アストロ球団#18

「1つの思いは9倍にの巻」

9回裏同点2死満塁.対ビクトリー戦最高の舞台に戻ってきた球五.グラウンドに立てる体ではない球五と,力をほぼ使い果たした球四郎の対決は静かなものだった.2ストライク3ボールのフルカウント,誰だって勝負をしたいそんな場面で,球五は最後まで球を選び,押し出しの1点でアストロ球団は勝利する.
敵軍の将である球四郎は責任を取って自害しようとするが.9人目の超人がそれを止めた.生者との約束を守ることが死者への供養になるのだと諭されて,ここまで迷走した球四郎はついに正道に戻るのだった.

主に野球と同じような器具を使ったなんとなく野球っぽい格闘技「超人野球」もついにゲームセット.様々な思いをこめながらも熱く別れを演じる「アストロ」.テレ朝の最深夜帯に相応しい血みどろ番組も今回で見納めです.原作と同様に道の途中の最終回は感動的なオリジナル展開で幕を降ろすわけですが…ここまで無理に本気で見てきたんだから,シリアスなシーンで大爆笑してもきっと許してもらえるよね? シリーズ全体を通してあまりのどうしようもなさに呆れて失笑したことなら何十回もあったけど,心の底から気持ち良く笑えたのは今回がはじめてです!

前半.9回裏の超重要局面にいきなり戻ってきた球五.ここまでの血なまぐさい展開を吹き飛ばすほどのさわやかさは,彼の空気読まないぶりを見事に示してくれてます.本来ならここまでやっと生き延びてきた奴が立ってこそ美しい最後の舞台なのだけど,そこに計算外が戻って来てなんとなく完結していくだらだら感が,妙にリアルで本作には不似合いです.
とはいえ球五も地味だけど超人なので野球に関しては至って真面目.たとえ死んでも打者を帰すと決意しているし,対する球四郎もこの舞台の最高ぶりにすっかり当てられているよう.2人分の命を支払ってようやく超人野球の楽しさに目覚めた球四郎.同類扱いされるのを嫌がっているけれど,その痣と心は偽りようがありません.
しかしさっきの球一との決戦で全力を出し切って,慣れぬ左手と激戦による疲労ですでに出がらし状態の球四郎の球はどうしようもなく荒れまくる.カウントは1ストライク3ボール.もちろんバリバリの病み上がりである球五の体もとっくに限界を越えていて,バットを振った瞬間に意識が飛んでしまいそうな重体ぶり.一番いいのは2人でさっさと病院に行くことだと思うんだけど,さすがに最終回にその選択肢はないもんな.
そして,どんなに苦しい目に遭おうとも,男なら常に勝負を捨ててはなりません.たとえ体が限界でも,情に流されることなく常に冷静に勝利を拾おうとするその心こそ球五の最大の武器.球四郎に2アウトまで追い詰められても,仲間から重すぎる期待を寄せられても,それでもなお冷静に野球をし続ける魂が勝負の行方を定め,その結末が生き残った全員を救うことにもなったわけです.だって,アストロもビクトリーも延長したら全員死ぬもの.きっと.
全員が見守る球四郎渾身の1投,「我が野球人生に悔いなし」とまで気合を入れた球五の晴れ舞台は…球四郎の球を限界まで見極めて,打たず,そのままフォアボールで押し出しの1点が入ってアストロ球団の勝利! 他の超人たちなら絶対に真っ向勝負するところ,空気を読まない球五は最後まで場の雰囲気に流されなかった.格闘技を選べと追い詰められた状況で,最後まで格闘技ではなく野球を選んだ球五はきっと今このグラウンドの上で誰よりも強い.いや,グラウンドの上だけでなく,雰囲気に飲まれて病院送りになったり死んでしまった奴らよりも….
そして,まさかそんな形で勝負がつくとは思っていなかった球四郎は思わず倒れる.フォアボールで押し出しの1点で敗北というこの状況は,投手にとっては心底痛い.きっと生まれてはじめての完璧な敗北の衝撃に絶叫し血の涙を流す球四郎.しかも敗北すれば自分が散々バカにして,しかも叩きのめされたアストロと一緒に野球をやらなきゃならない.ただ,さすがに仲間の弔いも終わっていない今,すぐに仲間になるのは酷だから…と球一が与えたわずかな猶予に,球四郎は最後のあがきをはじめます.
球四郎のここまでの戦いは,己を呼ぶ運命から逃れるためのものでした.沢村の妄執に巻き込まれ,何をやっても人並み以上の超人としての能力を生まれながらに与えられたアストロ超人たち.球一たちはあまり気にしていないけれど,卓越した才能で何をやっても最終的に成功してしまうということは,裏返せば何もかも出来て当たり前であり,それは特段誉められるようなことではないということ.特に超人としての完成度の高い球四郎の場合,どんな成功もそれは超人の力ゆえのもので,球四郎自身が頑張った成果ではない…いくら周囲から完璧だと思われても,彼の心は常に認められない空しさで満ちていたはずです.
けれど,アストロたちは同じ超人として,球四郎を初めて地に伏させて,空の高さを教えてくれました.超人にも無理なことはある.この敗北は,完璧で安定してゆえに空しかった世界に刻まれた大きなヒビ.そのヒビから己の世界をぶち破ることによって球四郎は新たなる誕生を遂げることができたはずだけれど…その誕生に巻き込んで命を落とさせ,選手生命を失わせた男たちのことを考えると,球四郎は強い自責の念に駆られてしまうわけです.
ここまでの責任を取るために,大門のように腹を割いて詫びようとした球四郎.それを寸前で止めるのが,アストロ9・球九郎! 目の前で知ってる奴が割腹自殺しようとしているというとんでもない状況でも相当冷静な彼もまた,空気を読まない技術を身につけているようです.スマートな球九郎は腹を切っても誰も喜ばないのだと球四郎をひたすらに諭します.こういう言葉を,あのときの大門に誰かかけてやることができればなぁ….今生きている球四郎のために4人は全てをかけて,散っていった.だから4人が命を賭けた大切な命を自ら絶つのは間違っている! 生きている人間との義理を通し,苦しくても恥ずかしくてもどん底から立ち上がって前に向かい歩むことこそ,死者に義理を通すこと.大門もバロンもこの奈落の底から球四郎が這い上がることを信じて死んで行ったのだから.

後半.さて,まあ当然の話なんだけどここまでやってもプロ参入はやっぱり無理でした(苦笑).確かに野球と超野球では球技と格闘技でジャンル自体が違いますからね.でも,あの偉そうだった川上監督から頭を下げられてしまっては,超人たちもそれ以上のことは要求しにくい.けれど野球をすることでしか真の意味では生きられない超人にとって,日本国内でのハイレベルのプレイを拒否されるのはどうにも辛い.30年早すぎたと言われても,日本でもアメリカでもプレイできない超人たちには何も出来ない….
とはいえ悲しいことの裏には少しくらいはうれしいこともあるものです.超人野球関係での死者は3人となったわけですが,その墓石たちが球四郎と球九郎,そして球一たちを1つに結びつけてくれました.己の小さな世界に別れを告げた球四郎は,球九郎の計らいもあってあるべき場所へと戻っていきます.ここに集うのは,たかが球遊びに命を賭け,球遊びの中で生きる馬鹿者たちばかりです.
そんな馬鹿者たちを率いてきた…というか猛獣の前に置いて自分はいつもいなかったシュウロのご様子なのですが.ビクトリー戦勝利の際にはあれほどご満悦だった彼にも,球界からのこの仕打ちはさすがに堪えているようです.もうこの際アフリカ行っちゃうしかないかなーとか考えている,そしてアフリカに行ったときにもきっと選手を置き去りにするに違いない(笑)シュウロの前に姿を現す,アストロナイン!
巨人戦,そして日本球界制覇という夢を叶えてやれなかったと珍しく己の責任を感じているシュウロに対し,らしくないぞと声をかける超人たち.どんな状況でも諦めず,真正面から立ち向かう,仲間を信じて命を預け,絶え間ぬ努力で勝利を掴む.1つのボールで思いをつなぎ,辛いときにもアストロガッツで切り抜ける.男ならグラウンドで死ぬことこそ本望.それはこの9人,最後まで一連托生だ! という趣旨の9人によるリレーコメント.卒業式の答辞を見せた彼らは,恩師…というかこの責任放棄甚だしい迷監督に,感謝の礼を捧げる! …シュウロはただ感謝するのではなく,すまなかったと本気で詫びてほしいぞ(苦笑).
沢村の妄執に巻き込まれ,紆余曲折の末についに完成したアストロ球団.あの日シュウロに託された一試合完全燃焼という沢村の執念も,実に多大な犠牲の末に今ここに現実のものとなりました.しかもそんな祟神・沢村を生んだ巨人軍は実に小粋な計らいをしてくれます.公式の試合ではないけれど,多摩川グラウンドでの非公式戦を準備してくれました!
沢村という大投手の妄執から生まれた9人の気の毒な青年達は,艱難辛苦の末に野球なしでは生きられない体となりました.初代球二との出会い.盲目の青年を選手として受け入れたこと.同じ超人が敵として襲ってきたときの怖さ,育ての父と袂を分かち旅立ったあの日.時には敵,そして味方となりながら9人が紡いできたこれまでの日々は,まさにこの1戦のためにあったわけです.しかし…その開始を目前として,彼らは唐突に消えてしまいます! 金色の輝きの向こう,誰知らぬ空の彼方へと….
そして! ここまで何度となく超人たちを置き去りにして迷惑をかけてきたシュウロは,ついに置き去りを食らいました(笑)! 見事成長して卒業した生徒達に先生はもう不要だと考えるか,もういなくても勝てるから置き去りにされたのかは定かではありません.何はともあれ,これまでのシュウロのひどい仕打ちをやり返すかのように見事に消えてしまった30年早すぎた9人.彼らはどこに消えてしまったのか.

そして現代.アストロ超人どもがお世話になったあの定食屋は未だに潰れず残っていました.「一定食完全満腹」を旗印としているようですが,さすがに老いの威力は大きいようです.どこかで聞いた歌声のミュージシャンが喰いにきているなぁ(笑).新聞には野球世界統一戦開催の知らせ.世界一を決めるこんな大きな祭りの場に,あの9人がいればきっと喜んで参加して,敵味方ともぼろぼろになりながら勝ってくれただろうに.
あの日,願いが叶う直前に消えてしまった9人.彼らが沢村から譲り受けて育てた野球に対する強い妄執は,未だ時空のどこかをさ迷っているはずです.沢村一人の思いが9倍となり,その思いがさらに多くの思いを生み…そのようにして魂,あるいは野球に対する妄執は野球界を脈々と流れていくのかもしれません.いつか彼らがここに戻り,一試合完全燃焼の大願を成就させるまで,この悲しくておかしな呪いは世界に流れ,人々を野球に向かってひたすらに動かし続けるのでしょう.

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アストロ球団#17

「明日はうずきの先にしかないの巻」

13対15,7回裏の二死満塁.球一との対決で限界を越えた球四郎の右手が死んだ.しかし超人は効き手がバカになった程度で試合を放棄することは許されないので,急ごしらえの左投手となった球四郎.球の荒れるピッチャーを支えるためにビクトリー守備陣も奮闘する.特にバロンは捨て身の守備で球四郎を支えるが,このプレイがまたも悲劇的な結末を導く.起死回生の同点ホームランを放ったバロンはホームに戻ったのと同時に倒れた.ここまでビクトリーの連中を叱咤激励してくれた頼もしい男は,球四郎の懇願も聞かずに黄泉路へと旅立つ.

