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モノノ怪#3

現と幻,アヤカシの海

江戸へと向かう船に乗った6人の客と船主の商人と船員.客はお喋りな修験者に暗い侍,妖しい雰囲気の僧侶が2人,化猫騒動で新しい奉公先を探すことになった女中,そして誰より底の知れない,モノノ怪を斬る退魔の剣を持つ薬売り.彼らを乗せた船は羅針盤を頼りに鬼門を目指し,風の具合がよければあと四,五日で江戸に到着するはずだった.
けれどその夜から船は迷走をはじめる.風は止み雲が押し寄せ,とうに朝のはずなのに日は昇らず見えるはずの岬も見えない.地図によればこの海はアヤカシの棲む竜の三角の中.この領域に入った船は怪異に襲われ港には戻れないという.頼りの羅針盤は何者かが置いた磁石によって乱されており,その上船は唐突に揺れ始めるのだ.

空白恐怖のようにぎっちりと詰め込まれるテクスチャに目を奪われる「モノノ怪」.どこまでも派手な映像で描かれる残酷物語の脚本,今回から三話分は小中氏が担当.…独特の世界観と饒舌すぎるウンチク語りを芸風とする氏の脚本らしく,弁士顔負けとも思える修験者が立て板に水で喋りまくる横で薬売りはいつものごとくにあのペースで…かと思ったらこっちもちょっと喋ってみたり(笑).普通の感性の加世さんが間で振り回されてるなぁ.
突如反転する船の天地や船幽霊の骨の乱舞が見る者に目眩を感じさせてくれますが,そういう派手なところよりも奇妙に印象に残るのが薬売りのまるで女性のような色気.修験者が化粧しながらもあくまで男であるのに対し,薬売りは所作や声色からして,男の領域を超えて色っぽいんだよなぁ….

前半.今回からの舞台は海の上.地に足のつかない浮ついた,あるいは板一枚下に死の待つ瀬戸際で暴露される愛の物語.生死の境を漂う甲板ではスタンダードな怪談話.盆の15日に漁に出てはならぬというしきたりを破った若い漁師が沖で出会った迷い舟.それに乗った船幽霊は「…柄長をよこせ…」と漁師に言った.恐ろしさで言われるままに柄杓を渡せば…「はーい! 私,その続き知ってまーす!」
陽の気で出来上がったような彼女は真面目な視聴者にはおなじみ.化猫事件で無事生き延びたあの加世さん.本物の怪異に巻き込まれても最後まで正気を保った彼女は怪談話に脅えることはなく,柄杓で水汲まれて船沈んじゃうとネタバレ全開.これは語ることで信頼を集めねば商売にならない修験者には完璧に営業妨害だ(苦笑).
怪談話はここまで.同じ船旅をともにする仲間ということで船主の三国屋を筆頭に自己紹介のはじまり.彼は元御朱印船のそらりす丸で南蛮西国貿易にする励む商人.この船にもなかなかのブツを積んでおります.修験者は柳幻映斉.アイシャドウと口紅は目立つけれど明らかに男でなんか滑稽.でも加世さんが境の屋敷で奉公を…と切り出しただけで化猫騒動をすぐさま思い出すあたり,決して無能ではないようです.
黒薔薇の着流し,ざんばら髪をうねらせる不気味な風体の侍は「佐々木兵衛.シオヤ藩藩士」と一言きり.最後に高名なるゴダイ寺の僧侶,源慧と菖源.源慧は徳の高い格好をしておりますが,おつきの菖源がいかにもなよっぽくてかなり怪しげな雰囲気.「海に坊主とは,これまさに」…今回のテーマ「海坊主」.怪異の源は海の坊主が握っております.
この三国屋の船には特別なしつらえが.船の中には池のごとき巨大な生簀.しかもぎやまん製で中を覗き見えるところに巨大な金魚を入れて運んでいくのです.この水槽の側にいたのが,マイペースに風を感じる主役の薬売り.加世さんは化猫騒動の恩人を忘れておらず,同業者っぽい彼の登場に修験者は警戒.「あんたも呪術者の類か!」「ただの,薬売り,ですよ」…相変わらずの彼らしいテンポ.
アヤカシが出たら切っちゃうんですか?と薬売りに聞く加世に,「どうして」とそっけなく,まるで女性のような色気で答える薬売り.アヤカシはこの世ならざるものでその数八百万,片っ端から切ったってきりがない…と修験者と違い彼にはあんまりやる気もない.八百万は神様の数でもありますが,神もまたこの世ならざるアヤカシと「同じようなもんだ」と罰当たりな彼.…薬売りにとっては,神のみならず仏すらアヤカシなんだろうか?
けれどモノノ怪はアヤカシとは違う…ふいに舞台の天地は逆転,薬売りは天井に立ち足つきの魚が転がるのを見る.これは薬売りだけが見ている現実の裏の世界で,無造作に転がる足つき魚はアヤカシの1つなんだろうなぁ….薬売りを現実に戻すのは退魔の剣に異様な興味を示す侍.抜いて見せてくれないかと死にかけのアヤカシのようにあえぎ渇望するも「抜けません」.剣を抜くにはモノノ怪の形と真と理が必要.強力な武器を行使するための制約条件で,勿体つけてるわけじゃないですよ(笑).
風の具合がよければ後4,5日で江戸へつくはずの海路.けれどこの夜,ある者がそれを乱します.クリムトのごとき巨大な絵が飾られた船内で,響いているのは船員の五浪丸のいびき.僧侶たちの部屋の前では男女抱き合うように靴が重なり,快楽にうめきつつ経を読む声….…やがて小さな物音と動きだす羅針盤の針.既に台の台の足元には何か長いものが置かれてるんだけど誰も気づかない…泣き声の主を除いては.
頼りの羅針盤を乱された船はぐるりと向きを変え,乗るもののほとんどが知らぬうちに魔境へと進む.薬売りが「風が,やんだな」と感じた通り,雲の押し寄せた第二夜は既にまっとうな現実から離れてしまった,とうに朝であるはずなのに太陽が出てこない.何よりまずいのは本来なら見えるはずの岬が見えない! 房総半島沖,新島,野島崎.南蛮の島…グアム島を結ぶ海域は「竜の三角」.入らば怪異に襲われるアヤカシの海!
羅針盤は正しく北を指しているはずなのに,正しく鬼門に船は走っていたはずなのに…ふいに羅針盤の針が動いて皆びっくり(笑).手品のタネは薬売りの持つ磁石の棒.これが羅針盤の足元に置かれていたので船は海路を外れたのだ.その犯人は目星もつかず,上からは唐突に太鼓の音が響き渡る.虚空太鼓というアヤカシで人に危害はないけれど,薬売りの世界がまたも反転したようにこの領域が怪異に随分と近いことを示す….そして回転する羅盤,衝撃!「何事ぞ!」

