだから仕方がないって感じ.でも,お目付役の山田さんの「殺風景なところね」ってな笑顔は,時代の最先端を行く若者中心のマニアックな肉体労働の現場では,ポップアートの中にオカンアートが混ざってる感じに浮いている.
とはいえ今回の同行については,保険会社的には浮いてるとかいう問題を気にしていられない.特殊なパトレイバー保険が実際にどのように請求されるのか,その実態の一部始終を彼女が全て把握するのが狙い.これがうまくいかなければ今後の保険にも影響が出るわけだから,たとえ太田でもなんとかよろしくしなければならないのです.
かくしてオフィスにおばちゃんが住み着き,第2小隊は狭いトイレに集合して秘密会議! 熊耳さんまで混じっているのが,凄く付き合いがいいよなぁ.保険請求がされたもののうち熊耳さんが指揮を担当してるケースは稀のはず.ほとんどが香貫花と太田の責任か太田の独走が招いたものだろうに(苦笑).…このシーン,上から見下ろす構図がとても面白い.
元凶である太田の意志はこの際無視で,少しでも裁量権のあるお目付役の心象を良くするために努力をすることを決めた第2小隊は,お茶を入れたり席を準備したり花を飾ったりと,この職場的にはできる限り精一杯のおもてなしを準備.けれどこんな時ですら足を引っ張るのが太田というもの.おばちゃんに気を取られたせいで,自分の制服をひっかけて破いてしまうのです.