長い長い激戦もついに終盤.クライマックスへと達する「アストロ」.その終わりを飾るかのように,病院送り程度は普通で死者まで出ちゃってる壮絶すぎる戦いに,更なる血の花が捧げられることになります.視聴者に大きなインパクトを与えるには「死」というのは実に効果のある要素・状況ではあるんだけど,そしてそれがたかが野球の試合で連発されるところが本作の最高の醍醐味でもあるのだけれど!…でも,本当にそれでいいんだろうか? バロンほどの漢をこんなことで失うだなんて,そんな贅沢なことを許してもいいのか?

前半はやや光が見えたと思ったらやっぱり暗転.前回ラストで無理させまくった右腕がやっぱりぶっ壊れた球四郎.いくら天才でも相手が全員超人で,息抜く暇が一切ないというのは相当に厳しかったようです.包帯の下の右腕ではブス色のボロ雑巾のように変わっていて,もはや痛みすら感じない.普通の選手ならとっくの前に担架で運び出されるところなんだけど,超人にそんな甘いことは許されない! 超人が退場する時は,少なくとも意識が混濁してなけりゃいけません(笑).
球一は苦しむ球四郎に球を投げ,まだお前には左手があると諭す.そしてこの程度で挫折するようでは,これまで完全燃焼して燃え尽きて行った仲間たちに示しがつかないと….血染めのボールに込められてきた氏家の青春や球五の真剣勝負の精神,ダイナマイト拳が球四郎に寄せた殉心に,球三郎が見せた自己犠牲の姿,そして…大門の悔恨と贖罪.全ては未だボールの中に渦巻いている.
敵の喝によって持ち直した球四郎は,慣れぬ左手で凄まじい球を投げる! なんせ急ごしらえなので球は荒れまくるものの,ようやく真の仲間となったビクトリー守備陣がフォローしてくれます.孤高の男がついに仲間に頼るようになったということで球四郎はまさにツンデレであり(笑),そんな彼の魅力に心揺るがされたチームメイトたちも頑張る.特にすっかりオカマの仮面をかなぐり捨てたバロンに至っては,球六の打球をベンチに転がり込んでまでキャッチしてアウトにするというファインプレー.…ただし,この1つのアウトを得るために,バロンはとんでもない代償を支払うことになります.
8回裏.安定しない急造の左投手・球四郎のために1アウト満塁で打順は球一.試合終盤の両チームの激突をテレビで見守っているのは…峠会長とシュウロ.可愛い孫の人間的成長のために,峠会長が旧知のシュウロと組んで超人どもを真正面からぶっつけたことが明らかに.川上監督と峠会長のタッグがシュウロに挑んでいたのかと思ったら,実際は峠会長とシュウロが沢村の妄執を継ぐグルだったわけですね.まあ,そんなことはともかくとして,シュウロは監督なんだからそこでのんびりしてないで今すぐ帰れ(苦笑)! こんな喰えないおっさん2人にダシにされた川上監督が大変可哀想な気がしてきました….
球一が逆転の1打を放って9回表は15対16のアストロリード.最終回に挑む一同はもちろんぼろぼろ.ここで延長なんかになってしまうと,たぶん両チームとも全員死ぬんじゃないか(苦笑).そんな中でも最も死に接近しているのがさっきファインプレーを見せたバロン.確かに超人から勝利をもぎ取るためには命を賭ける必要があり,仲間たちも本当に死んでいったのは間違いないけれど,彼の進む道が黄泉路となってしまうからやりきれない.それでも逆転の花道を作ることに命を賭けたのは,球四郎に心底惚れていたからなんだろうなぁ….
アストロ超人側もすっかり限界に達しているものの,気合の残っている球一の球はバロンのスイングよりも速い.超人の限界は彼らが死に絶えるとき.それまではのたうち回って勝利を追及する精神こそアストロガッツというもので.そんな度を越えた野球バカに勝負を挑んだバロンの打球は空高く舞い上がり.球七が不死鳥となって宙に舞っても届かない! 折角球団歌をバックに飛んだのに,鉄壁を誇ったこの壁もすっかりインフレーションに置いていかれてます.何か新しい守備技を編み出さないと,次の試合からはここに立たせてもらえないかもしれないぞ?
見事なホームランで3塁までをぐるりと回ったバロンは…ホーム直前で止まる.あと1歩で球四郎のキスが待っているのに,鼻と口から溢れ出す鮮血! さっきベンチにつっこんだ段階で打ち所が相当悪かったバロンは,そのまま大門が既に去った道を後追いすることに.もちろん立て続けに師匠的存在を失いそうな球四郎は大慌て.死ぬことは許さんという最高の言葉で引きとめようとするけれど,超人でないバロンに力は既にない.
常に1番を目指してきた理論家のバロン.しかしその追求も天然の超人である球四郎には叶わなかった.生まれ持った才能は残酷で,仕方なくバロンは頂点の熱気を観察することに人生の目標を切り替えた.…精神的に未熟な大将を観察しているうちに,彼を導くことに面白さを感じるようになって…今.
バロンが最後に指導するのは,己の生まれを肯定すること.他の人々よりも恵まれた能力を持っているからこそ,ある特定の人生を歩まねばならないのを認めるということ.敷かれたレールを否定することで力を奮ってきた球四郎だけれど,彼が本当の力を発揮できる場所はレールに乗った先にしかない.呪われた痣の誘いに従って自分のために人生を歩めと激励して,ついに2人目が最後の時を迎えます.
目の前が真っ暗になったバロンが詠んだ辞世の句.「露と落ち露と消えにし我が身かなみやこのことは夢のまた夢」ただし大部分盗作とこんなときでもユーモアを忘れないバロンの逝きっぷりはたまらなくかっこ良く,しかしそんな面白さも絶命という事実を和らげるどころか,むしろその悲しさを煽るだけ.球四郎がいくら頼んだって時はもう戻らない.一人の超人を目覚めさせるために,2人目の貴重な命が失われます,

後半.9回裏.大門が死のうとバロンが死のうと試合中断なしというのが超人野球の忌まわしいたしなみ.警察は一体何をやってるんでしょうか.野球しか能のないアストロ超人にとって敗北はすなわち存在そのものを否定されること.対して一流のハグレ者を率いた球四郎にとっても,多大なる犠牲に報いるには勝利しかない.互いに意気あがるこのクライマックスに水を差してくれるのが…残る1人! 最後の打席,折角の絶好球を痣のうずきで邪魔されるなんて,球八は実に気の毒です(苦笑).
アストロ超人たちの痣は9番目が同じ球場にいることによって激しく反応.とはいえもうすぐ決着がつく(か延長で全員が死ぬ)という瀬尾際に9人目にしゃしゃり出てこられても困るわけで,新戦力を押し付けあうアストロとビクトリーは男気溢れてるんだか何なんだか.何はともあれこのドームに9人揃ったことを喜ぶ祟神・沢村は己の像に雷を落とし,それがきっかけとなって全員のうずきが止まったのでプレーを再開.明らかに荒神である沢村を鎮めるためにシュウロが必死に悲願を叶えようとした気持ちはわからないでもないですが,…だったらとっととベンチに戻れ.今すぐ戻れ.
続くバッターは兄の球七.左打席に立って走る距離をわずかでも短くし,球二のヒットで進塁するときにもサーカスでの経験を生かして大回転進塁.球三郎のバントは今最も機動力の落ちている球四郎に処理させることによって塁をさらにせしめて1アウト満塁.そして続くのは…球一だ! ここでやらねば男がすたる.最後のエース対決だ!
気合の入った2人の勝負,意地の張り合いに競り勝ったのは球四郎.なんせ死人2人に再起不能2人を背負っているので球一とは背後霊の量が違います.
同点・9回裏2アウト満塁.そんな晴れ舞台に戻ってきたのは…再起不能のはずが無理やり起きてきた球五! 中盤からのいいところはずーっと寝ていたために一切噛めなかった気の毒な男が,ここに至って雰囲気も読まずに復帰です! …今となっては球九郎と似たようなもんじゃねえのかと思えてしまったりするわけですが(笑)ご本人がまだ自分は燃え尽きていないとさわやかにおっしゃるもんだから仕方がない.直前の対戦で燃え尽きかけた球四郎に対し,雰囲気の読めてない球五はどんな形でとどめを刺すのか.試合の結果はいかに! …次回,最終回に続きます!

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アストロ球団#16

「死が開く真の戦いの巻」

アストロとビクトリーのデスマッチ5回表.真実を知った大門はついにヌンチャクではなくバットを握った.超人球三郎の兄,戦いの天才が挑む真っ向勝負に対し,球一はアストロシフトで鉄壁の守備を敷く.けれど大門は消える魔球を打ち鉄壁をその底から抜いて美しいホームランを描いた.正々堂々の勝負に勝った大門は,ここまでの愚かな行為の責任を取るべく陰腹を切っており,最高の勝負を見せた直後に絶命していた.
己の罪を命とホームランで贖った大門の死に様に,敵味方の誰も,あの球四郎までもが感銘を受ける.力でも恐怖でもないもので,大門は両チームをさらに成長させる

漢の流す血と汗でいつも満杯でおなじみの「アストロ」ですが,今回でビクトリー戦最大の転機を迎えます.きっかけは前回後半で球六がぶっちゃけた伊集院家の真実.とんでもない思い違いをやらかしてしまった兄は弟の心も振り切って黄泉路へと爆走.いくら取り返しがつかなくても…逆に取り返しがつかないからこそ,そんな風に帳尻を合わせるのはどれだけ感動的でも間違っている.

