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機動警察パトレイバー#46

「それは誰も避けられぬ波の巻」

ついに第1小隊に新型機,AV-ゼロの導入される日がやってきた.特車二課にとって時代遅れのパイソンに代わる最新機種の導入は喜ばしいことだが,イングラム以上の機種を隣の小隊が保有することになった第2小隊は複雑だ.中でも野明は入れ替わりに教習所行きとなるパイソンの姿に,言葉にし難い淡い不安を感じていた.
新機種のゼロには,整備班長の榊でも理解しきれないニューロンネットワークシステムが搭載されている.システム的な学習によって手動よりも迅速に最適な動作を選択し実行できるこのシステムは,太田の乗るイングラム2号機との模擬戦で素晴らしい動きを見せた.周囲に被害を与えない動きを自動的に選べるゼロの実力を目の当たりにして,野明の不安は深まっていく.

ついにテレビシリーズ最終エピソード! クライマックスを飾る最後のネタには大テーマである世代交替を選ぶ「パトレイバー」.1話で第2小隊に導入されたイングラムはこの回をもって最新鋭機の名を返上.スペック的にナンバーワンでなくなったイングラムは,今後今まで以上に激しい世代交替の波に揉まれていくことになるはずで…そんな未来を考えてしまう野明は不安になって,かなり大きなミスをやらかしてしまいます.
時間は全てに対し無情なほどに平等で,ロボットも人間も技術もアニメも,新しく美しかったものは例外なく時を経れば古び,後から来るものに追い抜かれていくのが定め.…いつか全てが例外なく過去になり消えていくという恐ろしさは,失うことに慣れていない若者だからこそ強く感じる恐怖なのかもしれません.最終回らしくシリアスな2話連続の脚本は,当然ながら伊藤和典.

前半は珍しく哀調の回想からはじまります.野明の見る夕暮れの悲しい思い出には声もない.幼い自分は父とともに,泣きながら木の下に埋めたのだ.それは恐らく年端も行かぬ彼女にとって初めての別れの経験.悲しいけれどとても重要なこの記憶は,この先の事態を解決するための大切な手がかりだったりもするのです.…そんな夢から彼女を引っ張り上げる警報.飛び起きた野明は着替えて飛び出し,夜明けの出動に走っていきます.
この日の夜明けは,第1小隊がこれまでひたすらに待っていた夜明けでもありました.隣のイングラムは素晴らしく,それに比べて量産機は毎度今ひとつで…けれど欲求不満もこの日で終わり! 南雲隊長がもうちょっと待とうと言っていたあの日がついにやってきたのです.感慨深く今日でお別れのパイソンを見上げる南雲隊長は,「長い1年だったわ!」と本音をつくづくと口に出します.
旧型機は運び出され新型機がやってくる記念すべきこの日,五味丘はこれまで自分たちを支えてくれたシゲに礼.実際あんだけ時代遅れの機体でこれほど厳しい仕事を続けるなんて滅茶苦茶な話で,整備班の腕がなければ不可能な偉業.…でも,折角優秀な腕があっても古い機体ゆえに実力が発揮できず,あの頼りない第2小隊に大事なところを任せなきゃならないようなふがいない日々にも今日でさよならだ!
事件から戻ってきた野明が見る,運び出されるためにキャリアに詰まれるパイソン.恐らくはこれが特車二課での最後の起動….戻ってきた野明をご苦労様とねぎらった上,「でも,これからは少し楽になるんじゃないかな」と自信たっぷりでうれしそうな五味丘.…いい大人がここまで露骨に浮かれるなんて,本当にこれまで辛かったんだなぁ(苦笑).ちなみにパイソンは教習所行きが決まっていると聞き,野明はそれに少し安心します.
今回の新型機導入話は随分と急.篠原内で基礎開発が終わった段階で一時開発休止していた機体だけれど,39話で量産機がまたぽしゃった時点で実機の開発がはじまったらしい.あの遊馬がやけくそとしか思えんようなスペックと言うくらいだから,これまで負けていった量産機とは格の違う,イングラムの後継に相応しいスーパーマシンであることは間違いなくて…太田はそれが面白くなくて布団をばんばん叩きます(笑).
イングラムよりも高価なあの機体を両小隊に配備するのが無理なのはわかるけど,太田が気に食わないのはその新型機のテストにすら参加させてもらえなかったこと.今後のパトレイバーに自分の経験や意見を反映してもらえないことにプライドが傷ついたようですが,それは新システムを導入したためなので仕方がない.…新型機から導入されたニューロンネットワークシステム.今度のレイバーには仮想的な神経が詰まれているのです.
新しく導入されたのは,コンピュータを人間の頭脳により近づける人工頭脳システム.…確かに人間の判断は曖昧で不確かなものではありますが,周囲の状況を大ざっぱに把握してトータルでの最善手を選び行動する反応速度は相当に速い.自分と周囲の状況を随時モニタリングして0から計算しなければ動けない通常のプログラムに比べ,人間の反射に当たる部分を学習済ネットワーク任せにできるニューロンコンピュータなら,トータルでの判断が適切でかつ速くなる…って仕組みだよなぁきっと.
学習によって形成されたネットワークが最適な動作を選択するから,使い手にかかる負荷はどんどん小さくなっていく…ってことは,動作を出力とする並列処理型の人工知能システムが搭載されてるってことは間違いないらしく.けれど整備の鉄人である榊には,中間がブラックボックスと化すこのシステムはどうにも薄気味悪い.対して弟子のシゲはシステムの利点も弱点も十分に理解していて,ここに世代の差が出てきてるんですね.
誰もに訪れる世代交替の波.イングラムという波とともにやってきてゼロという波をかぶることになった野明は,職場の掃除中に失くしていた写真を見つけました.幼い野明と犬のアルフォンス.この犬が初代でイングラムは3世で2世は猫.…野明にとって愛着の象徴のようなこの名は,楽しい思い出と悲しい別れを2回繰り返した由緒ある名前なのです.
新しい波がやってきたのはその直後.運びこまれ受領される新型機と,すれ違いに運び出されていく旧型機.…野明がパイソンばかり見ているのが印象的.1年前とは立場が逆になり第2小隊はコワモテでスマートな機体をうらやましく見つめねばならないはずだけど…後藤はしのぶの「欲しい?」に「いらない」と即答.1年の習熟の価値を後藤は当然のように理解しているようです.
新品の乗り物なのでまずは御祓い.その後はわざわざ南雲隊長から申し込まれたお披露目の模擬戦.ドラム缶を置いて都市を模した演習場で動き出す新型は,納品直後だってのに滑らかな動きを見せてきます.直線的で芸のない太田機の銃をまず払い,その後も軽くあしらい続けるAVゼロ.ここでパイロットの野明は気づきます.「…ドラム缶を避けてる」.
向かってくる2号機をさばいて後退しつつ,足元のドラム缶を器用に避け続けるゼロ.自動的に避ける,後ろに目があるような滑らかさな足さばきを見て「これが街の中だったとしたら,そして,あのドラム缶が建造物だったとしたら…」と語る熊耳の言葉は重い.ゼロはイングラムを遥かに越える,はじめての大きな波なのです.