後半.問題児太田はなんだか居心地の悪いことになっておりました.破いちゃった制服を縫ってくれたのはあの山田さんで…物凄く敵意を抱いていた手前大変にやりにくい(笑).私なんかがいては迷惑でしょ,とおばちゃんはちゃんと空気を読んでいて,しかも特車隊が大変な仕事だってのもわかってる.この間の件についても頑張ったのに本社が譲ってくれなかったと聞いては,それが真実であるかどうかは別として(苦笑)元々強面の癖に情に流されやすい太田はすっかり軟化.「保険て太田さんみたいな人の後ろ盾にならなきゃいけないのにねぇ」なんて甘い言葉も,太田のツボを突きまくるのです.
無駄に真っ直ぐな太田だからこそ,情にほだされ変節するときもまた大変にわかりやすい.保険屋に否定的な整備班に向かって,滅多なこと言うんじゃない!と擁護に回ってるのがおかしいぞ(苦笑).それまでの態度を完全に棚に上げ,物の言い方に気をつけろ!と責める太田は純情というかツンデレというか,飛び切りの馬鹿というか….そんな太田は大変に面白く,にやつく野明は話をわかってくれそうじゃない!とさらに茶化します(笑).よくある行動パターンでは,この段階で茶々を入れられると照れから逆方向のことをやるはずなんですが….
至れり尽くせりな山田のおばちゃんは,重箱いっぱいに作ってきた昼食をみんなに提供してくれる.迷惑の影響を少しでも和らげるために手間をかけてくれていて,人格といい行動といい第2小隊にはもったいないくらいよくできている人なんだけど,この場に太田だけは不在.…やっぱりな(苦笑)! 「私太田さんを怒らせるようなことをしちゃったのかしらー」とおばちゃんは困ってますが遊馬たちは全力で首を横に振る.だって太田の行動ときたら,好きな相手との仲を茶化されたツンデレそのものなんだもの(笑)!
野明が呼びに行くと太田は一人でパン食ってます.こっちも向こうも仕事,馴れ馴れしいのは好かん!…とそっけないふりの太田.単純な野明はあんまり杓子定規でも,と,とりなそうとしてますが,今の太田の態度は要するに照れてるだけなんだから放っておけばいいんだ(笑).部外者に対するケジメが足りんのだ!などとツンツンしている太田の耳にも響く警報! おばちゃんがくれた重箱も放置して出動する一同は,時には食事もろくに摂れないような大変な仕事に日々従事しているのです.
保険会社のおばちゃんと一緒に向かう今日の事件は,重量級レイバーが過激派に奪われたといういつもの奴.…レイバー内に位置通報装置が入っているからどこを移動しているのかわかるってのは,現在のGPSとか携帯等の位置通報システムを彷彿とさせますね.もちろん冷戦末期の放映当時は一般には普及していない技術だから,いい未来予測をしています.犯人車両の位置を特定したところで,まずは覆面パトカーが犯人車の真後ろに着けて後続車両と犯人車の間に距離を取り,待ち伏せポイントに近づいたら今度はパトカーが前に出て,前を行く一般車両との距離をとる.これで舞台の準備は完了.ここからが第2小隊の活躍どころ!
通行止めで規制され.唯一作られた逃げ道の先で待機している第2小隊.あがく犯人がパトカー蹴散らして下の道に逃れたところで,「そこまでだ,止まれ!」と人間にはあまりにもでかい銃口を向けるのです.銃が怖い以上に第2小隊そのものも怖いはずなので(笑)犯人が抵抗できるわけもない.「はい,作戦完了!」ってなわけで.一切被害を出さない仕事の終了におばちゃんは拍手.
しかしこれで仕事が本当に終わったら.帝都の破壊神の名が廃るってもの.通行止めが終わった後に流れ出した車の横で.強奪されたトレーラーの尻を路肩に寄せようとしている2号機.ここでひどく不用意に踏み出した足がやってきた乗用車を驚かせてしまい玉突き事故発生! …うわー.すっごく長いや(苦笑)! 規制解除直後でスピードは出ていないから死者は出ていないだろうけど.太田の顔すらひきつる大惨事.「…どう贔屓目に見てもパトレイバー保険の対象ってのは無理じゃないかしら」と.おばちゃん.
その上.思いっきりやっちゃった太田はさらにミスを重ねてしまう.子供の自転車を誤って踏んづけてしまうんですが…正直.これは自転車で済んでよかった.もしタイミングがちょっとでもずれていたら子どもを踏んでた可能性が! 目の前で自転車踏まれて子どもはわんわん泣くけれど.「免責額以下みたいねあの自転車」「…やっぱり?」 そしてひどいことをした太田はひどいよばかばかばかと叩かれるばかり.でも.どうやって罪を償えばいいのやら….
後日.太田は隊長に外出許可を求め.自転車踏んじゃった子どもの家に出掛けます.わざわざレイバーのおもちゃを購入の上で訪問した家で太田が見たのは…真新しい自転車.太田より前に.レイバー保険の担当者こと山田のおばちゃんが新しいのを置いていってくれたらしい! 子どもが無邪気にイングラムのおもちゃで新しい自転車を踏みつけている様は,負い目のある太田の心にぐさぐさと刺さるわけですが(笑)最後には「おじちゃーん,かーっこいい!」なんて言われたら,コケるよな(苦笑).
しかもおばちゃんの活躍はそこだけではなかった! なんとパトレイバー保険がリニューアル.これまでの全てが無条件で保険適用となることに! これもまた全て.実は取締役だった彼女の手腕.現場からたたき上げの努力家という彼女の恩情に.太田は自分の了見の狭さを恥ずかしく思うのです.…保険の対象が広がった分.月々の保険料も相当跳ね上がったはずだけどそれは気にしちゃだめだ(苦笑)!

今回は取締役の一人として二課を訪れていた山田さんに.「話があります」と申し出た太田.保険の見直しは彼女の仕事なのだろうけれど.子どもの自転車はきっと職務外.ゆえにあれは自分が弁償しますと律義で真面目な太田に,会社の経費で落としちゃったからいいと実に鷹揚な山田さん.「太田さんみたいな大変なお仕事をしてる人に,これ以上細かい神経を使って仕事をさせるわけにはいかないわ」なんて言ってくれる彼女は器がでかい.けれどここまでしてもらって太田の気が済むわけもなく….
その後,街に貼られることになったのは太田がモデルとなった保険会社のポスター! 「任務に専念できるのは 安心があるからです 」てな感じで広告塔に(笑).警察と噛んでいるとはいえ,営利団体が特定の警察官を広告に起用するってのはかなりの異例.第2小隊の知名度も手伝って街中の目を惹くような広告となったのでありました.…パトレイバー保険の規模をより大きなものとして,さらに広告効果の高いモデルをほぼ無償で捕まえた山田さん.お弁当と自転車だけでここまで手に入れた彼女って,やっぱり凄いや…などと深読みするのは間違っていますか(苦笑)? 次回,お待ちかね,押井守のスラップスティックな傑作回に続きます!

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