前半.球四郎がアストロ潰しの目安としていた4回は終わって5回の表へ.最大の計算違いはアストロ超人の体が思った以上に丈夫だったことだろうか.超人全体によく効いたのは氏家の特攻くらいで,未だに球五以外は生きて動いているもんな.さらにそんなダーティプレイの原動力であった大門の心は球六のファイン暴露によってがたがたに.雰囲気をあえて読まない男・バロンの登場も手伝って,この場にはデスマッチの存在する余地が消えてしまったわけです.
そんな雰囲気の変化を如実に反映するのが大門の得物.おなじみのヌンチャクを置いてバットを握る! 反則上等のこの男には普通の野球道具はどうにも似合わないわけですが,デスマッチを否定し超野球をやろうとしていたアストロにとってはこれぞ思想の勝利の瞬間.喜びつつも「アストロシフト!」の一言で球一の背後に完成するすさまじい防御陣…なんだこの面白い画は(苦笑).
球八の頭上には球七が乗って長打対応,さらに1,2塁間は球三郎,2,3塁間を球六の分身でカバー.確かにこれができるなら9人はいらないかもなあというかむしろ不在の球五の立場がない(笑).こんな愉快な背景で男と男の掛値なしの勝負に挑む球一と大門.そして折角の愉快守備ですら,足元から見事に抜いてホームランとする大門渾身の打球! 折角の必殺守備が1球すら持たないというとんでもないインフレーションの末に大門の勝ち.しかし….
勝負には負けたものの思想面では大門を転ばせたために大勝利の球一は負けてもなおすがすがしく,「やられたぜ!」などと感嘆.己の打球の行方をじっと見て…呆然としているように見える大門.ビクトリー最強の武闘派がまともに野球をやったということで敵も味方もなんだかうれしい気分なわけですが,そんな雰囲気に赤い水が差されます.大門は…バッターボックスに立ったまま,死んでいる!
陰腹を切っていた大門.前回の球六の暴露によって己の罪に気づいてしまったこの男は,思想的な敗北と同時にその命までも断っていました.大門という男の存在意義と欲望と正当性を根こそぎぶっ壊されたことによって,生きる理由が失われたゆえの悲劇.アストロとビクトリーの両軍にとって衝撃的な転機が,もはや何も映さない大門の目から涙のこぼれた瞬間から,はじまります.
あのバロンですら茶化せない,仲間の死.その崇高な死に様に何も感じないのかといきなり球一は球四郎に呼びかけるけれど,それよりももっとちゃんと監視しとけとか医者を呼べとか,そういうことを言うべきじゃないか(苦笑). 球四郎も球四郎でそういう当たり前のところにはまったく頭が行っていないけど,球一の訴える大門の死に感じるもののほうはあるようです
ビクトリーのユニフォームと,陰腹を切った腹のあいだにおさまっていた血に濡れた詫び状.見えない球三郎の代理として,球七が涙ながらに文面を読み上げます.嫉妬と思い違いで父を殺め暗黒に足を踏み込み,犠牲者を出した罪を拭うために一命を奉じてお詫びする.勘違い男の命1つで全てが贖えるわけもないのにそれでも自刃を選ぶのは愚かな自己満足の極みであり!…それゆえに,悲しい.
憑き物と一緒に落とされて死んだ大門が血の滲む遺言に残したのは,あまりにも似合わないまともな言葉.球四郎には正々堂々と最後まで戦えと,球三郎へは兄として何もして…と詫びる言葉を.紅い紙に残されたその声こそが,デスマッチという一つの思想が完全に崩れた音でもありました.
血に染まって読めない詫び状も,そもそもその紙面すら読めない球三郎には自在に読める.最後に己の兄が戻ってきたことを深く感じ「満足したね」と弟自ら抱えて退場.球三郎の腕の中で,勝手な兄は静かに冷たくなっていきます.二十にしてはや心朽ちたり…と思っているのはお前だけだろうに,道ふさがると思ったのもお前だけだろうに.どうしてようやく咲いた花は実も残さずに散るのか.
自分で集めた選手達を駒として扱っている球四郎にとっても,武術の達人であった大門は特別な相手.完璧超人がそれなりの敬意を示したのは大門とバロンだけでしたからね.けれど負けず嫌いの球四郎は「挫折と敗北は何の教訓にもならん」と死者を愚弄し,思想の戦いに負けまいと必死.大門は自分自身に負けたのであり,デスマッチが負けたわけではないと懸命の抵抗を見せているあたりが既に負けているんだけどね.
逆に思想的には既に勝利しているアストロは球四郎のみっともない抵抗に激しく怒り,より一層の猛攻でビクトリーを揺さぶります.あっという間にビクトリー守備陣はぼろぼろに.それでも自説を曲げまいと必死の球四郎も,ここまで炎上してしまうと意地の張りようもありません.ビクトリーの連中だって,この期に及んで未だに自分たちを道具扱いする球四郎のことなんかいっそ裏切っちゃえばいいのに.
そんな往生際の悪すぎる球四郎に完璧なる止めを刺すのが,同じチームでありながらも違う思想で生きているバロン.普段の安定した精神状態ならここまで打ちこまれることはないに違いない球四郎をオカマ言葉で軽く揺さぶったあと,「意味もクソもあるかー!」とオカマな仮面を引き剥いで,球四郎の顔に拳を放とうとする! でも寸止め.球四郎は天才であるがゆえに察しも良く,殴らなきゃわからねえガキではない.だから,言葉を使ってもうアストロには通用しないデスマッチ思想の鎧を脱がせます.
球四郎も他のビクトリーの仲間達も,そして敵のアストロたちも同じ場所に同じ高さで立っていて,球四郎一人が高いところにいるわけではないこと.威厳と権威を振り回しても人はついてこないということ.バロンの教えは球四郎に敗北をはっきりと教えるもの.ここまでされてついに敗北を悟った球四郎は仲間達と同じ場所へと降り,ダブルプレーで走者を一掃.
大門の死は,アストロの1試合完全燃焼という思想の正しさの証,球四郎は数少ない友とも師とも呼べる男に敬意を表し,謹んでデスマッチを返上して試合を進めることとなります.…まあ,デスマッチを返上しても野球ではなく「超野球」なんだけど(苦笑).悔し紛れに死者に唾を吐きかけるような真似はやめ,対等の敵であるアストロを倒すためにも右腕に包帯を巻く.大門の死は,球四郎を大きく成長させる!

後半.勝つために包帯を巻いた右腕で剛球を投げる球四郎.アストロ超人でもかすりもしないようなファイナル大魔球が炸裂しながら7回へ.対するアストロはさすがにダメージの蓄積が表に出てきました.確かに新技とか打たれ強さとかを磨くのも大切だとは思うんですが,それ以上に基礎的な体力づくりをもっと頑張っておくべきだったんじゃないだろうか.相変わらず球一は後半はどんどん一杯一杯.さすがは1球ごとに球の軽くなる男です.
既に息も絶え絶えの球一の前に立つバッターは球四郎.でも,とうとう球一の球はキャッチャーの元に届かないほどにへろへろ球へと変化したので,備前長船を片手に球四郎はマウンドに登ります.しかし情けないと振り回したりすることはなく,わざわざ指先のしこりを日本刀で切り押してくれる.…これはありがたいような,むしろ素人治療じゃ危ないから女医さんのところでちゃんと処置を受けたほうがいいような(苦笑).
互いに完全燃焼することこそが,死んだ大門への一番の供養だと考えた両軍はあっという間にヒートアップ.特に無駄な球七のフライトは雰囲気に流されたんだろうけどやりすぎで,おかげでアキレス腱が切れました.気持ちはわからないではないけれど,やっぱしこれはダメだよなぁ….アストロは劣勢.バロンは見事な空中回転によって華麗に大逆転の3点をゲットし,球六のアンドロメダも包帯巻き球四郎の球の重さにはかなわない.
異様に重い球四郎の球はスピンボールの一種.投げている者の腕をぶっ壊しかねない恐ろしい球の前に立つのは球一.先に塁に出た仲間を返すため,ここ一番のジャコビニで球四郎に挑む! さすがは主役だけあって球四郎の球を打ち返すことには成功したんですが,バロンのその身を張ったフォローによって走者一掃には至らず満塁.…でも,やっぱりやってることが無茶すぎた.球一との対決で限界を越えた球四郎の右腕は…動かない!
13対15でビクトリーのリード.7回裏の二死満塁.ついにクライマックスを迎えるこの闘いは,一体どんな終幕に至るのか.そして試合終了までには,峠会長と和んでいるシュウロはちゃんと帰ってくるのか! 沢村の妄執に踊らされる青年達の明日はどっちだ.次回に続きます.

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アストロ球団#15

「優しい嘘は破られての巻」

アストロ対ビクトリーのデスマッチは続く.球五が敵の罠にはまって戦線離脱.猛るアストロは野球道を外れかけるものの,球八の叫びがそれを引き戻した.ビクトリーの陣営にも大きな動きがあり,ダイナマイト拳の代わりにバロン森が入る.自己愛と耽美な雰囲気に満ちた優男の加入に動揺するビクトリーだが,彼の目や頭脳は球四郎も認める超一流のものだ.
大門との真っ向勝負を避けた球一.しかし続く球四郎に見事に打ち取られてしまう.一挙に4点を奪われたその裏,球三郎は純白のユニフォームで兄との最後の勝負に挑む.

ここまでの血塗られたデスマッチに大きな転機が訪れる「アストロ」.ビクトリーを率いる球四郎の意向でここまで殺し合い風味が大変に強かったわけですが,前回の球八の叫びがきっかけとなったかのようにトンデモ野球方向へと路線が修正されていくことになります.その流れを加速させるのは新規参入のバロン森の実に楽しそうな大サービスぶりと,球六が暴露する事の真相.…特に後者は,ここまでの因縁の1つを完全に終結させるもの.真実にはそれほどの力があります.

前半.妄執を昇華させて記憶喪失になる奴が出たり次々に女医さん送りになる奴が出たり,精神と肉体の両面に厳しい戦場に登場する新キャラクター.金髪をなびかせたオネエ言葉の耽美極まりない美青年,バロン森.今アストロドームにいる選手どもは球五を除いてどいつもこいつも正常ではないわけですが,これまた極端すぎる奴を呼び込んだもんだなぁ…(苦笑).スカウトマン球四郎の慧眼に感服したいところです.
花も咲かないどころか死臭漂う荒野に飛び込み,値がつけられないほどの生き方を模索するべく登場した華麗なる男の第一印象は…もちろん「気持ち悪い」で敵も味方も全員一致.汗血生臭いとビクトリーのベンチに香水を撒き散らしたり,余程自信があるのか公衆の面前で全裸を颯爽と披露しまくったりと大暴れのバロン役の役者根性が素晴らしい(笑).そんな新たなるチームメイトの爆走ぶりに,汗と血の中で生きている大門はさすがに閉口しています.
ただしあの球四郎が見込んだ男だけのことはあるので,バロンを舐めてはいけません.「投げてちょうだい!」とか言うし球一の球に対しては1テンポ遅れてバットを振ってくるしでズブの素人っぷりを恥ずかしげもなくさらしているけれど,球四郎が見込んでいるのは彼の野球理論.たとえアウトを取られても,たった3球でも球一の球が急激に軽くなっていくという弱点を的確に見抜いてしまうのだからたいしたもの.
その上,オネエ言葉と柔和な笑顔の裏にある真の姿は大門に勝るとも劣らぬ漢ぶり.大門以外の全員の武器バットを集めて一気に膝でへし折り,「ええかげん目ぇさまさんかい!」とビンタをぶちかます! 野球にかこつけて相手を潰す球四郎や大門の思想を,卓越した逸材のすることではないとばっさり否定.その気合の凄さによって,球四郎が集めたスペシャリストどもにまともな野球をさせてしまうのです.
バロンのショックはビクトリーに実に良く効き,得点を無視していた連中もまともなプレイで塁に出始めます.ただしバロンの思想を受け入れていない大門の得物は未だにヌンチャクのまま.達人である彼の「無意無感有耳音の極」の前には,球一の新作魔球・ファントム魔球すらも無意味のはず.…球三郎が周囲が見えなくても行動できるように,総帥である大門もまた目に頼らずとも音や気配だけで周囲を察することが可能.球一の新魔球の特徴は「消える」ことで,これは目の見えない相手には効果がないわけです.折角の新作で勝ちたい気持ちはわかるけれど,今回ばかりは相手が悪いのだと球三郎が必死で引きとめ….
その助言を受けて球一は苦悩の敬遠.逃げではなく駆け引きであり,勝利に徹してこそ一流の男なのは間違いないし,投げたら絶対打たれてその結果球一はものすごく落ち込んで役立たずになったに違いないんだからこれが正解.下手に相手の土俵に踏み込むことなくまとも野球をやることこそ,今は倒れた球五のやろうとしていたことのはず.とはいえ一試合完全燃焼はハリボテかと大門に愚弄されるわ仲間の球七には怒られるわとやっぱり散々.でも,その程度でここまでひどいことを言われたら,プロ野球選手は全員人間扱いされないと思うぞ(苦笑).
さてその頃,謎の矢文で呼び出されたシュウロは球四郎の祖父である峠会長と面会などしておりました.いくら探していた九人目の超人の情報がもらえるからって,試合中に選手を放り出してのこのこ出かける監督は本当にひどい奴だと思います(笑).最後の一人,火野球九郎はサンフランシスコにスポーツ留学中.右手の甲には超人の証であるボールの痣が確認され,その略歴を見る限り球四郎型のバランスの取れた超人のようです.
わざわざ峠会長がシュウロにこんな情報を流したのは,自分の孫である球四郎を打ち負かしてもらいたいから.愛人の子という生まれと超人の証である痣によって峠家の鼻つまみ者扱いされてきた球四郎.だから,超人に対する憎しみまでも計り知れない.…実際に超人だと判明したあとは,彼の卓越した能力だって超人だからと軽んじられるようなこともあったかもしれないな.
生まれも才能も並でなかったからこそ,真の仲間もライバルも得ることができなかった孫を救うためにアストロをぶつけたかった峠会長.でも,本当に球四郎のビクトリーを倒したいなら,試合中に敵軍の監督を呼び出すのはやめるべきだと思います(苦笑).案の定球一は球四郎に打たれて一挙に4点とか取られているし….
アストロドームでは球三郎がシャワールームで覚悟を決める.バロンに続いてまたも野郎の肌が画面一杯で,一体誰に対するサービスなんだろう(笑).最初から兄の心が収まるならば自分の命などどうでもよかったことを思い返して,真っ白い死装束をまとってバッターボックスへと向かおうとする球三郎.…初代球二のような犠牲は絶対に出したくはない.当然仲間は彼の死なんて望んでいないわけですが,球三郎はただの真剣勝負だと優しくたばかって戦場へと向かいます.

