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モノノ怪#1

望まれぬ者の到来と胎動

雨の夕,薬売りはある宿を訪れ一夜の宿を求めた.どこか間抜けな風体の番頭と白髪を結い上げた老女将によって切り盛りされる大きな宿はこれで満室.しかしその後,大きな腹を抱えた美女が宿を訪れ,どうしても泊めてほしいと番頭に懇願する.腹に子を抱えたままで追われる身の彼女をこの雨の中に放り出せば,明日は宿の前で親子ともに屍と成り果てるだろう.面倒を嫌う女将は思案の末に,普段は使わぬ部屋を女に使わせることを決めた.
老女将が女を案内したのは,子どもたちの足音や笑い声の響く階段を登った宿の最上階.普段使っていないとは思えぬほどに立派な部屋に通された女は,部屋の中でだるまを見つけ,それを返せとねだる不思議な童子と顔を合わせた.やがて疲れで眠り込んだ女の枕元に,女と腹の子を殺すために放たれた猛々しい浪人が現れる.ところが生きて子を産みたいという女の願いに答えたかのように,無法者は見えない何かに持ち上げられ捻り殺された.

これはもう回復不能と思われた悲惨な1クールの最後に登場し,一気に全体の評価をひっくり返した前作がシリーズとして戻ってきた「モノノ怪」.「化猫」が隙のない傑作ってことは直前のスペシャルで放映されたものを見ればご理解いただけるはずですが,あれはたった3話の瞬発力勝負だったから出来たのではないかという見方もあり.そういうのをシリーズでやるのは結構大変だと思うよ…というのが本シリーズ視聴前にあると便利な基礎知識.
てなわけで期待も不安も満載の本作.案外視聴率も取れる作品だったはずなのに…1話からサッカーのおかげでとんでもない時間帯に追いやられる気の毒なスタートを切らされております(苦笑).怪談話を夜明け近くにやるのはなんか違うぞ.作品としては何の不備もなく,前作譲りの素晴らしい映像が展開されているために気の毒さもなおさら.…ある訳有りの部屋にモノノ怪がついているという構造は,「化猫」と結構似通っているなぁ.