後半.経験を超えて太田機に勝ってしまったAVゼロと五味丘の新タッグ.南雲隊長にパイソンと比べどうだと聞かれ,緊張しますと答える五味丘はやっぱり優等生.学習システムの性質上,一挙手一投足がおろそかにできない.日常の積み重ねによって首都圏の守護神となるか破壊神となるかが決まるから….このレイバーを市民の安全を最優先するものに育てたいなんて希望を語れる幸せは,未来のある機体を手に入れたからこその贅沢です.
浮かれても当然な第1小隊に比べたら,あまりにあっさり負けちゃった第2小隊は相当のショック.テスト段階で鍛えられてきているとはいえ,1年の経験を覆してみせたニューロンコンピュータの威力は凄いや! 進士はシステムの安全性を気にしてますが,万一の補助としてイングラムと同等のシステムまで積んでいる贅沢なゼロ.あらゆる面でイングラムを越えてきた素晴らしい後継機の存在に,野明の不安はさらに深まってついに….
「どうしてイングラムじゃいけないのかなぁ」とぼやく野明.わざわざイングラムより高い機体を入れたのは,レイバー全体の性能の上昇に追いつくため.そうでなきゃ早晩仕事が立ち行かなくなることくらいわかっているはずなのに「常に最先端でなきゃいけないの?」なんてごねる野明はおかしい.周囲の技術力に置いていかれた第1小隊の苦悩も知っているはずなのに,「それじゃいたちごっこじゃないか」とすねるのだ.
相棒のらしくない文句を「おい!」と止めようとする遊馬だけれど,知恵と勇気はどこ行ったんだよ…と愚痴は止まらない.結局止めたのは熊耳の,レイバーも道具だから欠点は改良されていくのだという穏やかな説明.あらゆる面で個人的な調整と学習に強く依存するイングラムに対し,量産機改良型は複数の個人データからパターンを抽出して最適化したためデータが丸くなり失敗した.だからゼロはイングラム以上に個人に依存するかわり,イングラム以上のパフォーマンスを最初から出せる機体になった….
夜,良くも悪くも自分のための機体になってしまったアルフォンスを磨く野明のところに,一服しねえかと榊がやってきます.アイスを並んで食べる2人は,イングラムに対する高い評価を共有する仲良し.そして新型機を受容することに失敗しているところまで同じ.特に榊は現役としてはかなり厳しい壁に突き当たっています.制御系がさっぱり理解できない….
情けねえ話だぜと嘆じる榊.「…私も,弱音吐いてもいいですか?」と野明が尋ねたら,彼はサングラスを取り優しい眼を見せた上で「話す相手が違ってんじゃねえかい」と諭す.…ここで相棒に相談しておけば,この先の展開はなかったかもしれないけれど,「しっかりしろ!」と迷いを自分の中に押し込めてしまったのがまずかった.
押し込んだ問題が形になってしまったのは次の出動.暴れるレイバーを取り押さえるために市街地に出動した第2小隊.周囲の障害物こそ多いものの今の実力なら速攻で片付くはずの仕事だったのに,野明機は必要のないところで動きが鈍る.警告しても止まらない犯人機は街を壊しつつ逃げていき…野明はそれをいつものように追うことができない.
周囲の被害に戸惑ってぼやぼやしている間に犯人機は狭い商店街へ.歩行者も器物も多い厳しい場所にあっさり入られてしまったのは野明の落ち度で,「なんとかしなくちゃ…」と思考はどこまでも堂々巡り.ここでやったら出る被害は半端じゃない.いくら保険があるとしたって壊せない.だってゼロなら周囲に被害は与えないだろうから….
やっと見つけた駐車場.これ幸いと野明は犯人機を追い込んで警告の上で仕留めます! 速攻で片付ければよかったところを指揮に従わずおめおめと逃げられたし,最後に車に手をかけられそうになった時には焦りましたが,最終的にはそれほど大きな被害は出さずに任務終了…のはずだったけど.
もちろん最初にアーケードに入られてしまったのは重大なミス.でも,パイロットがなぜあんなことをやったのか指揮官だって当然わかっているわけで.「お前さ」と言いかける遊馬に待ったをかけて,今日は自分でもどうかしてると反省してみせる野明.…駐車場があったからよかったようなものの,もしなかったらどんなことになっていたか想像もつかないからなぁ.
これまで曖昧だった陰鬱な悩みは,野明の中でもはっきりとした形を取りつつありました.新しいレイバーが来たことを一緒に喜べない.むしろ対抗心を抱くばかりだったり,育て方を間違ったかと後悔したり…確かに「ライバル意識を持つこと自体は,別に悪いことじゃない」けれど,今更自分の歩いてきた道を不安に感じるのはかなり重症だ….
「俺はそうは思わないぜ」と励ましてくれる,ここまで一緒にやってきた遊馬.ただのレイバー好きが一流のレイバー乗りになるまでの成長を間近で見守ってきた彼だから,気休めでなく事実として,動揺するなんてらしくないとも「ゼロの真似なんてするな,アルフォンスも喜ばん」とも言えるんだけど…そんなことは野明だってわかっているのだ.