後半.バッターボックスに入った伊集院球三郎は,兄・伊集院大門と激突する覚悟を固めます.勝負は球四郎の球を球三郎が打った瞬間からはじまる…はずが,そうなる前にいきなり3塁から球二がホームベースに突っ込んできた! 狙っていたのは得点ではなく球三郎の足.初代を失った二代目は誰よりも仲間が大切で,だからこそ鬼となって球三郎の進塁を妨害したわけです.2度とあんな悲しい目に遭いたくないからこそ,優しい球二も味方を傷つける修羅へと変わり,球三郎をバットで打ち据えようとするほどの必死ぶり.
そんな球二の必死にさらにかぶせてくるのが球六! 球四郎に殴りこまれたことによって修羅の道に戻されてしまった彼ですが,割と速いうちからアストロに味方することを覚悟していたようで,ビクトリーのキーマンである大門のことを独自に調べていたようです.本家で球三郎とすれ違ったのは,ちょうど内偵を進めている最中だったわけですね.
球三郎がどれほど傷つけられても守り通し,球六が暴露する血塗られた真実とは…球三郎の父こそ先代総帥であり,大門は勘違いで自分の父を殺していたということ.知らないことは恐ろしい.真実はなんておぞましい.大門の世界は全て裏返り,しかもその証拠は自分が身につけた帯の中に納められていた.こんな近くで真実が常に寄り添っていただなんて,なんて滑稽なことだろう.息子の誕生を祝うメッセージを添えた父と大門の写真を入れた御守袋を,どんな気持ちで彼の帯の中に仕込んだのか.そして勘違いで自分の息子に殺されたあのとき,どんな気持ちを抱いたのだろうか…大門は絶叫します!
大門と球三郎,2人の父である伊集院千岩.彼は先代総帥を卑怯な手で殺めた後ろめたさから自分の子ではない球三郎を溺愛し,それが高じて後継者を決めたがゆえに全てが狂ってしまった….大門にとっては真実は猛毒.もはや戻れぬことをしてしまったからこそ,どんな言い訳もその毒を中和することはできない.実の父を手にかけた息子にはもはや戻るべき道はなく,妄執は逆向きに彼の心を押しつぶしていくのです.
全てを知ってなお正面からぶつかる兄と弟.大門はビクトリーの仲間どもを使った人間ナイヤガラで球三郎を止める所存.1塁を目指して進む球三郎に次々に炸裂するその道の一流選手たちの猛攻撃! しかし凄いのはそんな技を習得させた大門でも習得したビクトリーどもでも面白映像を平気な顔で繰り出す制作側でもなく,どれほど痛めつけられても兄への償いのためにあえて血みどろの道を行こうとする球三郎の精神.一試合完全燃焼のために兄の妄執をあえてその身に受けて,全てを昇華させる心積もりです!
球三郎のあまりにも苛烈な自己犠牲の姿勢は,ついに大門の頑な心を打ち壊します.「優しさなどでは,人は救えん.余計に相手を惨めにさせることもあるのだ」と語る彼の目には理性が戻っている.狂乱していてはわからない己の罪も,正気に戻れば誰より深く身に染みる.妄執の夢の中にいるうちは生きてくれると思ったからこそ,球三郎は兄に真実を伝えたくなかったのだけど,優しい夢は醒めて現実へ….次回に続きます.

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アストロ球団#14

「野球は人殺しの道具じゃないの巻」

終戦以来,死に場所を求めていた元特攻隊の氏家は,己のビーンボールに全精力を込め,アストロどもを次々に撃沈していく.戦中派が投げているとは思えないような恐ろしい球によって球七と球三郎は潰される.そして最後の1球は鮮やかな血の花を咲かせ,見事球一を仕留めた.球にこめられた青春の妄執はその一瞬で昇華して,抜け殻の氏家は全ての恨みを忘れて消えていくのだった.

名選手の妄執が痣となり青年たちの運命を狂わせていく「アストロ」.戦争がなければ今になって死にかかりながら野球をやらねばならない気の毒な超人たちが生まれることもなかったはずで,だから,戦争なんかやっちゃいけない.今回リタイアしていく氏家もまた,戦争の妄執に全てを狂わされた男.特攻隊の生き残りとして死に場所を探した彼の旅は,不思議な明るさと切なさの中で終わっていきます.…野球と戦争.競いあうことと殺し合うことは違うけれど,良く似ている.

前半.華々しい死に場所を求める氏家の妄執はついにアストロ球団への特攻開始.まずは球八.穏やかだが強い心で安易に動揺しがちな仲間たちを支えるアストロの精神的支柱・母艦に対し,足にめり込む真っ赤なビーンボールを放つ.当たったところは焼け爛れて骨まで見えるってんだから,常人が何球も投げられるような球ではありません.
野球のルールの中で合法的にアストロを潰す.これぞデスマッチの真髄であり,氏家はその忠実な体現者でもあります.華々しい舞台の上で潰れることをうらやましがる死に損ないの未練は深く,何も知らない彼らの子の世代に代償を求めるわけです.…己の無念を後の世代に無理やり押し付けるのは沢村と一緒なんですが,戦争の未練を球場で満たそうとするのはあまりにも場違いに過ぎる.
戦中派の青春の上に球一たちの青春がある.けれどそんな花の下の闇を知らない無邪気さゆえに,氏家は球一たちを愛して憎む.死に損ないの命を凝縮した平和に対する恋慕と恨みの籠ったビーンボールは,アストロの切込隊長・駆逐艦球七を仕留めます.
もちろんデットボールなので塁には出られても,骨が剥き出しになる怪我と1塁分の進塁の価値を比べるとアストロの支払いはあまりに高い.けれど死出の旅に出た氏家を無粋な乱闘で止めるものもなく,球四郎に戒名までも準備された神風は球三郎を撃沈.ただし投げる氏家の気力も体力も1球ごとにえぐり取られ,ついに残る力はただ1球を投げ切るのみ.それは,燃料も片道分の黄昏の旅路.
球四郎が餞として与えた戒名は奇妙院幻烈居士.それが書かれた位牌を額に,氏家は念願のラストステージへ.死に場所を求めてここまでビーンボールを投げ続けてきたとしたら実に迷惑極まりない投手に違いないものの,それでもこれこそが彼自身が貫いてしまった道.そんな道が切れる場所で球四郎と最後の握手をかわし,巨艦・球一に特攻をかける! 「さらばじゃー!」と絶叫する氏家が幻視するのはきっとあの戦場…彼にとっては現実は幻,幻こそ真実.自分自身が散るはずだった空を海を夢想して,幻の如き現実を貫き打ち砕く! ついに社会に適応できなかった哀れな男が投げる1球は,血濡られた美しい花を咲かせます.
ボールの縫い目を爪で切り,鼻血を垂らしながら投球に入る.限界を越えた血は老いた体を突き破って頭から一気に噴出! …凄くシリアスな画面なのに,映像が暴力的に面白くて涙が出そうだ(苦笑).球一はナマクラ球をホームランへと変えたはいいけれどこれはデスマッチ.真の凶器は見事球一の首筋を切って飛び,全てを放出した氏家は倒れる.見事に球一を仕留めた氏家の髪は真っ白に.あの一瞬に,持てる限りの妄執と熱と力を注ぎ込んで失ったわけです.
妄執とともに命を投げた氏家はかろうじて生きてはいたものの,全てを放出しきったことによって情熱のみならず記憶までも失ってしまいました.あれほどまでぎらぎらと輝いていた刀はただの棒切れにかわり,戦場は幻へ戻る.不思議そうに周囲を見回す氏家の様子が淡々としているのが,血のしたたるレバーがいきなり干物に変わってしまったかのようでひどく面白い.ちなみに氏家の最後の魔球の秘密はやはり球の皮.薄い皮が油断した球一の首をかき切ったわけです.
てなわけで早速氏家の特攻によって傷だらけになったアストロどもですが,さすが本拠地が完成しただけのことはあり,スタッフに女医さんが追加されました! 野郎だらけのクレイジーな世界に華麗に降臨した天使様なので全員で崇め奉るべきだと思うんですが,野球バカの超人たちにはこの有難味はわからないんだろうなぁ…(苦笑).

後半.アストロ抹殺さえ実現できれば手段は問わない球四郎は,彼らの結束が強まって叩きにくくなる前に全員を仕留めるつもり.抜け殻となって退場した氏家に代わってマウンドに上がり,早速球五を血祭りに上げる! …あの球四郎が仕掛けてくるんだから100パーセント罠だと理解していても,シュウロが球五に願った通りにいつでもまとも野球をしようとする真面目さが完全に裏目に出ています.
サードから殺人罪にならない程度のタイミングで球を渡されたあと,球五を襲う大門,たかが1塁がここまで遠くかつ痛いものだとは…というかもう完璧に守備の範疇を越えている陣流拳法の炸裂ぶり.よりによってアストロのホームゲームだってのに,審判の目は一体どんな節穴なんでしょうか.
いきなり肋骨を折られて内臓に刺さって要するに戦闘不能の球五.無茶すんなって怒ったはずが重体患者を運び込まれる天使こと女医さんの心労は尽きないどころかもっと深刻になるばかり.しかもこの先はビクトリーも負傷者が出てくるから,先生自身が一試合完全燃焼しなきゃやっていけない状況です.
仲間を傷つけられた球七は猛り沸騰し,それを同じくかなり沸きやすいはずの球一が止める.さすがにやや我慢を覚えてきたみたいですね.プレイでやられたらプレイでやりかえすのは正しいけれど,ビクトリーのプレイは野球ではない.だから,どうしたって我慢できないのが人間というものであり,球七は言うに及ばず,球三郎や球六や球二までもが猛ります.
球六は怒りにまかせてカミソリの竜へと戻り,殺人X打法の封印解除.凶悪なピッチャー返しからチームリーダーである球四郎を守るためにダイナマイト拳が盾となったのはいいものの,その球でいきなりボクサーの商売道具がぶっこわれるのがやりきれない.いくら自信があっても,拳と硬球じゃ勝負にならないだろ(苦笑).しかも拳があれほどまでに慕っていた球四郎ときたら「ほっちょけ」とあまりにも冷淡.全ての選手は球四郎の所有物であり手駒であって,部下ですらないビクトリーには,まともなチームワークは存在しません.「初の犠牲者」という野球中継では破格の表現を受けつつダイナマイト拳が退場.
続く球八は球四郎のスカイラブを見事打ち返して球六を帰す.けれど足の怪我によってゆっくりしか進めない彼自身を襲う敵の「守備」の雨あられ.けれど、ルールから逸脱した超攻撃的なビクトリーの守備どもを全てふっ飛ばし!「もうたくさんじゃこんなとち狂った野球地獄は!」と視聴者が思わず深くうなずいてしまいそうな名言を吐く球八!
球八もビーンボールで大怪我をしているし,大事な兄も傷つけられている.だからと言って怒って相手を傷つけるのはただの野蛮な戦いであり,野球ではない.沢村や氏家の妄執を生んだ戦争と同じようなものを超人たちがこの球場で演じるわけにはいかないのです.「俺たちの野球道は,こんなもんじゃなかったはずだ!」…確かにビクトリーのデスマッチは野球ではないけれど,アストロの野球道も野球かどうかはかなり怪しいんじゃないか?とか思いつつ,次回に続きます.