前半.物語のはじまりは雨の中より.橋の上で派手な傘差して立つのはおなじみのあの薬売り.退魔の剣と謎のアイテムを携えた正体不明の男です.彼の前には大きな宿が1つあり,ここに何かを感じたのかそこで一晩泊ることを決めたらしい彼.中にいる黒い肌の番頭には薬は間に合ってると冴えない対応をされるけど,「宿を,一晩,お願い,したく」と偉い間を置きながら言う薬売りの顔は,老いた女将の頬を染める程度に良い男なのでありました.
こうしてはじまる物語では,看板にも描かれている不思議な形のダルマ?が重要な象徴となっていきます.特にその夜薬売りの後に宿を求めた女は,この象徴に徹底して愛されております.膨れた腹を撫でて中の子に声をかける彼女の手首には,安産祈願の黄色のお守り.頬被りした訳有り風のこの女は,よりによってこんな淫靡な雰囲気の漂うこの宿に転がり込んでしまうのです.
薬売りと老女将が薬やら宿について話しているところにやってきた女.この建物が女将が娘の頃からあって,「宿にする前は…何だったんですかい」「忘れちまったよ」なあたりは伏線で次回大爆発するわけですがまあさておき.女が宿を頼むも薬売りが最後で既に満室.しかし雨に濡れそぼる身重の女は懇願をはじめます.頬かぶりをとればなかなかの美人…って,明らかに日本人じゃない金髪でそばかすのミスマッチぶりが本作らしい.番頭も何人だかわかんねえもんなぁ.
何者かに追われていると必死の彼女は,随分と腹が膨れている割に悪阻も酷い様子.このまま雨に打たれればお腹のやや子は流れてしまうと必死のお願い….けれど番頭はともかく,同じ女で経験豊富っぽい老女将は出ていっとくれとまったく冷たく,かくなる上はと女は最後の手に出る.追い出されれば明日には玄関外で死体となってやる.そうなれば商売の邪魔になる.「脅しなんかじゃありません!」と脅迫する彼女は,自分と子どもの命をこの説得に賭ける!
なんとしても泊めてほしい女の脅しに折れた女将.…しかし彼女は番頭に剣呑なことを耳打ち.曰くつきの部屋に彼女を泊めることに….案内される暗い館のそこかしこには,赤子の形を模したかのようなだるまが転がっています.腹を減らした女がどんなものでもいいから食べたいと女将に頼みつつ登る階段にも,時折あの人形が転がっていたり,例の薬売りの呪符がべったり貼り付けられていたり….
ダルマが転がり,夜更かしな童子たちの足音や笑い声の聞こえる階段の一番上,そこから更に橋を渡って奥へと向かう老女将と女.その途中で椅子に座っている薬売り…彼の陰にも符が貼られています.…泊らせてはくれるらしいけど,女将は女に好意的ではない.訳有りで,ひとりきりで子どもを生もうとする女に,無理して生んでこの先食うに困ったらその子は幸せなのかと嫌事攻撃.これに女は「私が,望んでいますから」と言い返す.
案内された宿の最上階.部屋は美しく広く…厄介な客なのにこんなところに案内されることが逆に不安か.…その部屋のすぐ近くの階段下の椅子には薬売りが待機.何かの気配を感じています.女将は明らかに厄介な部屋に厄介な女を置いて退室.疲れた女はようやく横になり眠りはじめたところで…音.すぐ側で転がる「だるま?」…転がっている赤子の姿を模した人形.
部屋から出てきた老女将に発見される薬売り.訳有りの部屋のすぐ側に,いい男だけど胡散臭い客が悠然と座っていてはやっぱり嫌なんだろうなぁ.長椅子にどっかり腰を落ち着けた上,厠に行くのに迷ったとあからさまな嘘を言って悪びれもしない薬売り.厠の場所を教えられても動くことはなく,既に彼の後ろにはまた札が貼られ,反応している….上は物置だから上がるなと女将.薬代は明日で構わないと薬売りは女将に答え,この場を離れます.
訳有り部屋の女がダルマを手に取りお守りがないことに気付いて慌てているところ,どこからともなく出てきた童子.黄色い肌に青い目でぽっちゃり口の童子は,女に返して!と何度もねだり,女はダルマを返します.…やや子がいるのと童子に問われ,あと四月もあれば出てくると女…座る彼女の膝下には,いつの間にか童子の赤いふんどしが敷かれています.あっち行こうと女を誘った直後にはもう消える童子.勝手に開く部屋の襖や勝手に卓上に戻るダルマ…それはこの後に起きる凄惨な出来事と真実の暴露の前兆なのでありました.
疲れによる眠気は空腹に勝り,訳有りの部屋でとろとろと眠り出した女.再び襖が開き入ってきた…男の荒い息.枕元に立つのはいかにもな風体の浪人者.玄関の外で落とした女のお守りを手掛かりにして,こんな高いところまで侵入してきやがったのです.屋敷には戻りませんから許してと女は懇願するけれど,男でも生まれたら困ると嘯く殺し屋が聞き入れるはずもない.
大旦那と奥様が困ると刀を突きつける男の片目には大きな刀傷.腹ぼての彼女を子ごと殺すため,短刀を投げつけ逃げようとする女の動きを止めて,一気にとどめを刺そうとする.家に仇なすであろう過ちを潰してからでなければ彼も依頼主の元には戻れず,しかし女もこんなところで殺されたくない.それが自分以外の誰望まぬ子であろうとも,「この子が,生まれたがってるのー!」
…女を斬り殺そうと迫った男.刀を振り上げ…ところが何者かが男の全身をひねる.体幹を見えない何かにありえない方向に捩られて,ごきりごきりと骨が折れる音.そのまま何かは男を上に持ち上げて…部屋は雨の静寂を戻り戻す.怖々振り向いた女の目にはあの男も刀も映らず,しかし大きなごきりという音が天井から.高い天井,絢爛の壁が柱がぐるんと巡るめくるめく光景が,男が死ぬ前に見た最後の光景.
符の反応で部屋にきた薬売り,女の悲鳴に駆けつけた女将と男.倒れた身重の女…天井には男.先に部屋にいた薬売りは下手人の疑いをかけられるものの,番所に届ける「その必要は,ありませんぜ」と相変わらずの緩い調子.女も下手人は薬売りではないと証言.怪しい薬売りはこの事件に,探偵役として本格的に首を突っ込みはじめます.
「何を,見た」と聞く薬売りに,男が死んだ様について話す女.巻きついて宙に浮いてぐる,ぐる,ぐる,ぐる…女の姿も四方から,そのまま言葉をなぞる薬売りもまた四方からカメラが.しかし座卓の上に立つ薬売りをぐるぐるとやると,まるで見栄を切っているよう.…遊んでる事態じゃないってのに,明らかに薬売りは面白がってるんだよなぁ.
超常の怪異を気味悪がる老女将たちに,「下手人は,人じゃ,ありませんぜ」と駄目押ししてくる薬売り.薬売りの箱が勝手に開き,金色の,不気味で愛嬌のある意匠の剣が皆の前にお目見えし…何しに来たのかと問われた薬売りは「斬りに,きたんですよ」とおっとり返事.「…モノノ怪を,ね」