憂鬱は晴れないけれどなんとかこなしたはずだった.ところが遊馬がオフィスに戻ったら,犯人機が駐車場でひっかけた車がお偉いさんのもので大問題に! ベストではないけれど最悪でもない形で事件を終わらせたはずなのに,お偉いさんはゼロの性能を知っていて新型機なら無傷だったといちゃもんつけてきたってんだからやりきれない.確かに商店街に入れたのはまずかったけれど,あの状態で車1台で済ませたのは野明の腕前あってのことなのに!
元々外部からの評価は最悪の第2小隊.何かやらかせば必要以上に悪く見えてしまうのが切ないけれど,今回は本当にタイミングと相手がまずかった.「ことは第2小隊再編成にまで発展しそうな勢いなんですから!」と進士が叫ぶのを…遅れてきた野明は聞いてしまって,反射的に走って,逃げて,イングラムの中に篭ってしまう.
大好きなものの中で膝を抱えてしまう野明.好きなものとずっと一緒にいたい.新しいものなんかいらない.大好きなものを守るためにも新しいのよりうまく働きたい.けれど,それができない…守れない自分が無性に泣けてくる.「わかっちゃった.あたしはアルフォンスと別れたくなくてじたばたしてただけなんだ」…どうしようもなさに涙が零れます.
これまではイングラムの卓越した性能で飛び越え蹴落とし続けた新しい波.しかしそれももう限界で,波は古い全てを飲み込んでいき,「やだもん.アルフォンスと一緒にいたいもん!」って嘆いたって止まるものじゃない.愛するものが刻一刻と消えていこうとする感触に,去っていく幸せな時間に,取り残される人間は一体何ができるのか.次回,最終回に続きます!

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