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アストロ球団#13

「あの日の悪夢はまだここにあるの巻」

1973年7月23日,巨人軍への挑戦権をかけた運命の一戦がついにはじまった.アストロ球団は球六を加えた7人で,球四郎率いるビクトリー球団に挑む.1回の表は球一が傷つけた掌で会得した脅威の変化球によってビクトリーを抑える.その裏,ビクトリーのピッチャーは氏家.途方もない前進守備や大門の殺気で不穏なグラウンドに上る主将の球一.氏家は渾身のピッチングで球一の体を狙うが,球三郎の過酷な特訓で鍛えられていた球一は倒れない.続く球五の長打によって1点を先制したアストロ.しかしビクトリーから感じられる殺気はますます強まるばかり.球六はその殺気の中心である大門に,かつての自分と同じようなおびえを感じ取るのだった.

前の戦いでも既に大概無茶苦茶だったものの,今回の試合はそれに輪をかけておかしくなっていく「アストロ」.ロッテ戦と大きく違うのはビクトリーが球四郎率いる色モノ軍団であること.野球経験者がほとんどいない急造チームが得点関係なしのデスマッチを仕掛けてくる…って,敵が仕掛けてくるのはもはや野球の試合ですらないわけで.野球というルールの中でいかに合法的にアストロ超人どもを殺していくか,それしか考えていない球四郎が起用した先発が凄い.戦争によって生まれた沢村の妄執の子である球一たちに,同じく戦争によって生まれた妄執が襲いかかります.

前半.ついに始まる運命の1973年7月23日.オールスター戦を延期させるほどの社会的な影響力を持ったデスマッチを見たい人々で球場は溢れんばかり.アストロとビクトリーの応援合戦も華々しく,明日はきっとオールスター戦に出るはずのスーパースターたちの姿まで見られるほど.日本中がこのアストロドームに注目し,超人野球の始まりを心躍らせ待ち構えています! …ただし,この先に待つのは実に凄惨な身を削る死合で,観客たちは恐らくそのことをまったく予感していないはずです.
1回の表.ビクトリーの攻撃でピッチャーは球一.その掌には自ら傷つけた深い傷が残り,投げる球はその溝の効果によって変幻自在の変化を見せる! なぜ手に溝があるとそんな球が投げられるのか,理論はよくわかんないんだけど(笑)さすがは超人,暴投かと思ったら直角に曲がってミットに収まるようなとんでもない変化を見せております.しかも変化は水平だけでなく垂直だってOK.こんな七色の変化球,既に巨人軍では攻略不可能じゃなかろうか.
凄い変化球で早速一人舞台を作り出した球一.しかし球四郎は余裕綽綽.なんたって彼の目的は試合に勝つことではないから,無理に攻撃し得点する必要すらないわけです.そしてそんな敵の狙いをいち早く察知して欲しい監督のシュウロときたら,試合中に飛んできた矢文に呼ばれてのこのこ退場.…またか(苦笑)! 超人たちを集めた責任者なんだから選手をほっぽり出して持ち場を離れないでいただきたい.前回はそれが間接的な要因となって人が死んでるわけだし!
球七が首尾よく2塁を盗んで続く打者は二代目球二.ビクトリーと来たら隙を見せればボールを掴んでバッターを殴り倒す気満々の超前進守備っぷり.打球にぶち当たることを恐れないあたりが怖い.さらに続くはこの闘いの主役でもある球三郎.花も舞い散る盲目の美青年はバッターボックスに立つものの,ファーストの兄の色濃い気配に呑まれている.音と気配で周囲の状況を敏感に感じる球三郎には目の見えないハンデはほぼないものの,それでも殺気に満ちた兄と交錯するのは怖い.大門は蹴りで球三郎を狙い,球三郎はそれをバットで食い止め…兄弟の諍いは明らかに兄が強い.
そして続くは真打,アストロの要・球一! …この顔を待っていたとビクトリーのピッチャーは膝をついて泣く.真っ向勝負の男の中の男を前に,好敵手に引き合わせてくれた球四郎に感謝する氏家の態度がおかしい.さらにビクトリーの全員が南無阿弥陀仏を唱えるあたりもおかしい.静かに狂って殺る気満々の氏家は案の定全身全霊のスクリューボールを球一の体目がけて放つ! …別に得点はしなくてもいいのかもしれないけれど,全力でデッドボールを狙っていくのはルール的にはOKなのか?
投げた手が地にめり込むような,氏家の凶悪なビーンボールをその背に受けて…しかし球一は球三郎と必死でこなした例のハードなプレイの成果で健在! 球一が敵ピッチャーからその命を狙われるのも,そんな命の危機を無茶苦茶な特訓の成果で跳ね返すのも全て陣流の因縁あればこそ.大門と球三郎の呪われた兄弟喧嘩は,既にビクトリーとアストロに根づいて包み込み縛り付けているわけです.
ビーンボール魔人の氏家は,以前独立リーグで血塗られたスクリューボールの投げ手としてその名を知られた男.しかし彼は今に比べるとずっと老け込むのが早かったはずの70年代の人間としては,想像できないほどに姿が若い….
そんな反則魔人の前に立つのが毎度ながら地味な球五.しかし今回は重力室での特訓の日々と,父親的存在の長嶋の与える二世称号という仰々しいお飾りが埋もれがちな彼を救う,はず! 重力室での危険な特訓の成果として,ここ一番のこのときに,妙に壮大な背景とともに待望のワープ打法が炸裂だ! …予告で見て爆笑した画なんだけど,2回目でもやっぱり面白いなぁ(苦笑).こうしてチャンスに強いところを示した球五ではあるものの,折角の見せ場はあっという間に球三郎に奪われてしまう.そんなツメの甘さがやっぱり球五だ.
3塁を蹴ったところで球三郎は兄と向かい合う.右行って左行って最後には上に飛ぶというやたら息の合ったお見合いぶりはさすがは兄弟と言うべきなのか(苦笑).結果としてはここで球三郎はアウトとなるわけですが,あの大門に対して正面から喧嘩を売れたのは意外と大きな成果ではないかと.殺気に萎縮したままではそのままなぶり殺しにされるのがオチ.恐怖を振り切ることができなければ,兄越えはできないはず.
そして今回は敵だけでなく味方からも監視されることになった人殺しの球六.彼が見せる生き様ことアンドロメダ大星雲打法もまた,前回の予告で爆笑を誘った素敵スケールの映像なわけですが(笑)その打球の銀河のごときプレッシャーすらも胸で受け止めアウトにしちゃう大門の胸板恐るべし.敵よりも先に味方に漢を見せなければならない球六も,さすがに最初から活躍することはできない.
しかし実は球三郎と大門の兄弟ゲンカの鍵となるのがこの男.球四郎の誘いを断った彼が大門の脅えをよく嗅ぎ取っているのは,球六が大門の置かれた状況を正確に理解していればこそ.似ていると知っているからこそ心を読み取れる球六は,まさにもうひとりの大門.

後半.ビクトリーの打順は主役,伊集院大門から.ヌンチャクを持ってバッターボックスに入る彼の狙いはもちろん球三郎.どんな野放図な軌道もホームベースを通るものだと狙い打った打球は球三郎の顔面を狙い,しかし球三郎はこれをのけぞって避け掌底で打ち上げピッチャーに戻す.けれど,デスマッチでは打球などただの陽動,本命であるヌンチャクに狙われた球三郎をその身でかばってくれたのは…球六だ!
自分が消した命の代償に,その命が守ろうとしたものをその体で救う.これこそが球六の歩む贖罪の道.もはや戻らない過去を贖うために選んだのは,木ではなく己の身を削ること.その機会を早速与えてくれた大門に礼をいいたいくらいのええかっこしいである球六の痛々しい姿に,あの2代目球二すらも心を動かされます.アストロの結束はまさに一秒ごとに強まり深まっていくのです.
そんな結束ぶりを警戒した球四郎は,ムショ帰りの狂った風に命を下します.不自然なほどに若々しくぎらつく氏家は,ビクトリー全員の敬礼を受けて最期の旅路へと出撃! 既に消えていなければならない戦中の妄執の塊は,その妄執の子であるアストロに対して何をやらかそうと言うのか.死に花を咲かせる氏家の最期の出撃の首尾はいかに! すいません予告でまた吹きました(笑)! 珍しく綺麗どころの出てくる,次回に続きます!

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アストロ球団#12

「因縁と生命を球遊びに乗せての巻」

アストロ球団とビクトリー球団の争いは,同時に球三郎と大門の宿命の対決でもあった.球三郎のみが父の実子であり,それゆえに跡目争いで敗北したと思った兄は父を殺した.自分自身は育ての父に殺された初代総帥の子であると知ったがゆえの凶行だった.兄に絶縁されて家を追い出され,そして今がある球三郎.彼は仲間を守るため,逃げることはできない.
決戦までの3カ月は両軍ともに激しい特訓の日々となった.大門は球四郎の思惑通りにビクトリー球団を殺人部隊に鍛え上げ,アストロ球団はそれぞれの考える激しい特訓に血と汗を流す.運命の日は急激に近づきつつあった.

決戦を前に熱く激しく高ぶる「アストロ」.前回の球三郎の凄い特訓に代表されるイキっぷりは,仲間たちを更なる特訓の悪路へと導きます.それほどまでに陣流の血と総帥の地位を巡る争いは濃くて激しく,また切ない.その上過去には真実が眠ったまま…とか書いているとつい癖で総帥ではなく宗家とか書きそうになってしまうわけですが,実際に何も知らないのは優しい球三郎ではなくぶちぎれっぱなしの大門の方なわけです.