後半.揺れる船,爆音,妖しい霧に閉じ込められたそらりす丸.弱弱しく怯える菖源に源慧は動じるでないと言う.「アヤカシなど,心弱き者に擦り寄るものぞ」…アヤカシの起こす怪異で心が弱りその弱った心にアヤカシがつけ込む無限連鎖の海ではまったく役に立たない助言.役に立つのは薬売りの出してきたおなじみの天秤.これは重さではなく距離を測るもの,何との距離かと聞かれれば…「この世ならざるもの,ですよ」
この世界とは逆向きのアヤカシの世界.閉ざされた空間の上より逆さに迫り来るは船幽霊の巨大な迷い舟! …切って成仏させるにしても江戸で見世物にするにしても派手なほうがいいんだろうと修験者と船主を軽くおちょくる薬売り.それが不可能とわかって言う彼は随分と根性が悪い(笑).修験者は退魔の剣で切ってはどうかと薬売りを促し,不気味な侍も剣を見たがる…けれどここには絶対条件の形と真と理がない.
上空より姿を現す迷い舟.雲の合間から降りてくる奇怪な構造物は,巨大なアンモナイトや角貝や藤壺が海中でびっしりと取り付かれた巨大な塊.さらにそこから噴き出す無限に繋がる魚の骨! からからと鳴って船を取り囲む骨を見ても退魔の剣は鳴らないので「形」ではないらしい.かといって底抜け柄杓でなんとかなるようなまどろっこしい手合いでもない.このアヤカシの要求は…「仲間になれと,言っている」
そいつはもちろん御勘弁! あわてて修験者は竈の灰を集めさせ,加世さん五浪丸も手伝い灰を船中に線のように撒く.魔を払う性質のもので内と外と分けて結界を作り,船幽霊の侵入を防ごうとしてるんだけど…まったく効かず船の中を爆走する無数の骨たち.「効き目なーい!」「ええええ」…薪以外のものを一緒に焼いた灰には亡者避けの効果はない.薪を束ねた縄如きで危機に陥るそらりす丸!
座して待つことなどできぬ侍.宙を縦横無尽に走るアヤカシを切ろうとするも,ぬるぬるとした海草が刀に絡み付くのみ.アヤカシの本体はこの世界の裏にあり,今見えているのはその影の一部に過ぎないのかも.そんなもんに現実世界の武器,人殺しの道具なんかが通用するわけがない.アヤカシは勝手に船を宙へと,自分たちの世界へと吊り上げていく!
ここで唐突に己の職を思い出したか,箱から薬を出していじりはじめる薬売り,ごりごりと薬を練りながら修験者に破邪の祈祷を依頼する.不満ではあるものの他に手もない修験者は祈祷を開始.後ろでは僧侶たちも経を唱える.…結構序盤から唱えられてた僧侶たちの経だけど,あんまり効き目はない様子.それはやはり経に余計なものが混じっているせいなんだろうか….
アヤカシは暗闇を伝いこちら…現実の世界にやってくる.ここには日の光を封じるほどに強まった怨念があるから,まずは闇を払ってやらねばなりません.それに必要なのは塔でも巫女でも心剣でもなく(笑)紙製の毬に込めた薬売り謹製の調合物.光は空にあるばかりではない.「目を開けていたら,潰れます,よ」…投げた鞠は宙を飛び,半ばで破裂し白く輝き闇を払った!

薬売りの作った即席閃光弾によって闇と船幽霊から開放されたそらりす丸.ただの薬売りではない圧倒的な実力を見せつけた彼ですが,そんな薬売りにも退治してもしきれないのが八百万のアヤカシというもの.新たに響く鎖の音.たとえ一度退けたとしてもすぐさま第二第三のアヤカシがやってくるのが竜の三角! …一体誰がこんな厄介な海にこの船を迷い込ませたのか.今船に乗るわずかな客と乗員の中で,羅針盤を乱した犯人は誰だ!
加世さんには誰もが怪しい.修験者はアヤカシを倒し名声を手に入れたい,船主は珍しいものを見世物にしたい,侍は退魔の剣が見たくて仕方ない.昨夜菖源には一時アリバイがない.薬売りだけは無条件で信頼しているけれど,ふふふと笑って「次はどんなアヤカシが,現れるのやら」…火薬を全部使ってしまった窮地でも笑う彼は「楽しんでいるの…まさか,ひょっとしたら,薬売りさんも…」饒舌の末に推理モノと化した本作.現と幻の入り混じる難解な竜の三角で虚実を見極めることはできるのか.次回に続きます.

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