後半.見えない何かに巻かれ上げられ捻られた男の死体.こんなことそもそも人間には無理.…さらに老女将は部屋に置かれるダルマにも気付く.…本来はあるはずのない人形.そしてこの宿にはないはずの声,物音.身重の女は人形だけでなく,沢山の子どもの声をこの宿で聞いている.一人なら姿すら見ている…この宿に子連れは泊まっていないはずなのに.
この宿で響く子どもたちの足音,笑い声.女にはそこかしこから聞こえるのに,老女将にも番頭にも何も聞こえない…やっぱし薬売りには聞こえているんだろうか? 最上階なのに上からも聞こえ,ふいに死体が天井から消えた.襖が勝手に閉さざれて声と物音は迫ってくる…奥から,こちらへ.女の方へ.
「すぐそこまで来ているぞ」と符を女の周囲を囲むように奇麗に貼り付ける薬売り.銃撃するかのような音を響かせて張りつけられた符に囲まれた中,女目指して押し寄せる真っ赤な無数の布!壁を一瞬塞いだ布は符に当たり,悲鳴を上げて逃げていく! …初見のときはなぜ男が捻られたのかわからなかったんだけど,そうか.きっとこの布がやったんだなぁ.

ここにいるのは屋敷に繋ぎとめられたモノノ怪.手掛かりは乳児を模したダルマに赤子や子どもの声と気配,そして…天井から滴っていた羊水.「こりゃ,座敷童だ」と形を見いだす薬売り.彼の持つ退魔の剣を抜くには形,真,理の3つが必要.「モノノケの形を成すのは人の因果と縁,真とは事の有様,理とは心の有様」…勝手に飛んで薬売りの手に納まる退魔の剣.
この宿にはこの部屋には座敷童がいる.女を襲った殺し屋を縊り殺して,今は女に近づこうとする存在がいる.男を殺して気が済んだら去るだろうけれど,彼らは去らない.彼らがここにいた真,彼らがここにいる理が明らかにならぬから…「よって皆々様に,真と理,お聞かせ願いたく候!」と卓上で見栄を切る薬売り! …かっこいいんだけど行儀悪いなぁとか空気ぶっ壊しなことをついつい思ってしまいつつ(笑)真理の明らかになる次回に続きます.

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