前半は球三郎の回想の続きからスタート.大切な超人仲間を守るため,2度と袖を通したくなかった拳法着に再び身を包む球三郎.彼が思い返すのは,自分が家を追われるまでに起きたこと.…全てが変わったのは父が自分を陣流の後継者として指名したあの日.強い兄を差し置いてなぜ自分が後継者として指名されたのか.父は球三郎が総帥となるのは定めと言うけれど,そんな定めは球三郎だけでなく,大門にだって納得できるわけがない.だからこそ起きたあの凶行…兄は父をその手にかけた.
今際の際の父は球三郎に,兄を恨むな,全ては父の身から出た錆,何も知らないお前には不憫なことをしたと詫びて絶命.その言葉の意味もわからないまま,肉親を目の前で失ってしまった球三郎を大門は笑う.父は泥棒猫.初代総帥を闇討ちで殺した卑怯者.そして自分こそ,その初代総帥の子! 球三郎とは血が繋がっていないどころか,宿命の敵同士!
力は遥かに劣る球三郎の父は,大門の父である初代総帥を闇討ちで殺した,と言い切る大門.球三郎が次期総帥に選ばれたことこそ,泥棒猫の本当の子である証…とは言うけれど,これは果たして真実なのだろうか.狂乱する大門は敵である伊集院家を根絶やしにしてから陣大門に戻ると宣言し,幼い頃はあれほど大切にしていた弟に襲いかかります!
一度拳を交えれば血縁無視ってのが陣流の掟.そんな陣流を極めた大門はそこに在るはずなのに目には見えず,球三郎は戸惑うしかない.特に殺す気の有無が明らかに違う2人の気合の差はあまりに大きく,今のままでは兄の宣言通りに球三郎は嬲り殺しになるばかり….このままではいきなり未来を消されそうな球三郎が生き残る術はどこにあるのか.そして一応野球ドラマのはずなのにこんな格闘ドラマでいいのか.
兄相手には本気になれない球三郎と,抱えた怒りゆえに本気を通り越してぶちぎれている大門.もはや球三郎の命運もここまでか,と思われたそのとき,2人の上に落雷で大木が倒れてくる.大門が手を下さずとも倒れる幹が球三郎に引導を渡す…はずが,なぜだか球三郎をかばってしまうのが,人の心の不思議さ,面白さ.
大門を駆り立てたのは過去の兄としての記憶.記憶の中のかばうべき大切なものを反射的にかばって身代わりとなった大門.最後の最後で彼を襲ったフラッシュバックが彼の手足を勝手に突き動かしたわけです.もちろんそんな行動を取るだなんて,大門自身が一番予測できなかったに違いない.改めて弟には絶縁を申し付け,しかしその顔には彼が兄以外の何物でもないことを示すような大きな傷が走った大門.
こうして家を追われた球三郎は,将来の美貌と才能でレーサーとして大成したあと,一度は死んだところをヘリから地上に落とされて(笑)蘇った上にアストロ球団に入ったわけです.追われたときにはなかったものを,今の球三郎は守らねばならない.沢村の妄執によって刻まれた痣によって引き寄せられた仲間どものためにも,その命を盾とも変える所存です.
てなわけで兄弟の因縁をも巻き込んだアストロ対ビクトリーの戦いは迫る.ビクトリー側では苛酷な特訓がついに仕上がり.鬼軍曹こと大門のおかげで見事に鍛え上げられた野良犬たちは,不敵な表情は以前のままですが見事に統率されています.ちなみに三兄弟はアフロから坊主に変わったんですが,慣れない坊主ではちょっとした衝撃でも頭が切れて血が出そうで怖いや(苦笑).プレイヤー兼監督の球四郎に見せた特訓の成果は,打球を軽業的な守備によって素早く1塁に戻し,そこにやってくる打者を大門がその腕で仕留める,という連携を暗示するもの.アストロは,恐ろしい体術の使い手である大門が守る1塁を突破することはできるのか.
もちろんアストロもアストロで無茶に無茶を重ねています.危険な重力室で特訓する球五,球七と球八は火山で命を削り,さらに球三郎の凄いプレイこと過酷な特訓を生き抜いた球一は,球二に止められつつも新たな試練に挑む.丸太特訓以来,球一役の雰囲気が段違いで鬼気迫るものになっているのが良い.あの絶叫で役者が何かを掴んだ感があるなぁ….勝つために必要ならばどんなことにも怯まない.これもまた血塗られたアストロ魂.その運命ゆえに必死で止める球二の言うことを聞かずに回転する電動ドリルをその手で掴んで叫ぶ球一.ビクトリーを倒すには,ここまでしなきゃならないのか.

後半.ついに間近に迫るデスマッチ.ここまでで腹一杯になるほど因縁と苦しみを見せつけられたのでまずは心温まるものを.アストロ御用達の定食屋には,選手のかわりにデスマッチ内野席への招待券が届きました! なんせ彼らの食生活は実質的にこの小さな店が支えてきたわけで,その代償をプラチナチケットで支払うのは当然…というか,主催者ならこの手のチケットは容易に手に入るだろうから,ものすごく安く上がっているような気がするんだけど(苦笑)当人達が喜んでいるならまあいいか.
ついに完成した広い西武…ではなくアストロドームに佇むシュウロ.彼が時間を財力を注ぎ込んで作り上げた美しい夢の舞台に,これからはここを家とするはずの6人の超人たちも登場.全員特訓のおかげでぼろぼろになってますが,誰一人逃げ出すことも,命を落とすこともなくやってきた! ユニフォームも正式なものへと改められるわけですが,そのシーンにユニフォームの販売宣伝テロップを乗せてくる局の商売根性が大好きです(笑).
球一にはこのアストロを率いる将として,天駆ける獅子の如き活躍を.2代目球二にはどんなときにも諦めずに奇跡を起こす粘り強さを.球三郎は死という絶望から命という希望を拾ったように,試合の中でも希望を求めることを.球五には,絶対野球の範疇を越えるに違いない殺伐とした試合に,真っ当な心地いい風を吹き込むことを.球七にはアストロ1の火の玉としてアストロガッツを.球八にはその爆発的な底力で勝利への架け橋となることを.シュウロは選手たちそれぞれに期待するわけです.さらにここに居たのは6人ではない.残る1人としてその姿を現したのは,放浪の末にここに辿りついたカミソリの竜!
そりゃもちろんアストロ超人たちにとっては彼は初代球二を殺した相手.特にその最後を看取って魂を受け継いだ2代目球二にとっては許せるはずもない.球七球八も同じ気持ち.…しかし,そんな彼が心底苦しんだことを知っている球三郎や球五は彼を受け入れたい.アストロの総意は2つに割れ,残った球一が全てを決めることに.仲間たちの怒りも,敵を受け入れようとする心も,そして殺した苦しみをも理解した上で,ぶつかりあう心を1つに束ねて導くことが将の仕事なら,まさにこれがその最初の試練.
竜は,球二を殺した事実と魂を背負って血塗られた道を歩む覚悟を決めている.敵だけでなく味方にすら疑われても野球だか格闘技だか死合だかわからん戦場に立つことこそ,竜の選んだ贖罪の道.ボールの痣に賭けてそこを歩むのだと決めた彼を,球一はチームの一員として受け入れます.こうしてアストロ球団はついに7人に! …専用球場を持って巨人軍に挑もうとするチームの癖にまだ9人揃っていないあたりがやはり何とも言えませんが(苦笑)ともかく1人増えただけでも素晴らしい!

7月23日.オールスター戦の真裏で大一番がついにはじまる.どう見ても凶器なバットやらヘルメットやらを揃えてくるビクトリー球団と,威風堂々真っ直ぐに立つアストロ球団.ビクトリーを率いる球四郎を含め,8人の超人と奇想天外なスペシャリストどもが繰り広げる苛烈な戦いは,一体画面にどんな凄いものを映し出すんでしょうか.しかもビクトリーには刑務所帰りの最後の秘密兵器が存在.彼はデスマッチ野球の中でどんな役割を果たすのか! …すいません予告映像見た段階で吹きました! 次回に続きます!

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アストロ球団#11

「常軌を逸した超人プレイの巻」

アストロに先立って巨人と試合する権利を手にしたビクトリー球団.シュウロは来る7月23日にビクトリーと戦い,勝った際には球四郎をアストロ球団に入団させ,負ければアストロ消滅という約束をする.
実家に戻った球三郎は,兄・大門と再会する.自分を守ってくれた幼い思い出の片鱗もなく,ビクトリー球団のデスマッチ野球で弟もろともアストロを潰す気の兄.もはや自分の身1つではアストロの仲間たちを守れないと思い知った球三郎が家を去る間際,あの球六…カミソリの竜に出会う.

ついにはじまるデスマッチの壮絶なる前哨戦がもう無茶な「アストロ」.球四郎という稀代の策士のところに集った荒くれどもに,デスマッチのための殺人技を仕込む者こそ球三郎の兄である大門.美少年の兄は荒ぶる殺人機械.その能力は確かに凄いけど,球四郎にすらもうちょっと丸みがほしいと言わせるほどの尖りっぷり.この大門のイキっぷり,言い換えればあまりの一杯一杯感が,同程度の能力を持ちながらもずっと遊びのある球四郎の人間的な魅力をより引き立てます.でも,あんな特訓やらかすってことは,実は中身は良く似ているのかもしれないなぁ….

前半.いきなり球四郎率いるビクトリーに挑戦権を奪われた上に徹底した挑発を受けたので,峠会長の元に自ら談判に行ったシュウロ.穏やかのようでひどく尖った会見に乱入するのは会長の孫であり今回の絵を描いた球四郎.なんたって知らないうちに勝ったら球四郎さんを僕にくださいみたいな状況になっているので,人の好みを無視して商品にされた球四郎は介入せざるを得ないわけです.
シュウロが決めた決戦の日は,3ヶ月後の7月23日.オールスター戦にぶつける所存です.場所はもちろん新築のアストロ球場.賞品は球四郎と,アストロ球団の消滅.…あれ? 巨人との対戦権は?
その頃,次の戦いが自分と深く関わることを知った球三郎は,ひとりで陣流拳法総本山,自分の実家に戻っていました.巨大な門に飲み込まれた先には.見えずとも過去と同じ懐かしい雰囲気が,…兄と練習した幼い日々.父に叱られる自分をその身でかばってくれた優しい兄.過酷な後継者レースに巻き込まれた2人でも,確かにあの時は心が通じ合っていた.兄は弱い自分を,世界で一番強くなれと励ましてくれたけれど.
それは既に幻で過去の話.今の兄はもはや弱い者をいたわってくれたあの人ではない….見開かれた眼.額から大きな傷の走る異様な容貌で睨むのは,自分と同じビクトリー球団に引き込まれた荒くれ連中.それぞれに得物を持った荒くれたちは襲いかかってくるものの,陣流を会得した者に敵うわけもない.同じチームの連中に刻み込むのは,どんな状況でも標的を殺すデスマッチ野球の基礎.容赦なく,完膚無きまでに弱者を叩きのめすこと.…球三郎が感じた兄・大門の気配は,鬼神の如く荒ぶっています.
見えぬ球三郎が気配だけで兄を見ていたのと同じく,大門もまた球三郎の存在を見もせずに感じていました.柔和な弟と強面の兄は,兄弟とは思えないほどに似ていない.自分の命を差し出してでもアストロの仲間たちを守りたい弟と,弟もろともアストロ球団をぶっ潰すつもりの兄の意思が通じ合うことはない.…なんだってここまで兄弟仲がこじれたのか,というのが,ビクトリー球団戦での大きな鍵となり,同時に壮絶な見せ場の原因をつくります.
もはや兄の翻意は期待できないと感じた球三郎は,道連れ覚悟の戦いを挑むことに.いきなり始まる因縁の兄弟拳法対決,超人としての心眼がなければここまで無茶な勝負を挑むことはできないでしょう.兄と弟,ビクトリーとアストロ,見える者と見えない者がぶつかりあうまさにそのとき! 救いの女神,あるいは雰囲気をわきまえない無粋な女性がその対決に割って入ります.
今や総帥の地位につきこの家の主人である大門と,家と陣流拳法を捨てて外の世界へと逃げ出した球三郎.そして球三郎が未だ隠している2人の間の真実.…言わねば大門に永遠に恨まれる秘密ならば,言えば大門も間違いなく球三郎を許すに違いないということか.彼が隠しているのは,それほどまでに大門に大きな衝撃を与える爆弾のはず.結局勝負は水入りで,大門は弟が苦しむ様が楽しくてたまらない.
アストロを傷つければ弟が苦しむ.それを再認識したであろう大門の特訓は凄まじく,彼を引き込んだ球四郎にすら人間としての丸みが欲しいと感じてしまうほど.球四郎の分析は実に当を得ていて,スーパースターには純粋な勝負強さ以上にファンを惹きつけるに相応しい人格が求められます.そんな意味では,人間味溢れすぎで憎めないアストロ球団の方がずっとスター性は強い.しかしこの問題すら自分の演出でなんとかできると判断する球四郎恐るべし.さすがは超人.何をやらせたってパーフェクト!
結局何も出来ずに戻ることになった球三郎は,実家の門の前でカミソリの竜こと球六に出会います.髪の寝たままの球六に仲間になって欲しいと言い寄るものの,未だに球四郎に乱された心が癒えていない球六はまずはおことわり.その手で人を殺してしまったことを未だに整理できていない彼には,もう少しだけ時間が必要…けれど,人の生き死にを背負っているのは,球六だけではありません.今は別れた球三郎の背にも,ずっと前から重い荷物が負わされているのです.

後半.特訓のおかげでぼろぼろの超人どもはいつもの食堂でたらふく食事.ご主人達のご好意がうれしいというか,シュウロは選手の食事という非常に重要なことを野放しにするなというか…(苦笑).そこに戻ってきたのが鬼を見てきた球三郎.細かい説明はアストロらしく全部ぶっとばし,いきなり特訓を申し出る! 球一の命を守るために球一の命を危険にさらすようなとんでもない特訓をしなきゃならないらしいってのはどうにも矛盾.とはいえ兄・大門の鬼神ぶりはまともではないから,球三郎の特訓もまともな領域には留まれない.
球四郎が企画し大門が教え込むデスマッチ野球は,野球のようで野球ではなく,アストロを抹殺するための攻撃手段.…古今の行き過ぎたスポーツ漫画・アニメだとやってる最中にもはやスポーツとは言えないものに変わるってのはよくあることですが,本作の場合は試合する前から普通の野球をやることを放棄しちゃっているのが無茶苦茶というか,ずるいというか…(苦笑).何はともあれ大門が絡んでいるということは流血は避けられないし,どうも球六までビクトリーに行っちゃったっぽいという報告を受けて球一発奮.勝つため…というよりは生き残るために過酷過ぎるプレイに挑戦!
特撮ヒーローらしく採石場で特訓する球一以外の超人ども.ただのノックではなくて,ホームというよりはキャッチャー目指して突っ込んでくる敵にいかに耐えるかを特訓している2代目球二.ただ,この段階では,まさか敵のヘルメットやバットがあんなことになっているとは思っていないわけですが…,ついこの間まで裏方しかやってなかった彼にとっては,少なくとも他の仲間程度のパワーを身に着けるのは何より重要.
そんな一同の耳に聞こえてくるのが,森から響く球一のすごい悲鳴! 球三郎に連れて行かれた彼が一体どんな目に遭っているのかを見に行った仲間達が見てしまったのは,まさに特訓の範疇を超えたとんでもない光景.手足をくくり逃げられない状態にして,球三郎が球一の背を釣鐘がわりに宙吊りのでかい丸太を打ち込んでおりました! 既にやりすぎのプレイと化しているこの光景に,さすがの仲間も呑まれてしまいます.
いやもう普通に死ぬだろとしか言いようのないハードすぎるプレイ.そりゃ仲間思いの球七は球三郎に抗議しようとするものの,球三郎本人もやりたくてやってるわけじゃないのがよくわかるから文句も言えない.仕方なく球七は球一を茶化して元気づけようとするけれど…球一に至っては痛みで意識が飛んでおります.こんなに痛々しくてはどうしたって茶化せるわけもなく,仕方なく球一の血をぬぐってやる球七と,「…すまねえ…」と蚊の鳴くような声で答える球一.たかが野球の特訓なのに,なんでこんなことに!
球三郎曰く,背中の8つの急所を鍛えるためには丸太ぶつけしかないらしく,球七は自分が邪魔してしまったことを痛感.…でも,本当にこれしかないのかどうかは,謎.「お前達を見てると,つくづく男の戦いには際限がないことを思い知らされるぜ!」という球七の言葉は,そのまま視聴者の感想そのものでもあります.お前らの特訓は絶対に行きすぎなのでもうちょっと際限を持ってくれ(苦笑).
ビクトリー戦に際して球一と球三郎にかかった重みは並ではない.だからこそ.仲間達はその苦しみを少しでも軽くするべく,自分たちをさらに鍛え上げることを決断.球七球八は兄弟で旅立ち,球二は女房役として球一のプレイに付き合い,そして道を見失った球五は親とも慕う長島のところに赴いて,将来の敵から良い助言をもらいます.相手がどうだろうと自分が持ちうる限りの力を発揮しろ,正道を歩めという長島のすがすがしい教えに従って己の野球道に戻った球五は,格闘アニメじゃないけれど,バンアレン特訓室・高重力場での特訓へ!…その特訓装置のどこが正道なのかは,あえて追求しないであげたい(苦笑).
そしてこの戦いの業を背負った球三郎.彼の苦悩の意味を真の意味で理解するものは仲間にはおらず,彼自身もそれを共有するつもりもなく.だからこそ,球三郎は兄の手から仲間達を守るために,ひとりで鬼にならねばなりません.敵・ビクトリーを率いる将は,超人の証であるボールの痣を「烙印」とうそぶく球四郎.彼が超人としての宿命にここまで逆らうのは一体なぜなのか….そして,さらに明らかになる因縁ともっと溢れる血! 次回に続きます.

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アストロ球団#10

「スカウトマン球四郎大活躍の巻」

巨人軍への挑戦権をかけてアストロ球団に喧嘩を売ってきた,超人・峠球四郎率いるビクトリー球団.あらゆる分野で卓越した能力を見せる球四郎は,野球以外の分野で一流の選手を自らスカウトする.ボクシング,プロレス,テニス,ボーリング,ローラースケートといった畑違いの一流選手を,球四郎が磨き上げて一流の野球選手に仕上げようというのだ.球四郎の作り上げる異形のビクトリー球団.そこには球三郎との因縁の深い人物の影もあった.

一応野球ドラマなんだけど2戦目にして野球の範疇を越えてきた「アストロ」.ロッテ戦もたいがい凄かったんですけども,敵側で野球選手じゃないのはモンスタージョー程度じゃないですか.しかし今回球四郎が揃えてくるのは別スポーツの野獣なスペシャリストども.現在のアストロに負けることはたった6人に勝てなかったという評価と屈辱を敵に与えるわけですが,ビクトリー球団は「球四郎以外野球は素人」というとんでもない布陣.アストロにとってはビクトリーは破って当たり前,負ければ素人に負けたという評価を下されかねない.これは実写で同じ人類が演じることで,原作よりもやや際立って見えるポイントです.

長い前半.球団旗燃やされるわテレビで日本中に悪口を放映されるわと球四郎に挑発されまくったアストロ球団.ここまでされたらたとえ罠でも,アストロ球団は踏み込まないわけにはいきません.峠会長の孫である球四郎がここまでやってのけるのは,巨人軍を筆頭とした現行のプロ野球のシステムを守るためなのか,超人の怒りを買うことによって,さらに自分自身の能力を高めようという自分勝手な魂胆なのか.
さて,ときどき出てくる食堂はすっかりアストロ球団のなごみ所になってしまった模様.ロッテ戦は日本中にテレビ中継されたんだからもっとファンが詰め掛けてもおかしくない気はするけれど,あの程度ではわずかにファンが増える程度なくらい,当時の巨人軍の人気ってのは絶大なのかも.てなわけでファンに取り囲まれることもないアストロ球団の面々は,峠球四郎の出自について新聞で知ります.大財閥,峠コンツェルンの峠会長の孫で,灘の主席.しかも運動部掛け持ちで全部全国大会出場.財力と知力と運動能力を全て兼ね備えた彼は,その名の通り四番に相応しい超人.そんな完璧超人が集めてくる選手度もまた,スペシャルです.
ジムに金がないのでタイトルマッチにすら出られないボクサー・ダイナマイト拳.このままでは飼い殺しだと言い切るのがスカウトマン球四郎.いきなり来て愚弄する彼を拳は殴るものの,一流のボクサーのパンチを受けても立ち上がるスカウトマン球四郎.その上いきなり短刀を出して切りかかるスカウトマン球四郎! それは絶対スカウト行為じゃねえ(苦笑)! 本気で切りつける球四郎は一流のボクサーを壁際まで追い詰め,その強さを彼の身に刻みつけた上,相応しい移籍金を軽く支払って拳をお買い上げ.今後のスカウト活動が思いやられます….
次にスカウトマン球四郎とその子分の拳が訪れたのは新日の道場.狙うは力動岩,新人の癖に練習相手を病院送りにする加減知らずの野獣は,相撲の世界から追い出されたハグレ者.この撮影,新日に協力してもらってレスラーが出演してるんですが,さすがは本物で物凄くいい体してるなぁ….対戦相手に対する不断の気配りが要求されるプロレスでは,気遣いなく相手を壊そうとする力動岩が受け入れられなかったのは当然.スカウトマン球四郎は新日すらもてあます野良犬を空中殺法で見事に仕留めて捕獲.
今度はテニス.明るく健康的でおなじみのテニス選手でありながら,「一つ倒しゃあ父のため…」とテニスとは思えない陰気なひとり言で練習に励む宗像純.テニス界のカミソリの竜のような彼は,球を当てて相手を殺してしまうらしく試合どころか練習相手すらいない.…むしろ暗殺者として仕事したほうが良さそうな気が.彼を勧誘するのはもちろんスカウトマン球四郎! やっぱりバッター候補だろうな.
そしてボーリング.パーフェクトを連発する素晴らしい才能を持ちながらも,多額の借金を抱えた剣持豪.華麗な変化球を誇る彼の身柄を,スカウトマン球四郎は溢れ出るボンボンの財力を背景に多額の借金を返済する条件で勧誘.この剣持の独特の陰に篭った雰囲気が絶妙.多額の借金を抱える彼ですが,あの雰囲気だと…クスリかもしれんなぁ(苦笑).
そしてしばらく前に球四郎にシバかれたローラースケーター・流血3兄弟.あまりの暴れっぷりに業界を永久追放された3人は大のアストロびいきで,球四郎であっても引き込むにはちょいと難しい相手.しかしそれを惚れた相手を打ち負かしてこそ男の値打ちは上がる…などと甘言でたぶらかすスカウトマン球四郎.力や頭や金だけでなくその口も一流で,きっと女なんか口説き放題に違いない.
スカウトマン球四郎ことスカ球の大活躍によってビクトリー球団に集う色モノ…強者たち.アストロも精一杯頭を使って峠コンツェルンに斥候を送るわけですが,その斥候が悪目立ちする球八と球三郎ってあたりがもう大失敗.こんな時こそまだキャラの薄い2代目球二とずーっと影の薄い球五を送らないでどうする(笑).
スペシャリストを手当たり次第かき集めたように見えるビクトリー球団.しかし球四郎の頭脳があれば,それぞれの一流の能力を全て野球に応用可能なのではないかという懸念が.ただし基本的な野球の動きをごく短期間で素人どもに叩きこめるかどうかは話は別.この短期間では恐らくそこまでは無理…という判断は球四郎相手ならば甘すぎる.球四郎があのとき見せたという下段の構えは,球三郎の見えない目に既に引き込まれた恐ろしい相手の姿を映します.
それは恐らく,顔に傷のある凄腕の拳士.これまで見せてきた球四郎のどの勧誘にも容易には乗らないはずの男….スカウトマン球四郎は彼の唯一の弱点であるプライドを突き,相手のフィールドで巧みに渡り合う.流派の全国制覇への宣伝,さらに後継者争いの舞台を餌に,球四郎は最大の武器を既に釣り上げている.
こうして陣営の整ったビクトリー球団は,流血3兄弟便に乗せてアストロ球団に果たし状を送り出す.表にはVの字.エセ超人を倒すパーティの招待状!

後半はさくさく本格宣戦布告.その権力を使ってメディアをも自由自在に使いこなす球四郎は,毎朝テレビの記者会見でさらにアストロ球団を追い詰める.たかが球遊びに球四郎が加わる理由は,古臭いルールのなかでくすぶる若い魂を集め,古臭い社会をぶっ壊す革命を起こすこと! …確かに真の革命は権力側まで巻き込んだ段階ではじめて起こるもの.権力の内側から出でて権力を食い破る.その第一歩が打倒アストロ.とはいえアストロは完璧な非権力側なんだけど….
ここまで徹底して喧嘩を売られ続けたアストロ球団.しかも招待状で連れてこられればもはや逃げる理由などない.しかし実際に球四郎がアストロどもに見せたいのは,ここから先のデモンストレーション.…スカイラブ以上の落差のある球を打てる打力に,四方からの攻撃すら華麗にさばく守備力.その絶大なる力を持って狙うのはアストロの打倒ではなく,アストロ抹殺! その最終兵器として登場するのが伊集院大門…球三郎の兄! 脅威の超人に率いられた強く恐ろしい色モノ軍団はアストロにその切っ先を真っ直ぐに向ける.次回に続きます!

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アストロ球団#9

「新たなる憎しみへのいざないの巻」

人命という余りに大きなものを代償としながらもついにロッテに勝ち,巨人軍への挑戦権を手に入れたはずのアストロ球団.しかし彼らの前途を阻むのは,同じボールの痣を持つ第8の超人だった.試合中に球二を殺した悔恨から屋久島に隠遁したカミソリの竜を挑発したり,巨人戦に備えて特訓する超人たちの前に立って球団旗を燃やして宣戦布告したり.彼の名は峠球四郎.莫大な財力を後盾として持ち,肉体と精神を鍛え上げてあらゆる分野で天才的な能力を発揮する恐ろしき超人だ.

物語を熱くさせるためならば人死程度は平気で選ぶ恐ろしき「アストロ」.感動を呼び起こすためにとりあえず殺してみる,というのは最近流行のドラマや映画でもポピュラーな手法なので今更どうってこともないかもしれませんが,死因が不治の病やら事故ではなく,野球の試合なあたりが本作ならでは.今回はついに始まる対ビクトリー球団戦のプロローグ.これまでも試合の合間にちょくちょく割り込み奇行を披露していた球四郎の凄さがじわじわと披露されていきます.

前半は旗を燃やす.たった6人で挑んだロッテ戦,そもそも大幅に足りなかった戦力は初代球二の命で贖うこととなってしまい,人生最大の賭けに挑んだ常人は見事に墓石へと化けたのでありました.本人はそれなりの覚悟で命を賭けたはずだけど,この結末を見てしまうと,いくら憧れの超人どもに勢ぞろいで墓参りされてもあの沢村と同列に扱われても,ちっともうれしくありません.特にシュウロに関しては,彼の不在が球二を殺したようなものなのでもっと反省してもらわないと球二も浮かばれない気がする.
ドームを望む場所に墓石を立てられて,死してもなお自分を殺したアストロ球団を見守らねばならなくなった球二.根本的に自分たちがやったことを理解していない球一たちが,ここならいつだって俺たちが見えるだろうと満足してんのがやりきれねえ…(苦笑).アストロ球団はこの先次々と苦難に襲われるわけですが,これも初代球二の呪いと考えれば納得できそうな気もします.
そんな球二の墓にそっと添えてあった,なんか安そうな仏像を見つけた2代目球二.申し訳ない成仏してくれの気持ちで刻まれた仏像を供えたのは,球二を殺してしまったカミソリの竜こと球六.直接手を下した竜のほうがより罪は重くて当然だけど,ろくに反省も謹慎もしていないアストロ球団もどうだろう(苦笑).
人を殺してしまったのだから強い罪の意識を感じて苦しむことは当然のこと.それこそが贖罪の第一歩.しかし,そんな苦しみすらも野球に結びつけて強制的に昇華できなければ,真の意味での超人とは言えないのかもしれません.1973年3月12日は,アストロ球団の初勝利の日であり,同時に多大な業を背負った日でもあるのです.
さて,アストロ球団に比べるとまだまともな神経を持ち合わせていた竜は,上に向かって生えていた爆発髪を寝かせて屋久島の小屋に篭り仏像を彫って暮らしております.霧の中,悔恨と贖罪の日々を暮らす竜のもとを訪れたのは…野放図なあの男.尊大で生意気で何もかもをバカにした態度のこの男.それは仏像や人の死であっても例外ではなく,死んだ奴は戻らんと厳しい真実を竜にぶつけます.どこの誰とも名乗らぬままで,お前のやっているのはただの自己満足だと痛すぎる真実を狙い撃ち.…もちろん竜だってこれが自分を慰めるだけのものに過ぎないと知っているんだろうけれど,罪の重さを知っているからこそ何もできずにいることは理解してあげたい.
無頼漢は島に篭った竜をバカにすることに余念がない.特に「でくの坊」呼ばわりは竜の中に眠っていた激しい負けん気に赤い火をつけ,愉快犯は小さな火にがんがん風を浴びせかけて大きな炎に変える.折角彫った仏像をなぎ払う男に怒る竜と,その怒りこそ力だと言い切る男.確かに野球に対する憎しみと怒りが竜に人殺しの力を与えたけれど,その力は決して正しいものではないから,野球をやめた….もちろんこれがただのごまかしであることを,手慰みにバットなんか作ってしまっている竜自身がきっと一番知っている.

アストロ球団には他の球団では実現不能な華があります.超人たちの超プレイや血の華だけでなく,そもそも9人揃っていない戦力差そのものが,日本人の判官びいきの心を直撃してやまないわけです.これだけの差があればどんなアイドル球団であっても戦えば自動的に悪役扱いされてしまうわけで,それゆえに対戦相手としてつきまとわれている当時のヒーロー球団である巨人軍の苦悩は深い.
話をしてもらえないからと他球団のスタッフエリアに侵入しようとするシュウロと,そんなシュウロには近寄りたくもない川上.勝ったから戦ってくれというシュウロと百年早いと断る川上.挑発しても相手は乗らず,シュウロとアストロ球団のラブコールはちっとも川上巨人に届きません.さらに登場したこの章のキーマンである峠会長.彼はもう1つの超人球団の存在を,シュウロに教えます.
さて,人を殺してもロッテに勝ったってのにその挑戦権をちっとももらえていないことなんかまったく知らない超人たちは,例の応援歌を響かせつつ,来るべき巨人戦に備えて特訓の真っ最中.ロッテ戦で体力のなさが露呈した球一はスカイラブの連投100球まで耐えられるようになり,2代目球二のリードもばっちり.気合が入りすぎてちょっと空回っているのが球七で,球八とともに兄弟でノック中.そして一番気の毒なのは,ファンクラブの声援を受けつつ練習に励む球三郎の隣の孤独な球五.対比されて悲しいこの状況は,ある意味精神鍛錬な気がします(苦笑).
そして…ロッテ戦終了後にも襲い来た痣の痛みとともに,8番目の超人がアストロの旗を持ってやってきた! 相変わらずふてぶてしい表情で,ここまでの行動を見る限りアストロ球団と超人たちをバカにしているとしか思えない彼は,神聖な旗をそのまま燃やすという見事すぎる宣戦布告をぶちかます! そりゃもう血の気の多い球七は早速暴力に出るものの攻撃は当たらず,むしろ子ども扱い.行動だけでなくその能力もまた非凡です.
アストロ球団を超人ではなくただの野球馬鹿だと愚弄する彼は,超人とは肉体と精神を鍛え上げた創造的な天才のことだと勝手に持論を展開.確かに超人とはいえ球一たちはあまりにも馬鹿であり,その馬鹿さが原因で余計な血を流しすぎ.ただし馬鹿さゆえに目の前の逆境に迷わず飛び込めるという利点もあることはあるのですが.
闖入者がここで見せる美技は,ロッテに勝って体力もついた球一の鼻を見事にへし折ります.「ワシから見たら,おまんらの超人プレイなんぞ,子供だましに過ぎん」…その投法はあのスカイラブ! 球一が必死で会得した技を再現しちゃった彼こそは,彼の定義で言う専門家以上の超人そのもの.もちろん目の前で必殺球をいきなり奪われた球一は,がっくり膝をついております.

後半はついに正体が明らかに.アストロドームの監督室で超人たちがシュウロに見せられたのは,球一をあっさりコピーしやがったあの男のプロモーションビデオ.お相手は件のカミソリの竜であるわけですが,背景で意味深に燃え盛るかがり火がどうにも謎.イメージシーンというわけではなく,現実に燃え盛っちゃてるからなぁ….
プライドを傷つけられた竜が投げるのは当然のように殺人L字投法.さっきまでの悔恨は一体どこに行ってしまったのだ(苦笑).けれど男はアストロ球団ですら不完全にしか攻略できなかったあの球をトンボ返りで見事に攻略.当時のルールとしてあの反対打席への移動が許されるかどうかも微妙に気掛かりですが,そもそもこの世界の野球は法よりも強いもののようなので,まあいいや(苦笑).これは,球三郎にもできなかったスムーズで美しい攻略ぶり.
ちなみに当の球三郎は時々忘れがちですが失明しているので,モニタは見えず音声と周囲のリアクションを感じるのみ.そんなわずかな情報であっても,男の下段の構えに気づきます.竜の球の弱点は.その極度の回転の代償としてとことん球が遅いこと.一度放り出されたらミットに収まるまでに時間がかかるからこそ,トンボ返りのような奇策が可能となったわけです.竜の蛇のごとき球回転の方向も投げられたあとは一定.そこで打席を変えることにより,バットに到達した際の回転を逆向きに受けるようにしたならば,恐ろしい球は長打へと変わる!
敵の技量は球三郎をも上回る.バッティングセンスもさることながら恐るべきはその読みの深さ.てなわけで明らかになる新たなる敵の正体! 彼の名は峠球四郎.もう1つの超人球団・ビクトリー球団を率いてアストロが巨人軍と闘うための道の途中に立ちふさがる者! アストロ球団に先立って巨人軍への挑戦権を奪った彼らは,あくまでの格上の相手としてアストロ球団の挑戦を受ける所存です.アストロ1こと球一を潰したと公共の電波を使って宣言する球四郎は,完全にアストロを舐めている.
…ただの野球バカでも人殺しでも,ここまでやられて燃えない奴は漢ではない.怒る球一たちに対して,これは敵の筋書き通りだと読んでいるのが球三郎.球四郎の真意がどうあれこれは明らかな挑発行為.勝ち取って得たはずの巨人軍への挑戦権をうやむやにして,さらに非公式戦を実施しようという腹づもりに違いない.とはいえここまで大々的にバカにされて戦いを受けないわけにもいかず,策士にハメられたアストロ球団には,もはやビクトリーを叩き潰すしか道はない.たとえ相手がどれほどの力を持とうとも,ずたずたになる覚悟で邪魔する奴を叩き潰す.それこそがアストロ魂だ!
そして,確固とした哲学を己の内に抱え,その哲学を貫くためならアストロだろうと少年だろうとまったく容赦をしない球四郎.悔しさを忘れるな.憎むことを遠慮するな.全力で憎い敵にぶつかったときこそ,今までよりももっと先に進める…これこそが球四郎の哲学.敵と戦うことで己を高めるため,まず敵の能力を怒りや憎しみで高めようとする求道者球四郎が作り出したビクトリー球団とはいかなるものか.次回に続きます.

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